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O plus E誌 2010年10月号掲載
 
 
 
 
『ナイト&デイ』
(20世紀フォックス映画)
 
 
      (C) 2010 TWENTIETH CENTURY FOX

  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [10月9日よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー公開予定]   2010年8月25日 角川試写室(大阪)    
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  屈託のないお気楽映画だが,これはこれでいい  
   平凡な女性が空港で何度かぶつかったイケメン男性と恋に落ちるが,彼は重要任務を負ったスパイであったため,CIAや謎の組織に追われ,世界各地をめぐる大騒動に巻き込まれる。こんな前提のロマンティック・コメディで,主演がトム・クルーズとキャメロン・ディアスと聞いて何を期待する?誰も人間の内面を鋭く描いた物語を想像しないし,芸術性も求めないだろう。その上,SFX/VFXの面でも特筆に値するような話題もないとなると,当欄であえて取り上げる必要もない。ところが,これが結構楽しめて,何となく語りたくなった。ここは,少し長めの短評欄のつもりで紹介しておこう。
 本作が気になったもう1つの理由は,平凡であり,かつ紛らわしい題名のためである。本作の米国公開とほぼ同時期に観たのが,ピクサー製の短編アニメ『Day & Night』であった。『トイ・ストーリー3』(10年8月号)のオマケとして同時上映されたフルCG作品で,小粋な秀作である。性格の違う2人の登場人物を昼と夜を代表する存在に擬したストーリーも,2Dと3Dの使い分けという点でも,見どころの多い実験的作品だった。もともと『Night and Day』や『Day and Night』と題した映画は過去にも何本かあり,複数形,TVシリーズ,音楽アルバムまで含めるとかなり数に上る。
 そこに,まだこんな陳腐な題のアクション大作を作る気かと思いきや,原題は何と『Knight and Day』だった。そーか『ダークナイト』(08) の「Knight(騎士)」で,トム・クルーズはお姫様をお守りする騎士だという訳か。「デイ」に意味はないから,洒落に過ぎないが,こんな題をつける映画がシリアスな物語である訳はない。トム・クルーズは,『ソルト』(10)を断ってこちらを選んだから,負けず劣らずのアクション満載に違いない。
 そんな予想を立てて試写会に臨んだのだが,まさにドンピシャリの映画だった。軽口を叩きながら,軽快なテンポでブンブン飛ばす。主人公のスパイは超人的で,とんだり跳ねたり,敵をバッタバッタと倒すヒーローだ。ここまで屈託のないお気楽映画だと,立派なものだ。そこには,経済不況による雇用不安も地球環境問題も,人生の悩みも何もない。キャメロン・ディアスは,『私の中のあなた』 (09年10月号)『運命のボタン』(10年5月号) で演技派へ転身かと思わせたが,本作ではトム・クルーズのペースに合わせ,見事なノーテンキ姉ちゃんに徹している。
 監督は,『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(05)のジェームズ・マンゴールド。当欄でも絶賛した『3時10分,決断のとき』(09年8月号)の監督が,こんな娯楽一辺倒の映画も撮るのかと驚く。ある意味で,プロの監督だ。1930年代から40年代に流行した「スクリューボール・コメディ」なる映画ジャンルがあるが,それをかなり意識して作ったのかと想像する。
 今やこのクラスの映画なら,VFXの出番は多数あるのが普通だ。主担当は,Rhyrhm & Huesで,他にSOHO FX,Hydraulx等,約10社が参加している。パイロットが死んだ後の旅客機の飛行や不時着シーン,隠れ家の孤島での銃撃戦,オリエント急行の窓から見えるアルプスの光景などには,VFXがふんだんに使われていると思われる。トム・クルーズ主演らしく,アクション・シーンにも新味があり,工夫されている。2度のカー・チェイス・シーンは素直に面白かった。前半の市街地でのチェイスも楽しかったが,出色は終盤のマドリッドでのバイク・シーンだ。2人乗りのバイクが縦横無尽に走り(写真1),市電の隙間を間一髪ですり抜ける。彼らを闘牛用の牛が追い,クルマをも押し倒す。勿論,いずれもCG/VFXのなせる技だ。何頭かは本物かも知れないが,大半はCGでないととても表現できない(写真2)。当欄がこの映画を取り上げる価値は,この牛に尽きる。
 
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写真1 後半の小粋なバイク・チェイスも見せ場の1つ
 
   
 
 
 
 
 
写真2 とてもじゃないが,こんなシーンに本物の牛は使えない(上:合成前,下:合成後)
(C) 2010 TWENTIETH CENTURY FOX
 
   
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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