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O plus E誌 2011年1月号掲載
 
 
 
 
『アンストッパブル』
(20世紀フォックス映画)
 
 
      (C) 2010 TWENTIETH CENTURY FOX

  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [1月7日よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー公開予定]   2010年10月13日 角川試写室(大阪)    
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  直球勝負のパニック映画だが,満足度は高い  
   観客セグメントが狭い『トロン:レガシー』とは異なり,こちらは典型的なハリウッド流娯楽作品,手に汗握るパニック映画である。運転士の些細なミスから,無人状態で動き出し,やがて爆走を始めた制御不能の貨物列車が巻き起こす大騒動を描いている。自動ブレーキが利かない状態で魔の大カーブに高速で突入すると,確実に脱線転覆する。一両分で町を壊滅できる危険な化学物質とディーゼル燃料が数両分連結されている上に,カーブのすぐ下の工場には可燃物のタンクが待ち構えている。あらゆる対策が失敗に終わった後,絶体絶命の危機に,2人の鉄道マンが決死の列車停止作戦に挑む……。
 実際にあった事故をもとにしているというが,どこまでが実話なのだろうか? 勿論かなり脚色し,誇張して映画化にしてあるに違いない。実際にあったのは,貨物列車が無人で動き出しただけの事故だったのか,危険な薬物は本当にあったのか,それとも後ろから別の機関車を連結して制止させたという部分なのだろうか? そういう推測をするのも,この種の映画を観賞する上での愉しみである。
 監督は,『トップ・ガン』(86)で成功を収め,『エネミー・オブ・アメリカ』(98)『スパイ・ゲーム』(01)などのヒット作を生み出したトニー・スコット。この種のサスペンス・アクションを撮らせたら,絶妙の腕である。主人公のベテラン機関士フランク・バーンズを演じるのは,2度のオスカー受賞に輝く名優デンゼル・ワシントンだ。おや,この2人はよく似たテーマの『サブウェイ123 激突』(09年9月号)で組んだばかりのはずだ。いやいや,それだけでなく,これまでに『クリムゾン・タイド』(95)『マイ・ボディガード』(04)『デジャヴ』(06)でも監督・主演のタッグを組んでいるから,これが5度目の顔合わせだ。よほど相性がいいのだろう。それだけで,当たり外れのない娯楽作だと予想できる。
 色々前置きがあってから事件・事故が発生し,危険状態へと突入するとともに,いくつかのサイドストーリーが展開し,様々な人間模様が描かれるのが標準パターンだ。この映画には,そんな飾りはない。すぐに小さな事故が起こり,やがて爆走が始まり,スタントン市の大曲りでのクライマックスに向けて,一直線に物語が展開する。真っ向の直球勝負だ。結末が悲劇で終わるはずはなく,主役たちの活躍で危機一髪が回避されるに決まっているが,それを分かっていながら手に汗を握る。それが良質の娯楽映画であり,本作の満足度は高い。
 CG/VFXはといえば,爆走する貨物列車をCGで描いてあるだろうと予想した。操車場や駅で見かける列車は実物だろうが,踏み切り内のトラックをはね飛ばし,停止計画の障害物を乗り越え(写真1),大曲りで傾く貨物列車(写真2)は,勿論CGの産物である。列車そのものだけでなく,吹っ飛ばされて宙に舞い,大破する事物をCGで自在に描けるようになったことの方が意義は大きい。ブレーキをかけた時,車輪とレールから飛び散る火花も,勿論CGによる描写だ(写真3)。VFX主担当のAsylum VFX社は中堅スタジオだが,トニー・スコット監督作品の常連であり,渋い良質の仕事をする。
 
   
 
 
 
写真1 破壊しながら驀進するシーンはCGの出番
 
   
 
 
 
写真2 クライマックスの大曲り。(上)貨物列車全部がCG,(下)完成映像。
 
   
 
写真3 ブレーキにより飛び散る火花もCG表現
 
   
   相棒の車掌ウィル役は,『スター・トレック』(09年6月号)のカーク船長役でブレイクしたクリス・パイン。若々しい演技でかなり危険なスタントも,自らこなしたようだ(写真4)。2人で貨物列車の屋根を移動したり,連結器にぶら下がったり,この種のアクション映画のリズムを支えているのは,カメラワーク,編集,音楽の一体となった連携作業である。とりわけ,本作では編集の上手さが光っていた。            
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写真4 際どいスタントシーンは,構図も編集も秀逸
(C) 2010 TWENTIETH CENTURY FOX
 
   
   
  (画像は,O plus E誌掲載分から入替・追加しています)  
   
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