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O plus E誌 2011年9月号掲載
 
 
ピラニア3D』
(ディメンション・フィル ムズ
/ブロードメディア・ スタジオ配給 )
      (C) 2010 THE WEINSTEIN COMPANY LLC
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [8月27日よりTOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国ロードショー公開予定]   2011年7月12日 TOHOシネマズ 梅田[完成披露試写会(大阪)]
 
         
   
 
サンクタム』

(ユニバーサル映画
/東宝東和配給 )

      (C) 2011 Universal Studios
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [9月15日よりTOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国ロードショー公開予定]   2011年8月5日 東宝東和試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  純粋に立体感を楽しむ実写版3D映画2作品
 
 

 人気シリーズの大半は,興行的目論見から,続々と3D化されている。本当に3Dで観る価値があるかと問われれば,あまりその価値はないと答えざるを得ないことは,各映画の欄に書いている通りだ。そのほとんどが「2D→3D変換」のフェイク3Dに頼っているためで,このままでは,3Dで生き残れるのは,フルCGアニメだけではないかと感じているこの頃である。
 そんな中で,実写映画で立体感・臨場感が満喫できる3D作品を2本取り上げる。片方はフェイク3Dであり,他方はリアル3D撮影だ。見比べてみるのもいいだろう。ただし,両作品とも全く新しい手法に頼っている訳ではなく,『アバター』(10年2月号)による3Dブームと撮影技法に便乗して製作された3D作品で,日本公開が少し遅れたという点でも共通している。

   
  フェイク3Dだが,明るい映像でパニックも気分爽快
 
 

 まずは,典型的なB級パニック・ホラーの『ピラニア3D』だ。洋上のビキニ姿の女性を海中のピラニア集団が狙っているポスターからして,『ジョーズ』(75)のもじりだと分かる。『ピラニア』(78)の3Dリメイクだというが,旧作は山中のプール,本作はアメリカ南西部の湖畔の町が舞台であるから,直接の関係はない。『ジョーズ』以降に乱発されたパニック映画の中で,低予算SFX利用で成功した旧作にあやかったと言うべきか。フェイク3Dでありながら,比較的立体感の演出が上手いという評判であったから,少し楽しみにしていた映画である。
 米国公開から約1年経っているのを逆手にとり,「日本公開が危ぶまれた超問題作,遂に解禁!」というキャッチコピーだが,別段問題があった訳ではない。ようやく買い手がつき,公開に至ったというところだろうか。徹底したB級パニックであるから,集客力だけが問題だったのだろう。監督は,『ミラーズ』(08)のアレクサンドル・アジャだが,あまり馴染みはない。主演の女性保安官役の『インビジブル』(00年10月号)のエリザベス・シューは知っているが,助演陣もヴィング・レイムス,リチャード・ドレイファス以外はさして名のある俳優も出ていない。
 まず冒頭から3Dを強調したシーンのオンパレードだが,フェイク3Dであっても,この映画の立体感は気持ちがいい。映像が明るいからだろう。ストーリーはどうでもいいので,自由奔放な構図やカメラワークを取り得ることも,3D効果を満喫できることに繋がっている。パニックは勿論中盤以降で,湖底に棲息していた古代のピラニアが人間たちを襲い始める。通常のピラニアより一回り大きく,獰猛という設定である。言うまでもなくCG製であるが,残念ながら公開されているスチル写真は1枚しかない(写真1)。予告編ではたっぷりと登場するから,事前にはそれで楽しんでもらいたい。

   
 
写真1 提供されたCG製ピラニアの画像は,これだけ
 
   
 

 襲われた人間が片手,片脚を失うのは序の口で,顔面の半分や下半身が無くなっているシーンも続出する。ここでもCG/VFXが活躍している。まさに阿鼻叫喚,血の海と化す様は地獄絵図で,残虐というより,滑稽さすら感じる(写真2)。能天気で無軌道な若者たちが襲われるゆえに,悲惨な感じはしない(写真3)。やる以上は徹底的にという,B級映画の神髄を突いた痛快娯楽作だと言えよう。

   
 
写真2 見た目には地獄絵図だが,滑稽さすら感じる
 
   
 
 
 
写真3 襲われたのは,こういう能天気な若者たち
(C) 2010 THE WEINSTEIN COMPANY LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
 
   
  さすが,これぞ臨場感溢れるリアル3D
 
 

 もう一方の3D映画の『サンクタム』は,4月公開の予定が,東日本大震災の影響で公開延期となった作品だ。特に地震に関係ある訳ではないが,巨大なサイクロンの影響で川が逆流し,洞窟内が水没するという設定が,津波を思い出させるということから,公開自粛に繋がったようだ。改めて公開されるのは,素直に喜ばしい。
 こちらは正真正銘の実写リアル3D作品で,『アバター』のジェームズ・キャメロン監督が製作総指揮となっている。即ち,彼が『アバター』のために開発した3D映像撮影用のフュージョンカメラ・システムの改良版による撮影であり,地底や海底の撮影は彼の趣味とも言える対象である。そのJ・キャメロンに抜擢された若手監督は,オーストラリア出身のアリスター・グリアソン。まだ,長編2作目である。主演級の俳優も名前に全く馴染みはないから,キャメロンの身代わり監督で,俳優の演技よりも,臨場感溢れる映像が主役の映画だと言える。
 舞台はパプアニューギニアの密林地帯にある世界最大級の洞窟地帯で,人類未踏の「聖域(サンクタム)」と呼ぶべき大洞窟の探検がテーマである。前述のように,この洞窟が水没し,中に取り残された探検家たちの命をかけた脱出行が始まる……。という設定だが,前半は密林の自然風景や巨大洞窟を3Dで楽しむドキュメンタリー映画風のタッチである。中盤以降は,お決まりのサバイバル・アドベンチャーとなるが,実写3D作品で先鞭をつけた『センター・オブ・ジ・アース』(08年11月号)とよく似た展開である。
 映像としては,冒頭からフェイク3Dとはまるで違うと感じる映像が飛び込んで来る。「これが,本物の3Dか!」「さすが,リアル3Dの魅力が満喫できる」と言える映像のオンパレードだ。洞窟内の断崖を降りるシーン(写真4)は勿論,水中内の水泡の存在(写真5)にも3Dの威力を感じるし,天井の低い洞窟内の圧迫感も3Dならではだ(写真6)。洞窟は南オーストラリアに実在する場所を使い,水中シーンは巨大タンクを使って撮影したとのことだ。

   
 
写真4 南オーストラリアに実在する崖を使っての撮影。降下シーンは迫力満点だ。
 
   
 
写真5 巨大タンクを使っての撮影だが,泡の存在にも3Dの威力を感じる
 
   
 
 
 
写真6 水中での移動も,巧みに岩を配置してリアル3Dらしい効果を出している
(C) 2011 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
 
   
 

 惜しむらくは,この映画は脚本が少し弱い。かつてのIMAX 3Dで楽しんだ大型アトラクション映像のように思えば良いのだが,普通の劇場用映画として考えると,物語が凡庸だ。苦難に遭遇しつつ,1人ずつ脱落して行く定番の展開であるが,もう少し脱出者の生存率が高い方が,観客の満足度は高かったかと思う。

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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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