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O plus E誌 2017年11月号掲載
 
 
ブレードランナー 2049』
(ワーナー・ブラザース映画&
コロンビア映画/SPE配給)
     
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [10月27日より丸の内ピカデリー他全国ロードショー公開予定]   2017年10月10日 大阪ステーションシネマ[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  SF史上に残る話題作の30年後を描いた続編  
  当欄にとっては,この秋一番の注目作だ。前作『ブレードランナー』は1982年公開で,設定は2019年だった。本作は,その30年後の世界を描いている。原作はフィリップ・K・ディックの短篇「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」である。当時さほど有名ではなかったが,その後この作家の作品は,『トータル・リコール』(90 & 12)『マイノリティ・リポート』(02年11月号)等,次々と映画化され,計10数本に及んでいる。
 それまでのSF映画は宇宙での活劇が中心であったが,地球上の破壊された未来都市と暗い管理社会を描くディストーピアものの嚆矢となった映画である。監督のリドリー・スコットは『エイリアン』(79)で注目された新鋭監督であり,主演のハリソン・フォードは『スター・ウォーズ』シリーズのハン・ソロ役を2本終え,『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(81)で初めてインディ・ジョーンズを演じ,人気を不動にした頃であった。
 公開時にはさほどヒットしなかったが,後日,徐々にカルト的な人気が出た伝説的作品だ。制作のミスから矛盾が生じていたり,主人公の正体を巡っての論争が起こり,国際版,ディレクターズ・カット,ファイナル・カット等,様々なバージョンが発売されている。筆者は当然その殆どを観ているし,471ページもあるメイキング本を読破した記憶もある。今回改めてDVDを見直して,本作を観るための予習とした。
 2019年の社会では,車が空を飛んでいて「スピナー」と総称されている。精巧なアンドロイド(映画でだけ「レプリカント」と呼ばれている)が作られ,宇宙まで行っている。TV電話らしきものはあるが,携帯電話は登場しない。機械の操作に音声コマンドを使っている。未来の事物を表現するのに,CG技術は使われていない。VFXという言葉はなく,Special Photographic Effectsと呼ばれていた。フィルムの多重露光による光学合成が中心で,今観てもビジュアル的には結構優れていた。個人的には,この映画は余り好きではなかった。
 さて,35年後に作られた続編である。2022年の原因不明の大停電により,都市機能は破壊され,世界は飢餓状態に陥った。2049年のロサンゼルスが描かれているが,貧困と病気が蔓延している(写真1)。気象変動のせいか,LAに雪が降っている(写真2)。倒産したタイレル社の負債を買い取ったウォレス社が,新型レプリカントを製造している。古いレプリカントを退任させたり,人間に危害を加えるレプリカントを取り締まる警官は,前作に引き続き「ブレードランナー」と呼ばれている。
 
 
 
 
 
 
 
写真1 2049年のLAの街。この色調での映像が続く。
 
 
 
 
 
写真2 何と,30年後のLAでは雪が積もっている
 
 
  R・スコット卿は製作総指揮に回り,監督は『メッセージ』(17年5月号)のドゥニ・ヴィルヌーブである。主人公の新人ブレードランナーKを演じるのは,『ラ・ラ・ランド』(16)のライアン・ゴズリング。彼自身がレプリカントであるという設定になっている。Kは,30年前に女性レプリカントのレイチェルを連れて逃亡し,行方不明となったデッカード刑事を探し当てる役目を負う。老いたデッカードをハリソン・フォードが再度演じることが,本作最大のセールスポイントになっている(写真3)
 
 
 
 
 
写真3 老いた姿で登場するのは,レプリカントでない証拠か
 
 
  以下,当欄の視点からの感想と要点である。
 ■ おそらくファンの評価は分かれ,賛否両論だろう。一言で言えば,長所は,全編を通じての格調の高さだ。丁寧な絵作りで,それに寄り添う音楽にも気品がある。一方,最大の欠点は,2時間43分という長尺だ。それも最近の大作にしてはテンポが遅く,だらだらと長い。途中何度か睡魔に襲われた。ストーリーの基本骨格や結末は,驚くほど前作に似ている。
 ■ 夜のLAの街の俯瞰(写真4),ロス市警の本部庁舎の威容(写真5)等,CG/VFXはたっぷり使われている。いちいち数えたら切りがないほどだ。主担当はDouble Negative,副担当はFramestoreとMPCという英国のメジャー3スタジオだから,品質が悪かろうはずがない。Kがパトカーとして使うスピナーは,前作のデッカードのそれより精悍で,勿論,空中浮揚シーンはCGで描かれている(写真6)。当欄にとって残念だったのは,新作SFらしい斬新な未来描写が少なかったことだ。
 
 
 
 
 
写真4 夜のシーンも,ビルには殆ど灯りがない
 
 
 
 
 
写真5 これがLAPDの本部庁舎。貧困の中でも,警察権力は強大らしい。
 
 
 
 
 
写真6 Kのパトカー(スピナー)は角張っていて,空中浮揚する
 
 
  ■ それでも強いて挙げるなら,楽しかったのは毎夜Kを癒してくれるホログラム製のジョイだ(写真7)。エルヴィス・プレスリー,フランク・シナトラ,マリリン・モンローが登場するのも嬉しい(写真8)。もう1点注目すべきは,35年前のままの容色で登場するレイチェル(ショーン・ヤング)だ(写真9)。勿論,デジタル技術の産物で,『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)のレイア姫と同じ仕掛けである。ともにハリソン・フォードの相手役であることに,ニヤリとしてしまう。  
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写真7 毎夜Kを癒してくれるジョイはホログラム製
 
 
 
 
 
写真8 ホログラムで保存されているフランク・シナトラ。エルヴィスは
ラスベガスのステージに登場し,出番も多い。
 
 
 
 
 
写真9 デジタル技術でカメオ出演するショーン・ヤング。彼女は今年で57歳
 
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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