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(注:本映画時評の評点は,上から,,,の順で,その中間にをつけています。) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
誰もが知っている時代背景と国籍不明の圧倒的映像美 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
今月のメインは邦画2本だけという当欄始まって以来の出来事だ。この作品にも松竹が絡んでいる。もっとも,ローマ字表記の本作は,ワーナー・ブラザースも出資し,一瀬隆重プロデューサーがしっかりと世界市場を見据えた企画作品である。監督は,デビュー作『CASSHERN』(04)が話題を呼んだ紀里谷和明。原案も彼自身であり,製作・脚本・編集にも名を連ね,自ら撮影監督も務めている。NYで写真家としてデビューし,ミュージック・ビデオで脚光を浴びた人物だが,その名を知らない人にも,宇多田ヒカルの元夫と言えば分かるだろうか。 |
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写真1 左:織田信長,右:服部半蔵と石田光成。 |
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デジタル技術の利用では,冒頭の夜の大坂の町と花火のシーン(写真2)の豪華さで度肝を抜かれる。大坂城内のシーンの派手さも負けてはいない(写真3)。秀吉の衣装以上に奇妙奇天烈なのは,大坂城の外観だ(写真4)。それが,見慣れてくる内に「素晴らしいデザインだ。太閤秀吉の威光を表現するには,これでなくちゃ」と感じるようになるから不思議だ。その一方で,多数の滝の場面に蛍が舞うシーン(写真5)などは,癒し系のVFXであり,この監督の美術センスの好さを感じる。 | |
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こうしたシーンを含めて,全編2,000カット以上でデジタル加工が施されている(写真6)。実写とCGの合成というより,デジタル映像の中にグリーンバックで演技する俳優を配すといった感じである(写真7)。その点では,前作『CASSHERN』の延長線上にあるのだが,遥かに出来がいいと感じるのは,この5年間の日本のVFX業界のレベルアップのお蔭だろう。CGの利用度で『スピードレーサー』(08年7月号) に負けていないし,完成度では『300 <スリーハンドレッド>』(07年6月号) に匹敵する面白さだ。そして,クライマックスの関ヶ原の戦いは,『スター・ウォーズ』新シリーズのバトル・ドロイド達の戦いを彷彿とさせる迫力だ。筆者の好みで言えば,この豪華さや派手な演出は,前半を少し抑え気味にして,後半一気に爆発させた方がより効果的だったと感じた。それが満点☆☆☆からの若干の減点である。 という風に,あちこちで常軌を逸した新人類映像なのだが,それでいて安心して観ていられるのは,観客の誰もが信長・秀吉・家康を始め,明智光秀や石田三成の役割を知っているからだろう。脚本も映像もその基本パターンを公知のものとして,意図的にそこから外すことができる訳である。広末涼子の茶々は平凡だが,霧隠才蔵の人物造形が秀逸で,大沢たかおの好演も光る。 では,この映画をその常識が通じない海外にもって行った場合に,どの程度の理解をもって受け容れられるのであろうか? その答えは筆者も知りたい。案外,我々が『300』や『ベオウルフ/呪われし勇者』(07年12月号) を観た時と同様,歴史的意味は考えず,映像美だけが観賞対象となるのかなと思う。 |
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(画像は,O plus E誌掲載分に追加しています) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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