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O plus E誌 2009年3月号掲載
 
 
 
ヤッターマン』
(松竹&日活配給)
 
  (C) 2008 タツノコプロ / ヤッターマン製作委員会
  オフィシャルサイト[日本語]  
 
  [3月7日より新宿ピカデリーほか全国松竹系にて公開予定]   2009年2日12日 梅田ピカデリー[完成披露試写会(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  鬼才が放つ人気アニメの実写映画化作品  
 

 「国民的超人気アニメ,待望の実写映画化!」だそうである。実を言うと,筆者はそのアニメとやらを全く観たことがない。いや「ヤッターマン」という名前すら,今まで全く知らなかった。そもそもTVアニメは余り見ないが,「ガッチャマン」や「キン肉マン」なら知っている。この「ヤッターマン」が初耳だったからと言って,非国民扱いされる筋合いはないが……(笑)。
 TVアニメに熱中するのは小学生から中学生時代がピークで,連載コミックは高校生から大学生まで年齢層が上がる。誰しもその時代に熱中した作品や人気番組はいつまでも忘れない。少年少女向き番組を知るもう1つの機会は,自分の子供のために番組録画し,映画化されて劇場まで足を運んだ場合だ。筆者の場合,「ヤッターマン」はそのタイムゾーンにも登場しなかった訳だ。
 ちょっと周りを調べてみると,30代後半から40歳前後に大人気だった。その一方で,学生世代にはほとんど知名度がなかった。20代の半ば息子も「聞いたことがある」程度だった。どうやら同一年齢層の熱狂度は極めて高く,支持年齢層のセグメントが極めて狭い作品のようだ。ここまで長々とファン層の分析をしたのは,この実写映画化作品が,どのように根っからのファンとそうでない層の両方に通用する映画作りをしているかの興味からだ。勿論筆者は,『X-Men』や『スパイダーマン』同様,純粋に初めて観る娯楽映画として評価する。
 TVアニメの骨格は,ガンちゃんという少年が正義のヒーロー「ヤッターマン1号」に,彼女のアイちゃんが「ヤッターマン2号」(写真1)に扮して,敵なるドロンボー一味(ドロンジョ,ボヤッキー,トンズラーの3人組)(写真2)と対決する勧善懲悪物語である。ドロンボー一味がインチキ商売で儲けた金で作るユニークなメカ(ロボット)を倒すのが定番の展開で,そのメカの種類とギャグがウリになっている。かなり低年齢層対象の番組だったようだ。

 
   
 
写真1 ヤッターマン2号とシビレステッキ   写真2 左からトンズラー,ドロンジョ,ボヤッキー
 

 
   実写映画化を熱望した監督は,『スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ』(07年10月号)『クローズZERO』(07)の三池崇史だ。邦画界を背負う48歳のこの鬼才は,高校生時代に原作アニメに魅せられたらしい。ヤッターマン1号は人気グループ「嵐」の櫻井翔,2号は『櫻の園』(08)の福田沙紀というコンビだが,ドロンジョ役に深田恭子を配したことが注目の的である(写真3)。かつての正統派美少女タレントが結構セクシーな役柄を演じ,入浴シーンまであることで話題を集めた。  
 
 
 
 

写真3 話題は深キョンのセクシーポーズ

   
   脚本は劇場映画らしくパワーアップされ,前半は(おそらく原作のイメージでの)ギャグ満載の活劇,中盤にドロンジョが1号に恋する展開があり,終盤は伝説のドクロストーンを巡るファンタジーという味付けである。ビジュアルにこだわる三池作品らしく,セットのスケールや装飾も水準以上で,ワイヤーアクションやCG/VFXも筆者の想像をかなり上回る分量だった。
 ガンちゃんが完成させる犬型の巨大ロボット「ヤッターワン」は5.5mの実物大モデル(写真4)を製作したようだが,それを改造した「ヤッターキング」や各種メカはほぼすべてCG製である(写真5)。1号が操るケンダマジック,2号のシビレステッキの威力もCGならではの描写だし,ピラミッドの爆発,富士山やNYのブルックリン橋を手品のごとく消してみせる(写真6)など,質・量ともに充実していた。VFX主担当は『スキヤキ…』同様OLM Digitalだが,エンドロールには東映アニメーションほか約20社の名前があった。  
 
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写真4 実物大ヤッターワンは5.5m

   
 
 
 
 
 
 

写真5 ドロンボー一味のご自慢メカ:(上)ダイドコロン,(中)バージンローダー,(下)イカタゴサク

   
 
 

写真6 手品のように橋を消してしまうお遊びも

   
 随所のギャグに往時のファンが沸く 
   今回のお相手は,「ヤッターマン」の熱狂的ファンで完成披露試写会に帯同した36歳の男性S氏である。  
 
記録を調べると,原作アニメは1977年1月から79年1月末までの2年強放映されていますね。
当時は幼稚園児で小学校に入る前までですね。確か土曜日の夜6時半からで,毎週楽しみに観ていました。
私は海外留学から帰国して,長女が生まれた頃で,アニメは全く観ていませんね。映画なら『スター・ウォーズ』,TVではピンク・レディーの全盛時代でした。
毎週どんなメカが出て来るかが楽しみだったし,「ポチッとな」や「ブタもおだてりゃ木に登る」が,当時の流行語になっていました。
その「ブタもおだてりゃ…」は聞いたことがあります。今回はCG製のオダテブタ(写真7)が登場していましたが,残念ながら出番は少なかったですね。
前半は原作に近い描き方で,随所に出て来る決めセリフが嬉しかったです。いつもは3体のファンファーレメカが,CGで多数出て来た時には会場が沸いていました。歌も懐かしかったですよ。
当時のファンには受けていましたが,私が聴いてもかなり古くさく感じましたね(笑)。
後半は予想外でしたが,楽しいギャグも多くて,映画として十分楽しめました。満足です。
予想とはどう違ったのですか?
もっと下らないドタバタを想像していました。
クライマックスへの盛り上げは,ハリウッド流でしっかり作ってありましたね。ドロンボー一味のアジトはビジュアル的にもなかなかのレベルだし,ブリメカとトビウオメカの戦いなどは迫力がありました。
この映画のCGのレベルはどうなのですか?
少し「ハリーポッター」シリーズを思い出しました。数年遅れですが,日本のVFX界もその水準に達しています。この映画は,監督の思い入れ通りに,圧倒的に原作のファンが対象です。でも,邦画としては十分水準以上で,初めての観客も三池ワールドを楽しめます。
 
   
 
 
 
写真7 人気者オダテブタの出番が少ないのが残念
(C) 2008 タツノコプロ / ヤッターマン製作委員会
 
   
  (画像は,O plus E誌掲載分から削除・追加しています)  
   
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