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O plus E誌 2007年12月号掲載
 
 
 
『ベオウルフ
/呪われし勇者』
(ワーナー・ブラザース映画)
 
      (C)2007 Warner Bros. Ent.  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [12月1日より丸の内プラゼールほか全国松竹・東急系にて公開予定]   2007年11月9日 ワーナー試写室(東京)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  一段と進化したパフォーマンス・キャプチャー  
 

 続く3本目もフルCG映画である。ただし,趣きは相当違い,リアリティ重視の映像表現を志向している。監督はロバート・ゼメキス。本物の俳優を使って演技させ,顔や姿もそっくりのルックスに仕上げるやり方は,3年前にトム・ハンクス主演の『ポーラー・エクスプレス』(04年12月号)で実験済みである。
 同作ではトム・ハンクスが1人5役を演じ,その演技時の表情や動きをモーションキャプチャー (MoCap)装置で捕らえて,それをCGキャラに付与することをパフォーマンス・キャプチャー (PerCap)と呼んだ。今回は,主演のレイ・ウィンストンの他に,アンジェリーナ・ジョリー,アンソニー・ホプキンス,ジョン・マルコビッチ,ロビン・ライト・ペン等の豪華出演陣の演技をほぼすべてPerCapしたというから,気合いが入っている。所詮フルCGじゃ大人向きの映画は無理だろうと考える前に,挑戦好きの語り部R・ゼメキスなら,きっと見応えのある作品に仕上げていると期待しようではないか。
 題材は,8世紀に古英語で書かれた英国最古の英雄叙事詩「ベオウルフ」である。J・R・R・トールキンがこの古典を研究し「指輪物語」を著したというから,ファンタジーの源流であるらしい。既に何度か映画化されている。差し詰め,我が国の古事記や日本書紀に登場する日本武尊(倭建命)に当たるのだろうか。いや,怪物グレンデルや炎を吹くドラゴンを退治する英雄譚であるから,八岐大蛇を退治した素戔嗚尊だろう。
 さて,フルCGによる俳優の置き換えであるが,写真1のレベルにまで達している。実在の俳優に近い分だけ,却って微妙な違和感がある。しかしながら,それは映画の冒頭だけで,物語が進行する内にその違和感はほとんどなくなってしまう。人形を使ったコマ撮りアニメですらそうだから,本人の体形を3Dスキャンし,顔の表面までテクスチャ・マッピングしたCG映像なら当然のことだ。顔を幾分絵画調に留めた『ポーラー…』は後半その無表情ぶりが気になったが,本作品では表情は極めて豊かで,技術の向上ぶりが感じられる。
 難を言えば,若い女性の表情作りが苦手で(写真2),若き王妃のウィールソーには無理があった。演じるR・W・ペンの実年齢よりも若い設定なので,尚更難しいようだ。一方,中高年以上の男性の方がぐっとリアルに見え,それも年を取れば取るほどデキが良い(写真3)。勇者ベオウルフも従者のウィグラーフも,後半の老いてからの方が数段優れていた。肌に皺や滲みがあると似せやすく,さらに口ひげや顎ひげがあった方がリアルに見える。これにはかつて『ファイナルファンタジー』(01年9月号)で老シド博士が最も好評であったことを思い出す。

     
 
写真1 CG製の俳優はここまで来た。これは是か,非か?
 
     
 
写真2 若い女性はどうも扱いにくい
 
     
 
写真3 老け顔の方がずっと易しい
 
     
 

 女性で苦手なのは顔だけであって,首から下は別問題だ。グレンデルの母は魔性の女だが,その登場場面は最も神秘的(思わせぶり?)で,デジタル・アンジェリーナの裸身には思わず息を飲む(写真4)。このプロポーションが本物かどうか知る由もないが,全身スキャナーで入力したままのデータだと信じておきたい(笑)。その他の髪の毛や衣服や背景をリアルに描くのは,現在の技術をもってすれば何も問題もない。無理してロケ地を探すより,海も山もCGで描いた方が得策だ。一方,衣装に関して言えば,一旦実物で古代の衣装を作っておき,それをスキャンしている(写真5)。質感が高まる所以である。
 実写よりもCGの威力が大きく発揮されたのは,炎の灯りだけで描く夜の室内シーンだろう(写真6)。本物の照明でこの微妙なライティングを作り出すのは並大抵ではないが,CGなら自在に描くことができる。これが自然に見えるのは,炎のCG表現自体が完璧に近いからである。本作のCG担当はSony Pictures Imageworksだ。なるほど,同社では炎の表現力は『ゴーストライダー』(07)でしっかりで積み上げてあったわけだ。
 前半のグレンデル(写真7)や後半のドラゴン(写真8)はCGの魅力満載だが,特にベオグラフを背にしたドラゴンの飛翔シーンは大迫力だ。これを観れば,実写+VFXでなく,フルCGで表現したメリットが感じられるだろう。ファンタジー映画としての出来映えも上々だ。映画そのものは大傑作ではないが,技術進歩をここまで見せられれば,本欄としては☆☆☆と評価せざるを得ない。

 
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写真4 まるで本物かと思うデジタル・アンジェリーナの裸身。しっかり,前からのシーンもあります。
 
     
 
写真5 甲冑も衣装も,まず本物を作ってからCGに変換
 
     
 
写真6 夜の室内の炎だけでの微妙なライティングも,CGでなら簡単
 
     
 
写真7 これがグレンデル。CGならではの造形。   写真8 これがドラゴン。飛翔する姿はぐっと雄大。
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  (画像は,O plus E誌掲載分から追加してします)  
   
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