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O plus E誌 2015年11月号掲載
 
 
メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮』
(20世紀フォックス映画)
      (C) 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [10月23日よりTOHOシネマズ日本橋他全国ロードショー公開中]   2015年10月9日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  引き続きゲーマー世代向きだが,ビジュアルは大満足  
  楽しみにしていたシリーズの2作目だ。前作の公開からまだ半年も経っていないが,それは本邦だけのことで,世界各国では第1作の1年後に公開され,次作も1年余先の2017年2月完成予定である。即ち,半年で製作されたお手軽作品ではなく,当初から3部作予定で,この続編はじっくり1年かけて作られている。
 謎の巨大迷路からの脱出劇がテーマだが,前作の最後で,機械仕掛けの迷路はWCKDなる組織が仕組んだ人体実験の一部であり,ウィルス感染で破滅寸前の人類の救済が目的であることが明かされていた。さらに,主人公たちがヘリで移送される際,砂漠の中の荒廃したビル群が見えていた(写真1)。彼らが収容された施設内から第2幕の物語が始まる。巨大迷路は1つだけでなく,施設内には,他の迷路からの脱出者も集められていた……。
 
 
 
 
 
写真1 前作のラストで既に砂漠が登場していた
 
 
  監督は,前作に引き続きVFX出身のウェス・ボール。主役のトーラス(ディラン・オブライエン),テレサ(カヤ・スコデラーリオ)らもシリーズ3作全部に登場するが,この続編から新たに登場する人物も少なくない。ヤングアダルト路線映画らしく,その大半はまだ無名の若手俳優だが,既にK・スコデラーリオが,来年公開の『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ最新作のヒロインに抜擢されているように,この中から明日の人気スターが何人も生まれて来ることだろう。その点では,ベテラン俳優を起用し,ドラマ性を重視した上記の『エベレスト 3D』とは全く対照的な映画である。
 副題の「砂漠の迷宮」からは,巨大な宮殿が存在し,そこを舞台の大活劇を想像してしまうが,そうではなかった。前作はまとまった第1幕であったが,この第2幕はいくつものステージに分かれている。WCKD施設からも脱出し,砂漠に現れたトーマスらには,さらなるサバイバル逃避行が待ち受けていた。一難去ってまた一難の移動は,ロードムービーというより,ビデオゲームで多数のステージをクリアして行く感覚に近い。前作に引き続き,ゲーマー世代を意識した作りになっている。
 トーマスを看視するWCKDは「ウィケッド」と読むようだが,「wicked」を思い出し,「邪悪な」組織に思えてくる。WCKDと対立する「ライト・アーム」なる勢力があり,そのいずれにも属さない人々も攻防に参加する。友情や裏切り,誰が味方か敵か分からない展開は,やはりある種の「迷路」である。本作の最後も,3部作の完結編への期待をもたせた形になっている。
 物語としては平凡だが,ビジュアル面ではかなり楽しめた。以下,当欄の視点からの見どころである。
 ■ ステージ分けするとして,一体いくつ有ったのだろう? 5つめまでは数えていたが,後は覚えていない。それぞれに見せ場があるが,激しいノンストップ・アクションの連続ではないので見やすく,各ステージのいずれもがビジュアル的に素晴らしい。これは完全に監督の美意識の賜物だろう。前作のBDの特典映像で,かなり詳しいメイキングが2編あるが,セット作りやVFXでの工夫にも,その美意識の高さが表われている。
 ■ 構図もカメラワークも隙がない。今月のメイン欄3本は観たままの順で掲載したが,上記『エベレスト 3D』に望んだものが,本作にはすべて備わっていると感じた(その代わり,ヒューマンドラマとしては『エベレスト 3D』が圧倒的に上だが)。前作のVFX主担当はMethod Studiosであったが,本作はWeta Digitalがほぼ1社で全編を担当している。前作と本作でVFX担当社を別にし,プレビズも大手のThe 3rd Floorに依頼し,早くから続編の制作態勢を整えていたのだろうと推察する。
 ■ VFXの最大の見どころは,WCKD施設「バンカー」から出た外界に広がる砂漠と荒廃した都市風景である(写真2)。撮影はニューメキシコ州アルバカーキ西部のパラジャリト砂丘で撮影したというから,砂は本物で,そこに廃虚や瓦礫の山を丁寧に描いている。よくあるディストーピアものの光景だが,細部クオリティとスケール感は,さすが『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』両シリーズを手がけたWeta社だ。嬉しくなる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
写真2 外の世界は荒廃した都市と砂漠。見事なVFXで,細部まで丁寧に描かれている。
 
 
  ■ 他のステージでは,まずバンカー施設でのハイテク機器や人体実験のカプセルが見ものだ(写真3)。砂漠の中で遭遇する雷鳴シーンもよくできていた。あるステージではコンピュータ・ルームと思しき斬新なシーンもあるが,大半は廃屋である。古い壊れた建物の内外装ほど,美術班の腕の差が目立つが,本作はまさにその典型例だった(写真4)。いずれも上質の出来で,実セットとCG/VFXによる加工の区別はつかなかった。
 
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写真3 多数の人体実験サンプルは勿論CG製
 
 
 
 
 
写真4 各ステージの美術セットも力作だ
(C) 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
 
   
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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