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O plus E誌 2015年10月号掲載
 
 
ダイバージェントNEO』
(ライオンズゲート/ KADOKAWA配給 )
      TM & (C) 2015 Summit Entertainment, LLC.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [10月16日より角川シネマ新宿他全国ロードショー公開予定]   2015年9月4日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  CG/VFXを大幅強化し,投資額に見合う面白さに  
  昨年夏に公開された『ダイバージェント』(14年7月号)の続編である。原題は『Insurgent』だが,シリーズものであることを意識させるべく,邦題は前作に「NEO」を付加している。「2」としなかったのは「新しさ」を強調したかったのだろう。終盤バーチャル空間が大きな意味をもって登場するので,ヒットを祈願し,『マトリックス』シリーズでキアヌ・リーブスが演じた主人公の名前にあやかろうとしたのかも知れない。
 前作は凡庸で,余り記憶に残らない作品だったが,続編を評価するからには,両作の繋がりや,美術・衣装や,VFXの出来映えも把握しておく必要があり,前作のDVDを再見して,細部を点検した。前作の評では,「主人公の少女トリスを演じるのは,シャイリーン・ウッドリー。『トワイライト』『ハンガー・ゲーム』の両シリーズに味をしめた…(略),主演女優がさほど魅力的ではない」と書いてしまっている。『ハンガー…』のジェニファー・ローレンスと比較するのは可哀想だが,本作では途中から髪をショート・カットにし,ボーイッシュになる。存在感も大きくなり,健気に反対勢力と戦う健気な姿が,少し可愛く見えてくる。
 彼女の第1印象は,「目鼻立ちがケイト・ウィンスレットに似ている」だった。当のK・ウィンスレットも出演していて,【博学】の指導者ジェニーンを演じている。本作では登場場面が増え,冷徹で支配力のある敵役である。異端者で特殊能力のあるトリスを危険分子と見做す勢力の代表であり,丁度『ハンガー…』でドナルド・サザーランド演じる独裁者スノー大統領と好一対だ。まさか次作以降で,ダース・ベイダーとルーク・スカイウォーカーのように,「実は2人は母子であった」などというオチになるのではと恐れるが…(笑)。
 その他の点でも,『ハンガー…』と本シリーズは酷似している。近未来の荒廃した管理社会で,戦う女性が主人公で,複数の男性陣が彼女をサポートする。第12地区出身のカットニスが,地下都市にあった第13地区の反乱軍と共に戦うのに対して,こちらは本作で【勇敢】【無欲】【高潔】【平和】【博学】の5つの共同体のいずれにも属さない【無派閥】が存在することが判明し,【異端者】(Divergent)のトリスは彼らが企てる反乱(Insuegent)に合流する,といった具合だ。監督も音楽担当も編集担当も違うのに,両シリーズの最新作は,テンポも物語展開も実によく似ていると感じる。
 前作の評で「VFXの見どころは,前半,ミラー効果で多数のトリスが登場するシーンだけだった。既に続編の製作が決定しているようだが,どこまで巻き返せるのだろうか?」とも書いた。当欄の関心事はまさにそこであり,要点は以下の通りである。
 ■ 試写会に臨む前から,CG/VFXの主担当が本作からDouble Negativeとなったことは,同社のWebページを見て知っていた。『ハンガー…』も2作目から同社が主担当となったので,大いに考えられたことである。シリーズ途中から,美術やCG/VFXをどんどん強化するのはライオンズゲートの常套手段なので,目下CGスタジオ実力No.1の同社が率いる以上,当欄にとって語るに足るクオリティになっているはずだと予想した。
 ■ 荒廃したシカゴが舞台(写真1)であるのは前作と同じだが,本作では,共同体の高層ビルが建ち,壁面が映像ディスプレイ化されている。異端者かどうかの検査機やジェニーンのラボなども,しっかりとVFXの産物だ(写真2)。デザイン的にも悪くない。エンドロールには,DN社の他に,DN Singapore,Luma Pictures, Animal Logic, Method Studios, Lola VFX等,約10社の名前があった。なかなかの陣容で,総担当者数は前作の5倍以上だ。
 
 
 
 
 
写真1 舞台は近未来のシカゴ。荒廃の描写が前作よりもリアル。
 
 
 
 
 
写真2 透明モニターに電子回路風のビジュアルが登場
 
 
  ■ 極め付けは,終盤30〜40分で,トリスがジェニーンの「シミュレーション」を体験するシーンだ(写真3)。ここから物語が一気に面白くなる。トリスの意識下で,彼女のサイコ・パワーがフルに発揮され,周りの壁や部屋はおろか,ビルや街中を破壊してしまう(写真4)。この一連のシーンは,さすがDNと唸りたくなるクオリティだ。ビルの崩壊も,前号の『カリフォルニア・ダウン』での地震による倒壊とは異なり,超能力による人為的な破壊の趣きを出している。エンディング・シーケンスで,ビル内や街の中に人々が続々と集まるシーンも,当然CGの産物であり,スケールの大きさを実感する場面だった。なるほど,製作費をかけただけのことはある。その分,見応えもあり,物語自体も面白く感じられた。
 
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写真3 シミュレーションの体験
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
写真4 トリスのサイコ・パワーは,周りの部屋だけでなく,街中のビルまでも破壊する
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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