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O plus E誌 2006年10月号掲載
 
    
 
その他の作品の短評
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
   ■『カポーティ』:トルーマン・カポーティの代表作で,ノンフィクション・ノベルの金字塔『冷血』誕生の舞台裏を描いた力作だ。犯人に同情しつつ,作品完成のため死刑執行を切望するカポーティの狂気と苦悩を,フィリップ・シーモア・ホフマンが渾身の役作りで演じる。なるほど,作品賞・監督賞でなく,今年のオスカーを主演男優賞で得たのが理解できる。犯行シーンよりも絞首刑シーンが生々しい。この映画を観た後,原作を読みたくなること必至だ。
 ■『夜のピクニック』:第2回日本本屋大賞受賞の同名小説の映画化作品。ヒットした『博士の愛した数式』の2匹目の泥鰌を狙ったのだろうが,そうは甘くない。演出もカメラも音楽もだるい。青春映画というからには,大人が観ても心がうずく何かが欲しい。この監督は未熟な俳優たちに演技をつける気がなかったのだろう。 製作陣も,若者に観せる映画などこの程度で十分だと舐め切っているように感じる。
 ■『記憶の棘』:見知らぬ10歳の少年が現われ,「僕はショーン。君の夫だ」と言う。果たして少年は,10年前に急死した夫の生まれ変わりなのか……。ミステリー仕立てだが,観客には謎解きのヒントが示されている。事実が判明して以降の未亡人ニコール・キッドマンの迫真の演技が光る。原題は『Birth』だが,味のある邦題だ。繊細なタッチの音楽が実にいい。
 ■『ブラック・ダリア』:『L. A.コンフィデンシャル』(97)に続いて,ジェイムス・エルロイのノワール小説を映画化した作品。1947年LAで起きた女性切断死体の「ブラック・ダリア事件」を題材にしている。ベテラン監督ブライアン・デ・パルマが猟奇殺人事件の謎解きを独特のタッチで描くが,複雑な人間関係の説明が十分でなく,観終わって少し消化不良感が残る。オスカー女優ヒラリー・スワンクが妖艶な美女マデリンを演じるのが意外性の魅力だ。ただし,彼女が被害者エリザベス(ミア・カーシュナー)にそっくりという設定なのに,この2人がまるで似ていないのが画竜点睛を欠く。
 ■『地下鉄(メトロ)に乗って』:原作は吉川英治文学新人賞を受賞した浅田次郎の出世作で,浅やんお得意のタイムスリップ&人情ものだ。地下鉄の坑内移動をタイムトンネル風に描くのはいいが,移動先の東京五輪時代の町並みや戦後の闇市風景がいかにも作り物だ。主演の堤真一以外は学芸会同然の演技で,どの時代にも躍動感がない。こんな安直な映画化では,原作が泣く。
 ■『16ブロック』:『リーサル・ウェポン』シリーズを生んだ老匠リチャード・ドナーが監督,『ダイ・ハード』のブルース・ウィリスが主演で,ストーリー設定はC・イーストウッドの『ガントレット』(77)にも似ている。そうした人気ポリスアクション・シリーズのファンにはピッタリで,娯楽作品としては合格点だ。感動はないが,定番の展開と事件解決の満足感は外していない。ブルース・ウィリスのしょぼくれ振りが見ものだ。
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