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O plus E誌 2012年6月号掲載
 
 
 
 
『ザ・マペッツ』
(ウォルト・ディズニー映画)
 
 
      (C) 2011 Disney Enterprises, Inc.

  オフィシャルサイト[日本語] [英語]  
 
  [5月19日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズ他全国ロードショー公開中]   2012年5月8日 角川試写室(大阪)  
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  お馴染みの人形たちが繰り広げる楽しい豪華ショー  
  マペットの意味や『マペット・ショー』なる番組を問われて分からなくても,『セサミストリート』に登場する人形たちと言えば,大抵の人たちは知っているだろう。Muppetとは,Marionette(操り人形)とPuppet(指人形)の合成語で,Jim Henson's Creature Shopを主宰するジム・ヘンソン氏が造語したものだ。大小様々な人形を扱うことからこの総称を使い出したようだが,同社のマペットの場合,手で人形の口を動かすこと,操作者自身が声優を兼ね,セリフを語ることに特徴がある。言わば,腹話術の人形だけが登場する形式だが,大型マペットの場合は複数人で一体を操演するらしい。これは,日本の文楽に学んだとのことだ。
 1969年に放映開始され,今なお続く『セサミストリート』が幼児番組の域を出ないのに対して,『マペット・ショー』は1976年から1981年まで,米英で放映された大人向けの人気バラエティ番組で,米国の著名タレントとマペットたちが絡む構成だったようだ。日本では1981年に約4ヶ月間放映されただけなので,知られていないのも無理はない。本作は,その伝統の『マペット・ショー』の殿堂を悪の手から守るべく,かつての出演者たち「ザ・マペッツ」が世界中から集結し,華麗なるショーの再現を目指す……という設定である。まるで人形たちが生きているかのように話し,人間と混在して暮らしているというから,全くのお伽話である。
 監督は,ジェームズ・ロビン。英国のTV界で実績をもつプロデューサー兼脚本家で,ハリウッド映画界へはこれがデビュー作である。人間の主演の男女は,ジェイソン・シーゲルとエイミー・アダムス。『魔法にかけられて』のディズニーが贈る"超ありえない"冒険ミュージカル,というキャッチ・コピーのように,同作のプリンセス役でブレイクしたA・アダムスを本作の前面に押し出している。日本では『マペット・ショー』の知名度が低いゆえ,この広報作戦になったようだ。
 マペットたちのリーダーは,カエルのカーミット。誰もが一度は見たことがある有名キャラである。長年,創始者のジム・ヘンソン自身が演じていたが,同氏の没後の1990年以降は,スティーブ・ウィットマイアが後を継いでいる。相手役はブタの歌姫ミス・ピギー(写真1)。この2人は,今年のアカデミー賞授賞式でプレゼンターとして登場し,人気を博した。その他は,ゴンゾ,フォジー,アニマル等,見覚えのある個性的な面々が勢揃いする(写真2)。一見して分かるのは,TV版とは格段に違う質感の高さだ。とりわけ,カラフルで豪華な衣装デザインは特筆に値する。写真3からは,様々なサイズのマペットが使われているかが読み取れる。
 
 
 
写真1 マペット界のスーパースター,カーミットとミス・ピギー
 
 
 
写真2 マペットたちの勢揃い。大画面で質感も上々。
 
 
 
写真3 色々なサイズのマペットが使われていることが判る
 
 
  この映画の拘りからして,マペットはすべて実体であり,CGはないと思われるが,VFXは多用されている。手を入れて操作する以上,マペットは上半身中心の伝統的な人形劇スタイルが基本だが,本作のように人間社会に登場させようとすると,背景映像は合成とならざるを得ない(写真4)。カーミットの色からして,本作はグリーンバックではなく,ブルーバック撮影が主であったはずだ。一方,人間の大群衆が登場するシーンがあるが,そちらはCGによる描写だろう。
 
 
 
 
 
 
写真4 大半のシーンは,マペットを屋外に持ち出すことなく,デジタル合成で実現
(C) 2011 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
 
 
   ミュージカル仕立てで楽しい,完成度の高い作品に仕上がっていた。マペットたちを知らなくても十分楽しめるが,アメリカ人にしか通じない小ネタが多い感じもした。試写室では,外人ラジオ・パーソナリティのC氏だけが1人で大笑いしていた。もう1つ残念なのは,A・アダムスは容色が衰え,かなり太めになっていたことだ。もはやこの髪形で,若作りのヒロインを演じるには無理がある。そろそろ演技派に転向する時期だろう。  
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  (画像は,O plus E誌掲載分の一部を入替,追加しています)  
   
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