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(注:本映画時評の評点は,上から,,,の順で,その中間にをつけています。) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
先入観での食わず嫌いは大間違い | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
映画宣伝にとってポスターや予告編の出来は大きな意味をもち,公開が近づくと新聞広告やTVスポットが興行成績を左右する。アメリカ映画の場合,最近はいち早く伝わってくるBox
Officeの順位やインターネットでの評判が影響を及ぼす。日米同時公開が増えているのはこのためだ。この映画の場合はその逆に,本国や他国での評判が食わず嫌いの日本人を映画館に向わせそうだ。 このアニメ作品のチラシや予告編を目にし始めたのは,昨年の秋から年末にかけてだった。『シュレック』の大ヒットに続いて『モンスターズ・インク』はそれを上回る滑り出しを見せた頃だったが,このフルCG映画の予告編にはおよそ興味をそそられなかった。何やら得体のしれない動物の滑稽な顔立ち(写真1)は,バカバカしい映画の感じがして,食指は動かなかった。2Dアニメの『アナスタシア』(98)はまずまずだったが,2Dと3D-CG混在の『タイタンA.E.』(00)でコケた20世紀FOXが凝りもせずにというアタマもあったようだ。フルCGでディズニー対ドリームワークスの2大勢力に割って入れるとは思えなかった。『ファイナル・ファンタジー』(01)が惨敗した直後だっただけに,そういう先入観ができ上がっていたようだ。
時代は約2万年前の氷河期。マンモスのマニー,ナマケモノのシド,サーベルタイガーのディエゴの3匹が主役トリオだ。考え方も生き方も違う3匹が出会い,タイガーが狙う人間の赤ん坊ロシャンを拾ったことから,反目し,協力しあって,この子を人間たちのもとへ送り届けようとする。ストーリーは素直ながら中身が濃く,心温まる物語だ。 この映画のCG担当は,NYにあるCGアニメスタジオのブルー・スカイ社。数年前20世紀FOX傘下に入り,LAのVIFX社と合併したと聞いていたが,いつの間にか分かれてFOXの単独100%子会社になっていたようだ。監督は,同社副社長のクリス・ウェッジ。彼が98年に製作した短編CGアニメ『Bunny』は,翌年のアカデミー賞で短編アニメーション賞に輝き,SIGGRAPH 99でも最優秀賞に選ばれている。これは,1年前のピクサー社の『Geri's Game(ゲーリーじいさんのチェス)』と同じ栄誉を得た名作だから,その意味では『トイ・ストーリー2』『モンスターズ・インク』並みのヒット作品を生み出す素地はあったわけだ。 |
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以下,この映画のCGに関する見どころである。 ■登場キャラクタのルックスや背景を単純化してデフォルメしたのは意図的で,リアリティを捨てて親しみやすいキャラクタを目指したとのことだ。これはもともと2D作画アニメとして企画されていたのが,3D-CG利用に変更された由来にもよる。動きも同様で,モーションキャプチャに頼らず,昔懐かしいマンガ映画の味付けを重視している。 ■ピクサー社のレンダラーが局所照明しか扱えないスキャンライン・アルゴリズムのRenderManなのに対して,ブルー・スカイは伝統的に大域照明のレイ・トレーシング法(以下,レイトレ)を使った「CGIスタジオ」にこだわってきた。この映画でもその方針は変えず,計算時間を要するレイトレを中心に据えた。キャラの造形や背景を単純化したのは,ここでポリゴン数を増やしたくなかったという事情もあるようだ。 ■その代わり,レイトレならではの質感表現が随所に見られる。川の水面の反射(写真2左上)は見事の一言に尽きるし,氷の洞窟での半透明感(同右上)や氷の壁面への映り込み(同左下),岩肌や砂地の微妙な質感にもレイトレならではの味が生きている。雪の表面を踏むシーン,残された足跡などは,鏡面反射のレイトレに拡散反射のラジオシティ法をミックスした用法ならではの柔らかなタッチの表現だ。 ■最近はフルCG作品でも,多様なレンダリング手法の結果を多重合成することが当たり前になっている。この映画は多重プロセスは極力避けているが,それでも炎,霞,吐息,砂埃などにはパーティクル法によるレンダリング結果を合成している。ただし,溶岩や滝の表現はイマイチだった。雪降りや吹雪にはこの映画のために新しい手法を編み出したようで,これが効果的に使われていた(写真2右下)。 |
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オーソドックスな脚本の中に遊び心が生きる | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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