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『オーロラの彼方へ』
(ニューライン・シネマ作品
/ギャガ-ヒューマックス配給)
 
       
      (JAL010便機内 2000年11月9日)  
         
     
  B級作品ながら,抜群に面白いSFサスペンス・ファンタジー  
   繰り返しこの欄で書いているが,原題そのままのカタカナ題名映画ばかりの中で,日本語の題名を見ると嬉しくなる。原題は『Frequency』(周波数)。主人公達が交信するアマチュア無線機からとった題だ。それによくもまぁロマンチックな邦題を当てたものだ。メグ・ライアンが登場するラブ・ロマンス調かと思ったら大違いで,変形タイムトラベルのサスペンス・ファンタジーである。
 『遠い空の向こうに』(原題は『October Sky』)ともちょっと似ているので,父子愛の物語かといえば,こちらは当たりだった。30年前に死んだはずの父親と息子が,時を超え,アマチュア無線を通して語り合うという設定に斬新さを感じたが,ストーリーも意外性の連続で堪能させられた。
 その脚本・製作担当は,これまで『マスク』(94)『セブン』(95)『オースティン・パワーズ』(97)のサントラ盤の製作者であったトビー・エメリッヒ。これが脚本家デビュー作だ。監督・製作は,『真実の行方』(96)のグレゴリー・ホブリット。父親と息子役に,『エニイ・ギブン・サンデー』で共演したデニス・クエイドとジム・カヴィーゼル。その他脇役陣もスタッフも地味なメンバー揃いで,いかにもB級作品の布陣だ。それでいて,こういうスマッシュ・ヒットを飛ばすのがニューライン・シネマらしい。
 太陽黒点の影響でニューヨーク市の空にオーロラが見えた1969年10月,消防士の父フランク・サリヴァンは事故で不慮の死を迎える。30年後,同じようにオーロラが出現する夜,NY市警の刑事となった息子ジョンは,古い父の無線機を操作してしているうち,電波の向こうから交信した相手が30年前の父親であることを知る。しかも,それは事故の前日。未来からこの事故の原因を知らせれば,父は死ななくて済むはずだ。というのが,大胆なストーリーの始まりである。
 実際,死なずに済むのは容易に予想できるが,この映画はこうした前提を分かった上で見ても面白い。いや,分かっていた上で見たほうが,むしろ面白い。その後,歴史を変えてしまったことによる副作用は,映画通の予測を裏切る展開で進行する。いや,実際どういう盛り上がりと結末になるのか全く分からず,ハラハラさせられた。派手な爆発もチェイスもないが,手に汗握るとは,こういう展開をいうのだろう。
 過去を変えてしまった影響が,記念写真の変化に表われるという手口は『バック・トウ・ザ・フューチャー』そのものだ。これは二番煎じでもパロディでもなく,観客がこの流儀を知っていることを前提に,タイムパラドックスのシンボルとして使っているのだろう。これも,なかなか心憎い演出だ。無線交信は交互通話が基本なのに,映画の後半ではまるで電話のように両方同時にで話しているという読者の声も見かけたが,それは気にならなかった。SFの面白さと,父子愛と,迫り来る殺人鬼の恐怖とを巧みにミックスさせた見事な脚本である。これぞ映画だ。
 SFXの登場はほんのわずかだ。大空のオーロラは当然CGだろう。あと,壊れた無線機が直る様をゆっくりとしたモーフィングで描いてあるが,こういう初歩的VFXもちょっぴり使うと味があっていい。
 このVFX映画時評は,Cinefex誌やVFX Proのウエブサイト等を参考にして,これから見るべき作品を選んでいる。VFXの使用量の少ない本作品は,それらのリストに入っていなかったので軽視していた。試写会は気付かない間に終わっていたが,日本での公開より先にJALの機内ビデオで見ることが出来た。ビデオ・オンデマンド式の上映で2度見た後,3度目にトライしようかと思ったら,飛行機のシカゴ到着となり打ち切られてしまった。
 
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