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O plus E誌 2009年3月号掲載
 
 
 
マダガスカル2』
(ドリームワークス映画
/パラマウント ピクチャーズ配給)
 
  TM & (C) 2008 DreamWorks Animation L.L.C.
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [3月14日より新宿ピカデリーほか全国松竹・東急系にて公開予定]   2009年2月6日 東映試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  続編もテンポのいい上質のエンターテインメント  
 

 すっかり定着したフルCG長編アニメも,それだけでは当欄であえて語ることもなくなった。本作も短評で済まそうと思っていたのだが,急遽取り上げることにした。実を言えば,今月は『ヤッターマン』と『DRAGONBALL EVOLUTION』を比較して語るつもりだった。ところが,後者の試写が全く待に合わないため,身替わりで格上げしての紹介になった次第だ。
 とはいうものの,CGアニメ界の二大勢力の1つであるPDI/DreamWorks Animationが放つ自信作である。勿論,昨年11月の開幕週は,Box Office No.1だった。前作(05年8月号)を上回るダッシュで,北米だけで興収約1億8千万ドルに達している。同社の意欲作『カンフー・パンダ』(08年8月号)やライバルのDisney/Pixarの『WALL・E/ウォーリー』(08年12月号)には少し劣るものの,堂々たる数字である。半年に1作のペースでも質は落ちないし,次に控えている3D版『モンスターズ vs. エイリアン』も楽しみだ。
 日本でも『ドラえもん』『名探偵コナン』『クレヨンしんちゃん』等々が毎年安定した実績を上げているから,家族連れ対象のアニメ作品が業績好調でも不思議はない。問題は世界市場を見込めるだけの普遍性と大人が観ても楽しめる作品性を保っているかだ。DreamsWorksアニメは,その点でも毎回十分に及第点であるのだが,どうも日本市場での成績はパッとしない。どうしてもディズニーにはブランド名で負けてしまう感じだ。それが残念でならないので,あえて応援団に回ろう。
 監督・脚本は,前作と同様,エリック・ダーネルとトム・マクグラスだ。ライオンのアレックス,シマウマのマーティ,キリンのメルマン,カバのグロリアという4頭の主役動物キャラは同じだから,脚本もこなれている。観る側も素直に入りやすかった。
 前作では,外界に憧れてNYのセントラルパーク動物園を逃げ出した動物たちが辿り着いた先がマダガスカル島で,そこで繰り広げる冒険が描かれていた。本作の原題は『Madagascar: Escape 2 Africa』で,続編の「2」と「To」を掛けてある。島からNYへ帰ろうとしたところ,飛行機が燃料切れでアフリカの広大な大地に不時着する。そこはアレックスの生まれ故郷だった。自分たちと同じ種類の動物が沢山いる中で,彼らのサバイバルをかけた新たな冒険が始まる……。
 PDI/DreamWorks作品は,テンポのいいギャグ,パロディ,歯切れの好いセリフがウリだ。ディズニー作品より少し想定観客層が上で,ドライで都会派だと言える。そこがベタッとした人情噺を好む日本のファミリー層にはアピールしないのかも知れない。今回は,敢えて字幕版でなく日本語吹替版で観ることにしたが,これがなかなか良かった。字幕版では書き切れないセリフが,吹替版で見事に決まっている。いつもながらに音楽のノリもよく,選曲もいい。米国映画定番の家族愛中心で,アクションとギャグも盛り込んで90分以内という制約の中で,上質のエンターテインメントに仕上がっている。
 CGの出来映え,描画力に関する感想は以下の通りだ。
 ■ 前作同様,動物のキャラは思いっきりデフォルメしたマンガ調だが,背景の大自然はかなり手の込んだリアルな描写である(写真1)。特に目立ったのは,サバンナの草地の表現だ。緑一面でなく,枯れ草のような褪せた色での描写が見事だ(写真2)。動物の移動で草が掻き分けられ,踏みつけられたりする様も克明に描かれている。巧みな衝突判定を取り入れているように見えた。

 
   
 
写真1 キャラはマンガ調だが,背景の描写が極めてリアルだ
  写真2 褪せた色の草原や裸地の描写が見事
 
 

 
   ■ 水の表現が見事なのは以前からだが,水場が干上がった後の乾いた感じもよく出ている。ひび割れ,汚れた裸地の描写も秀逸だ。単なるテクスチャーではない。
 ■ 森の木々の描写も好い出来映えだった(写真3)。これだけの分量で単調に見せないのは,木の表現専用の良いソフトを開発してもっているのだろう。
 ■ カバやシマウマの群れなど,CGが多頭数の表現に優れていることを活かしている。特に,マーティが紛れ込むシマウマの群れは,ギャグとしても最高だ。
 
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写真3 森の木々の表現も進化している
TM & (C) 2008 DreamWorks Animation L.L.C. All Rights Reserved.
 
   
  (画像は,O plus E誌掲載分から追加しています)  
   
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