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(注:本映画時評の評点は,上から,,,の順で,その中間にをつけています。) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
石黒教授も彼の分身ロボットも登場するSF映画 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
3D上映の大作揃いのディズニー映画配給作品の中で,目立たないながら,ブルース・ウィリス主演のこのSF映画が気になっていた。「サロゲート(surrogate)」とは「代理,代用物」の意で,本作では,人間の社会活動を代行する「身代わりロボット」の意味で使われている。 |
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写真1 サロゲートの大量生産工場 |
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この近未来社会の描き方はフィリップ・K・ディック作かと思わせるが,ロバート・ヴェンディティとブレット・ウェルデル作のグラフィック・ノベルが原作とのことだ。監督は『U-571』(00年9月号)『ターミネーター3』(03年8月号)のジョナサン・モストウで,アクション・サスペンスは得意だ。主演のFBI捜査官トム・グリアーにブルース・ウィリス,彼の妻マギーに『007/ダイ・アナザー・デイ』(03年2月号)のロザムンド・パイク,同僚の女性捜査官ジェニファーに『サイレントヒル』(06年7月号)のラダ・ミッチェル,サロゲートの生みの親・チャンター博士にベテラン俳優のジェームズ・クロムウェル,というキャスティングである。 冒頭から登場するグリアー捜査官のB・ウィリスが頭髪だけでなく,顔もやけに若いと思ったら,ほとんどのサロゲートが実物よりも若作りだった。顔,ボディ,声,性別も,すべて自分好みに分身をオーダーメイドできるとなると,大半の人間は若作りにしたがるようだ。身代わりロボットといっても人間そっくりだから,ほぼ全俳優を若作りメイクするだけで達成できる。とはいえ,典型的親父顔のB・ウィリスをメイクだけでここまで若く見せられるのかと疑うシーンも多々ある(写真2)。そうしたシーンは,彼の顔を3Dスキャンした形状データからCGフェイスを作り上げて使ったようだ。皮膚が裂けて,中のメカが見えるシーンが何ヶ所か登場するが,勿論VFXを駆使した定番表現で,これは『ターミネーター』シリーズへのオマージュだろう(写真3)。 |
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写真2 サロゲートのB・ウィリスはぐっと若作り | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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写真3 『ターミネーター』へのオマージュか |
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サロゲートは自分で動き回れる自律型ロボットではなく,マスタースレーブ方式で人間が遠隔操縦するテレプレゼンス型ロボットだ。人間は,自宅の密室の中で椅子に座ってサロゲートを操縦している。原作者たちが技術動向調査をする中で,テレプレゼンス研究に遭遇し,そこで観た現行方式に引きずられたようだ。そうだとしても,この椅子はもう少し未来を感じさせるデザインであって欲しかった。その他の映像機器,情報機器も未来型デザインとは言い難い。映像モニターは大画面TVを配しただけだし(写真4),USBメモリや目玉型のWebカメラなどは,現行製品をそのまま使っているだけだ。B・ウィリスの出演料に予算をとられたのか,美術やVFXにはあまり製作費をかけられなかったのだろう。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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SF映画は女性観客にあまり好まれないが,この映画の前半は開き直ったかのように,B級SF映画の匂いがプンプンする。根っからのSFファンしか意識していないかのようだ。その分,SFとしてのメッセージはしっかりしていて,物語自体は十分楽しめる。後半のカーチェイス等は一級のアクション映画だけに,前後半のバランスの悪さが少し残念だった。 ところで,石黒教授がいつ映画に登場するかといえば,彼の分身のGeminoid(双子のアンドロイドの意)とともに一瞬出て来ただけである(写真5)。映画の冒頭で著名なロボット学者が次々と登場し,ロボット技術発展史を短く語る。石黒教授の他に米国カーネギーメロン大学の金出武雄教授の顔もあった。 |
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写真5 石黒浩教授とGeminoid(どちらが本物?) |
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(画像は,O plus E誌掲載分から削除・追加しています) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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