SFX/VFX映画時評
head
title home 略歴 表彰 学協会等委員会歴 主要編著書 論文・解説 コンピュータイメージフロンティア
| INDEX | 年間ベスト5 | DVD特典映像ガイド | SFXビデオ観賞室 | SFX/VFX映画時評 |
 
title
O plus E誌 2010年6月号掲載
 
レギオン』
(スクリーン・ジェムズ
/SPE配給)
 
       
オフィシャルサイト[日本語][英語]
[5月22日より新宿バルト9ほか全国ロードショー公開中] 2010年5月14日 SPE試写室(大阪)
   
(注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)
鋼鉄製の大きな翼は,VFX出身の監督らしい味付け

 スクリーン・ジェムズというのは,ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント系列の映画製作会社で,コロンビア映画,トライスター・ピクチャーズ名義のものとは一味違うマニアックな作品を製作・配給している。SF,ホラーが得意で,『バイオハザード』シリーズ,『アンダーワールド』シリーズがヒット作となっている。丁度,ディズニー・グループのディメンション・フィルムズと同じ位置づけになっている。
 この名義というだけで,B級作品であり,スペクタクル史劇や人生をしみじみと見つめ直すヒューマンドラマを期待してはいけない。配給側は,批評家の高評価は期待していないし,映画祭の賞狙いとも無縁である。あくまで,定番であっても映画館で一定のカタルシスを求める観客向けの映画だ。いや,定番であればあるほどいいいとも言える。それなら,敢えて当欄で語るほどのCG/VFXも登場しないはずなのだが,ポスターの大きな翼を拡げた大天使の姿に魅せられて,試写会に足を運んでしまった。これだけ大きな翼となると,もはや造形物を背中に背負うことはなく,当然CGで描いているはずだ。B級とはいえ,それが観たくなった訳である。
 監督は,ILM出身で,Orphaage社を立ち上げたスコット・スチュアート。『アイアンマン』(08年10月号)『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(05年12月号)のVFXを担当したというから,本作でも予算の範囲内でしっかりとしたVFXを見せてくれることだろう。
 レギオンというのは堕落した世界を一掃するため下界に降りてきた天使の集団で,人間に乗り移り,愚かな人間を滅ぼす行動を起こすという設定だ。悪魔が取り憑いたのではと思うが,ここは天使だそうだ。砂漠の中の孤立したダイナー(プレハブ式レストラン)に残された人々が1人ずつ死んで行くサバイバル戦は,ゾンビものそのものである。まさに定番の味付けだ。
 主役は神に背き,人間を救おうとする大天使のミカエル(ポール・ベタニー)である。大きな翼の天使はガブリエルじゃなかったかと思ったら,彼らは天界で同僚らしい。他にラファエル,ウリエルがいて「四大天使」だそうだ。中性的な役柄で登場することもあるが,本作では強い男性であり,ガブリエル(ケヴィン・ドュランド)は敵役で,彼もしっかり大きな翼をつけて登場する(写真1)。てっきり,白い翼だと思っていたが,2人とも黒い翼だった。これは羽毛というより,鋼鉄製の楯の働きをし,羽先は鋭利な刃にもなる。その頑強そうな質感を表現し,かつ羽ばたく様を描くには,CG以外にはあり得ない。VFX出身の監督らしい,うまい演出である。

   

写真1 最大の見どころは大天使の翼。良くできている。

   
 その他では,穏やかな老婆が,いきなり大きな口を開けた形相で噛み付くシーンに驚いた(写真2)。その後,天井にしがみつき,這い回る動作には笑ってしまった。勿論,いずれもVFXの産物で,この監督ならではの演出だろう。ここは出色だったが,続くアイスクリーム売りの動作(写真3)や,虫の大群(写真4)にはもう驚かない。
 残りは,予定通りのB級アクション・スリラーだった。最初からその覚悟なら,そう外れではない。 
()
   

写真2 穏やかな婆ちゃんがいきなり変貌して驚いた

   

写真3 アイスクリーム売りの形相には,もう驚かない

   

写真4 押し寄せる虫の大群。勿論,CGでの描写。


   
(画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)
Page Top
  sen  
back index next
   
   
<>br