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O plus E誌 2015年4月号掲載
 
 
ジュピター』
(ワーナー・ブラザース映画)
      (C) 2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [3月28日より丸の内ピカデリー他全国ロードショー公開予定]   2015年2月26日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  ポリゴン数ではギネスものの,CG豪華大作だが…  
  2作目は,CG/VFX満載のSF大作だ。昨年夏公開予定が今年にずれ込んだ(北米では,2月6日公開)だけあって,思いっ切りゴージャスな映像に仕上がっていることが期待された一作である。監督はラナ&アンディ・ウォシャウスキーで,兄弟監督が姉弟監督になってからの2作目となる。『マトリックス』シリーズで大ホームランを飛ばして以来,期待外れの作品が続いたが,本作はそれ以来のオリジナル脚本,初めての3D作品というので,気合いが入っているように感じられた。
 宇宙もので,この表題なら,木星が舞台かと思いきや,これは主人公の女性の名前だった。もっとも,木星にちなんで命名されたとの設定であるから,全く無縁ではない。同じWB配給作品で,宇宙ものSFとなれば,昨年秋公開の『インターステラー』(14年12月号)と比べたくなる。結論を先に言えば,『インターステラー』の方が100倍素晴らしい。ただし,ビジュアル面ではひけをとっていないし,CG/VFXの豪華さでは一枚上だ。
 シカゴで家政婦として働く女性ジュピターが,ある日何者かに襲われるが,屈強な戦士ケインに助けられる。彼女は,宇宙の彼方で何千年も支配を続けてきた王朝の女王と同じ遺伝子をもった唯一無二の女性であり,彼は遺伝子操作で生まれ,彼女を守るために異星から派遣された究極の戦士だという。地球を離れて宇宙に向かった彼らは,アブラサクス家の支配権をめぐる抗争に巻き込まれ,壮絶な戦いを強いられる……。
 もうこれだけで荒唐無稽な設定であり,かつてのスペース・オペラ的な香りがする。『インターステラー』の語りの上手さ,『2001年宇宙の旅』(68)のような哲学的側面はない。壮大な世界観というが,無用に込み入ったストーリー,目まぐるしく変わる画面は,ゲーム世代を意識した映像である。なるほど,コミック,アニメ,ビデオゲームを知り尽くした監督らしい描き方だ。
 ケイン役は,『ホワイトハウス・ダウン』(13年9月号)のチャニング・テイタム。売り出し中の男優だが,本作では蝋人形のように無表情で,まるでCGで描いたロボットのようだ。そう言えば,この映画は随所で,かつてのフルCG映画『ファイナルファンタジー』(01年9月号)を思い出す。ゲーム風の世界観で作ると似てしまうのだろうか。ジュピター役には,『ブラック・スワン』(11年5月号)でリリー役を演じていたミラ・クニス。この主演の男女は全く魅力が感じられなかった。これじゃ,CGキャラで良かったのではないか……。
 以下,CG/VFXの見どころである。
 ■ Double Negative,Framestore,Method Studios, BUF等々,CG/VFX担当社には当代の一流スタジオの名前が並ぶ。エンドクレジットの字を通常よりかなり小さくしないと収まらない程の大人数が関わっている。なるほど,ジュピターが地球を離れて最初に訪れる異星での,宮殿や滝の景観には圧倒される(写真1)。手の込んだ宇宙船のデザインやその基地の模様(写真2)など,全編がこの調子である。恐らく,全編のポリゴン数ではギネスブックに載ることだろう。加えて,シーンの変化も目まぐるしいので,MPEG変換して最も圧縮率の低い映像作品,という称号も得られるのではないか。
 
 
 
 
 
写真1 カーリンの宮殿と荘厳な滝の景観は圧巻
 
 
 
 
 
写真2 宇宙船やその基地のデザインも入魂の出来映え
 
 
  ■ ケインがジュピターを連れて逃げるシカゴ市中での戦いが素晴らしい。スケート靴風の反重力ブーツでの空中サーフィン(写真3)は,ワイヤー吊り+グリーンバック撮影だろうが,カメラワークがいい。数分続く,シカゴでの空中戦は堪能できる。6台のカメラアレイPanocamで撮影した市中の景観とVFXが見事にマッチしている。この攻防だけで,この映画を観る価値はある。
 
 
 
 
 
写真3 反重力のブーツを履いての空中サーフィン
 
 
  ■ コーン畑での攻防(写真4)を経て宇宙に移動してからは,もうCG/VFXのオンパレードだ(写真5)。デザイン面では,ジュピターの花嫁衣装や髪飾り(写真6)はユニークで,センスの良さを感じる。彼女がホールを見下ろす構図(写真7)に既視感があると思ったら,前作『クラウド アトラス』(13年3月号)にも似たシーンがあった。俯瞰視点での都市の光景にも,同様な既視感がある。改めて同作のページを見直すと,物語の空回りを嘆き,ビジュアル・センスを褒めていて,本作と全く同じ評価であった。
 
 
 
 
 
写真4 空中バイクもワイヤー+グリーンバック撮影の産物
 
 
 
 
 
 
 
 
 
写真5 どのシーンのビジュアル・センスの良さを感じるが,監督2人とはいえ,全カットのデザイン点検は相当な時間を要したことだろう
 
 
 
 
 
写真6 ウェディング・ドレスと髪飾りも思いっきりファッショナブル
 
 
 
 
 
写真7 随所で『クラウド アトラス』からの既視感を感じる
(C) 2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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