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O plus E誌 2000年12月号掲載
 
 
star purasu
『バーティカル・リミット』
(コロンビア映画
/SPE配給)
 
       
      (新宿ミラノ座 00/10/25)  
         
     
  山岳シーンは迫力十分  
   一方こちらは日米同時公開のため,まだアメリカの評判は不明だ。標高はエベレストに及ばないが,危険度は勝るとされるK2を舞台とした山岳レスキュー映画である。当然『クリフハンガー』と比べたくなるが,正月映画の本命と噂されるだけあって,ロケもVFXもスケールはずっと上である。
 冒頭のユタ州でのロッククライミング・シーンは,『M:I-2』とそっくりだ。これは偶然の一致だろう。ヒマラヤによく似たニュージーランドのクック山脈で行ったというキャンプ,ロケは迫力満点で,素晴らしい山岳シーンを堪能させてくれる。もっとも,映像だけを比べるなら,IMAX作品の『エベレスト』の素晴らしさには敵わないが。
 登山中の事故で,父親の命綱を切らざるを得なかった兄妹が主人公である。父の跡を継いで登山家になった妹アニー(ロビン・ターニー)たちがK2登頂を目指すが,雪崩にあってクレバスに落ちる。高度8000mで肺水腫にかかりタイムリミットが迫る生存者救出に,写真家の兄ピーター(クリス・オドネル)が救援隊を編成し高度限界(バーティカル・リミット)に挑む,という設定だ。
 監督は『マスク・オブ・ゾロ』のマーティン・キャンベル,撮影監督は『SWエピソード1』のデビッド・タッターソル,共演は『アポロ13』『ツイスター』のビル・パクストンらで,スタッフもキャスティングも脚本も,ハリウッド・メジャーの水準をクリアしている。雪崩や爆破シーンは大作らしい出来だし,『パーフェクト ストーム』に比べれば人間模様も描かれている。どこといって大きな欠点はないのだが,それでいて少し充足感の足りない映画だ。兄妹愛にはさして感動しないし,ドラマとしての緊迫感が今一つである。延々と続く同じようなシーンに飽きてしまうのは『パーフェクト ストーム』と似ている。
 SFX/VFXが随所に使われていることが感じられる。CG製の雪崩はまずまずだが,実写同士の合成シーンの質は悪くない。ところが,本物の山岳シーンが素晴らしいだけに,その分スタジオ内撮影の場面が安っぽく見えてしまう。もう少しカメラを引くと実録風に見えたのに,少しアップで撮り過ぎたかなと感じた(写真)。
 一番の欠点は音楽で,騒々しさが緊迫感を損なっていた。音楽担当のJ・N・ハワードは,アカデミー賞5度ノミネートのベテランのようだが,この作品に関しては感心しない。
 SFX多用の大作を毎月何本も見ていると,面白さを感じなくなり,ついつい辛口の評をしてしまったが,カップルや家族連れで見る正月映画としては十分合格点だ。雪山がウリだから,冬期を外さないよう日米同時公開としたのは正解だろう。
 
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写真 これはどうみてもスタジオ内撮影
   
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  sen  
 
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