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O plus E誌 2010年11月号掲載
 
 
 
 
『エクリプス/トワイライト・サーガ』
(角川映画配給)
 
 
      TM &(C) 2010 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [11月6日より丸の内ルーブルほか全国ロードショー公開予定]   2010年9月7日 梅田ブルク7[完成披露試写会(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  3作目にして,ようやく観賞に堪える活劇に  
   人気シリーズの3作目である。といっても,本シリーズが気に入っていた訳ではない。第1作『トワイライト〜初恋〜』(09年4月号)は女子供でも作れそうな他愛もない作品と紹介したが,2作目『ニュームーン/トワイライト・サーガ』(09年12月号)はメイン欄で取り上げる気になれず,短評欄に押し込め,最低ランクの★しか与えなかった。ステファニー・メイヤー原作の世界的ベストセラーの映画化で,全4巻の原作通りに,1作ずつ映画化されている。洋の東西を問わず,こんなに幼稚な物語や映画を若者が好み,大ヒットするのが嘆かわしい。これは単に若者のマインドを理解できなくなった世代の僻みなのかも知れない。米国の映画興行界では,若い女性観客層を主ターゲットとして成功を収めたシリーズとして話題になっていた。
 さて,その3作目である。米国では独立記念日前の公開で相変わらずのメガヒットと聞いても,全く驚かなかった。前作は昨年の感謝祭時の公開で,その間7ヶ月余しか経っていないから,当然並行した製作である。監督はクリス・ワイツから,『30デイズ・ナイト』(07)のデヴィッド・スレイドにバトンタッチされている。ここまで稼ぐと,製作費もたっぷり使え,ヴァンパイアものが得意な監督まで配して来たから,少し期待がもてそうだ。配給元が角川映画になり,宣伝方法も少し変わったためか,試写を観る前からこれまでになく興味がそそられた。いや,広報宣伝の違いではなく,予告編で観たCG製の狼の動きが素晴らしく,いよいよ本格化してきたかと感じたからだろう。
 物語は,全編を通じて,堂々たる男女の三角関係を押し通す。ヒロインのベラ(クリステン・スチュワート)と恋愛関係にあるヴァンパイアの美青年エドワード(ロバート・パティンソン)と横恋慕するオオカミ族のジェイコブ(テイラー・ロートナー)が前作同様に渡り合うが,彼女の危機を救わんと協力し,連合を組んで共通の敵と戦うことになる。自分を慕うイケメン男性2人を遠慮なく操ることができ,若い女性としてはこの上ない快感だろう。これは,筆者でも納得できる。
 物語の盛り上げ方も上手くなった。エドワードのカレン家とオオカミ族の連合軍と,邪悪なヴァンパイアのヴォルトゥーリ族とのバトルへの興味がふつふつと湧いてくる。音楽の使い方も洗練されてきた感じだ。前作までの背景を知らない観客には面白くないだろうが,バトルそのものは本作だけを眺めても迫力は充分だ。
 ヴァンパイアを象徴する目の色(写真1)は,琥珀色にも金色にも見えるが,これはコンタクトレンズだろうか? いや,さすがに最近ではデジタル処理で着色していることだろう。鬱蒼とした森,雪山など,自然の美しさを感じるシーンも多々あるが,恐らくその半数以上はVFX処理の産物だろうと見受けられる。
 
   
 
写真1 琥珀色の目はコンタクト? いや,VFX処理だろう。
 
   
   ここまではCG/VFXにさして観るべきものはなかったが,Tippett Studio製の狼は前作より格段の進歩を遂げていた。前作では熊に見えたずんぐりした獣が,今度はしっかり狼に見えるではないか。まず,体毛の生成方法自体を新開発したようだし,毛の艶を出すためHDRI(High Dynamic Range Imaging)を使い始めたとのことだ(写真2)。質感もさることながら,顔つきも精悍になり,動きも敏捷になった。狼の骨格から,筋肉やスキンの与え方,動かし方まで全部やり直したのだろう。ジャンプのシーン(写真3)は圧巻で,人間の姿をしたヴァンパイアとの絡みも巧みに処理されている。前作の汚名を返上し,面目躍如たる出来映えだ。
 ワイヤーの使い方はまだまだの感もあるが,バトル全体としては大作のアクション・シーンに相応しいレベルに達したと評価できる。この分なら,最終章の次回作はもっと期待していいだろう。
 
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写真2 前作に比べて,毛並みの質感はぐっと向上
 
   
 
 
 
写真3 質感だけでなく,ヴァンパイア集団を襲うシーンの動きも絡みの表現もなかなかの出来映え
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  (画像は,O plus E誌掲載分から削除・追加しています)  
   
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