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O plus E誌 2016年5月号掲載
 
 
ズートピア』
(ウォルト・ディズニー映画)
      (C) 2016 Disney
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [4月23日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開中]   2016年3月18日 大阪ステーションシティ・シネマ[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  大人も楽しめるストーリーと素晴らしいビジュアル  
  ディズニー・ブランドのフルCG長編アニメーションは,前々号(16年3月号)で『アーロと少年』を紹介したばかりだ。本作の後には,7月公開の『ファインディング・ドリー』が控えているので,かなりハイペースでの製作・公開だと感じる。厳密に言えば,他の2作はピクサー作品であり,本作だけが伝統あるWalt Disney Animation Studio制作で,これが55本目となる。日本のファミリー層アニメ観客は,そんな違いは気にせず,ディズニー・ブランドを信仰している。
 第53作『アナと雪の女王』(14年3月号)のメガ・ヒットの後,日本市場を意識した第54作『ベイマックス』(15年1月号)もかなりのヒットとなった。ピクサーが少しもたついている間に,ご本家はフルCGアニメでも凌駕してしまった。今が第4次黄金期と言われる所以である。その勢いで,本作にも大きな期待が寄せられたが,その期待通り,いや期待以上の良作だった。
 原題は『Zootopia』。動物園(zoo)と桃源郷(utopia)を足し合わせた単語であることは,容易に分かる。高度な文明をもち,あらゆる動物が住む理想的な社会が舞台らしい。『アーロと少年』の解説でも触れたように,最近のディズニー作品は,内容を加味して全く異なる邦題が付くことが多いので,どんな題名になるのだろうと思ったのだが,素直にカタカナで書かれただけだった。この「ズートピア」という固有名詞自体もウリにしたいようだ。後々,ディズニーランドのアトラクション名にするつもりかも知れない。
 草食・肉食を問わず,様々な動物たちが平和に暮らす楽園が舞台で,人間は全く登場しない。もっと如実に言えば,人間を除くあらゆる哺乳類が擬人化され,人間社会を模した近未来社会で過ごす様が描かれている。勿論,言葉はしゃべるし,学校もあり,職場もあり,鉄道や自動車は走り,市役所や警察署もある。主人公はウサギとキツネらしい。ポスターにはライオン,羊,象,鹿,キリン等々の多数の動物が描かれ,既に主要キャラのぬいぐるみ人形も発売されている(写真1)
 
 
 
 
 
写真1 キャラクタービジネスもしっかりと(左から,ジュディ,ニック,ガゼル)
 
 
  ここまでの情報では,ほのぼのとした心温まるファミリー向け動物映画だと思っていた。『アーロと少年』が全くのお子様映画だったから,同じように思ったのかも知れない。内容は全く予想に反して,大人が見ても感心するポリス・アクションであり,未解決事件を追うミステリーでもあった。以下,本作の見どころである。
 ■ 主人公は,田舎から上京して警察学校を出たウサギの新米警官ジュディと,夢を失ったキツネの詐欺師のニックだ。肉食動物だけが行方不明になる事件を48時間だけ捜査する許可を得たジュディは,ニックを相棒に選び,事件の隠された秘密を追う……。もうこの時間制限だけで,ニック・ノルティとエディ・マーフィの『48時間』(82)を思い出す。即ち,バディものの刑事映画であり,俳優が演じる実写映画でも十分通用する素晴らしい脚本だ。「肉食動物 vs. 草食動物」の対立構図は,人間社会の「南北問題」「民族間対立」等を思い出す。含蓄あるセリフが頻出する。政治的メッセージも含まれているので,これは決して「お子様映画」ではない。字幕が少し難しいので,『インサイド・ヘッド』(15年7月号)同様,日本語吹替版の方が良いかも知れない。
 ■ ストーリーも秀逸だが,この映画は全く別の観点からから楽しめる。伝統あるディズニー・アニメのアーティスト達が,腕によりをかけて描いた楽園都市ズートピアのデザインである。3D-CG ではあるが,写実性は追求せず,味のあるアニメ風の画調を保っている。都心部のサバンナ・セントラル(写真2),熱帯雨林のレインフォレスト地区(写真3),極地動物が暮らすツンドラ・タウン(写真4),砂漠の動物が暮らすサハラ・スクエア等,各地区のデザイン・ディテールを観ているだけで,全く飽きない。
 
 
 
 
 
 
 
 
写真2 楽園の都心部サバンナ・セントラル(上)と中央駅(下)。
 
 
 
 
 
 
写真3 熱帯雨林のレインフォレスト地区は,テーマパークを意識した?
 
 
 
 
 
写真4 ツンドラタウンは,まるで札幌雪まつり
 
 
  ■ 全体の写実性は重視していないものの,霧や砂塵の表現は秀逸だし,ライティングの見事さにも惚れ惚れする。とりわけ,レインフォレスト地区の滝と緑の景観が美しい。写真5は,筆者が選んだベスト・シーンだ。ディズニー映画と言えば,洗練された主題歌が楽しみだが,本作には歌曲は1曲しか入っていない(他は音楽のみ)。人気歌手シャキーラが歌う"Try Everything"で,"Let It Go"に匹敵する佳曲だ。映画中では,ガゼル姿の歌手が熱唱するシーンが印象的だった(写真6)。日本語吹替版では,Dream Ami が歌っている。  
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写真5 ベストシーンは,朝焼けの中のゴンドラ
 
 
 
 
 
写真6 主題歌を熱唱する人気歌手のガゼル
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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