head
titlehome略歴表彰学協会等委員会歴主要編著書論文・解説コンピュータイメージフロンティア
| INDEX | 年間ベスト5 | DVD特典映像ガイド | SFXビデオ観賞室 | SFX/VFX映画時評 |
 
title
 
O plus E誌 2009年10月号掲載
 
 
 
パイレーツ・ロック』
(ユニバーサル映画
/東宝東和配給)
 
      (C) 2009 Universal Studios  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [10月24日よりTOHOシネマズみゆき座ほか全国東宝洋画系にて公開予定]   2009年8月21日 東宝東和試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  60年代のヒット曲満載だが,最後に意外なVFXの出番  
   題名から音楽映画とすぐ察したが,原題は『The Boat That Rocked』なので,「パイレーツ」が何を意味するのかが分からなかった。英国製の映画だが,11月の米国公開時には『Pirates Radio』なる題になるそうだから,その中間をとったのかと想像した。時代・舞台は1966年の英国で,北海上に船を浮かべ,そこから24時間ロック・ミュージックを流した海賊ラジオ局の話だという。そーか,海賊版の海賊だったのだ。
 でも,当時の東欧圏じゃあるまいし,なぜそんなことをしたのかが分からない。1966年といえば,1962年にデビューし,既に世界的な人気グループとなったビートルズが「リボルバー」を発表し,日本公演にやって来た年だ。それに続けと,アニマルズ,ローリング・ストーンズ,キンクス,デイブ・クラーク・ファイブ,ハーマンズ・ハーミッツも活躍し,英国製のロックはリバプール・サウンドやブリティッシュ・ロックと呼ばれ,世界を席捲していたはずだ。アメリカで人気を博したビーチ・ボーイズもイギリスに出稼ぎに行ったくらいである。ところが何と,当時の英国にはラジオ局は国営放送の BBC1局しかなく,1日にポップ・ミュージックを流す時間は45分間だけだったという。そーか,それでようやく時代背景が理解できた。日本では各民放局が深夜放送を流し,受験生を中心とした若者文化が芽生えていた時代だから,想像できなかったのも無理はない。
 では,この映画は実話かというと,そうでもないらしい。「Radio Caroline」「Radio London」といった複数の海賊局をモデルとし,架空の「Radio Rock局」の物語を作り上げたようだ。脚本・監督は,『ラブ・アクチュアリー』(03)で監督デビューしたリチャード・カーティス。なるほど,それなら挿入曲選択のセンスも悪くないはずだ。元来は脚本家で,TVの『Mr.ビーン』シリーズ,映画では『フォー・ウェディング』(94)『ブリジット・ジョーンズの日記』(01)等を手がけているというので,楽しいミュージカル映画が期待できる。
 ドラッグと喫煙で高校を退学させられたカール(トム・スターリッジ)が更生のため,母の旧友のクエンティン(ビル・ナイ)の船に預けられるが,この船(写真1)が1日中ヒット曲を流し続ける海賊ラジオ局だったという設定だ。愉快な8人のDJたちとの音楽の楽園での生活,海洋犯罪法を設けて海賊局を規制しようとする当局とのやり取りを楽しく描いている(写真2)。ビル・ナイといえば,『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズで顔面が蛸足で覆われたデイヴィ・ジョーンズ役で登場した役者だが,このパイレーツでは素顔で登場する。他には,『カポーティ』(05)のフィリップ・シーモア・ホフマンや『ノッティングヒルの恋人』(99)のリス・エヴァンスらが個性的なDJ役で登場する。
 
   
 
写真1 海賊ラジオ船「ラジオ・ロック号」の全景
 
   
 
写真2 1日中こんな感じで,皆さん楽しそう
 
   
   では,この映画のどこにCG/VFXが使われているのかと言えば,少しネタバレになることを許してもらおう。当局の規制をものともしない海賊ラジオ船が,最後に座礁し,海中に沈没してしまう。浸水から沈没までの一連のシーンが,実に見事なVFXのオンパレードだ。担当が英国の雄Double Negativeなら,出来が悪かろうはすがない。どう見ても『タイタニック』(97)の船内の混乱や沈没シーンを意識した作りだ。沈没寸前まで音楽を流し続けるシーンまで来てやっと気付いた。原題の「Rocked」は,「座礁した」という意味との掛け詞だったのか! そして,沈没後の海上では,『タイタニック』とは全く異なる展開が待っていた。VFXも大活躍するこの場面も見ものだが,スチル写真がないのが残念だ。
 映画の中では50数曲のヒット曲が使われているが,沈み行く中で流れるプロコル・ハルムの「青い影」とビーチ・ボーイズの「素敵じゃないか」がたまらなく美しい。ところが,ビートルズが1曲もない。版権と使用許可の関係で実現が難しかったのだろうが,海賊ラジオの物語なら,こっそり1, 2曲もぐり込ませて欲しかったところだ。やっぱり劇場公開版では,そうもいかないか(笑)。海賊版はどうする気だろう?    
 
  ()  
     
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
  Page Top  
  sen  
 
back index next
 
     
   
<>br