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O plus E誌 2006年11月号掲載
 
 
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スネーク・フライト』
(ニューライン・シネマ /ムービーアイ配給)
       
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [10月21日より有楽座ほか全国東宝洋画系にて公開中]   2006年9月12日 シネマート銀座試写室(東京)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  B級パニック映画らしい面白さと躍動感が満喫できる  
 

 そう期待していなかった作品が意外に面白く,拾い物だった時,思わず他人にも勧めたくなる。B級作品で痛快な作品なら尚更だ。この映画は,まさにその類いである。米国公開は夏映画のピークを過ぎた8月18日で,既に閑散期とはいえ,公開週に全米No.1に輝いている。
 とはいえ,「あの『ロード・オブ・ザ・リング』 シリーズを手がけたニューライン・シネマが本年度最大の製作費をかけた」と宣伝するのは,ちょっと誇大広告だ。製作費は$6,000〜7,000万程度で,ハリウッド作品のごく平均的な数値かそれ以下である。準メジャーでB級中心のニューライン・シネマならそんなものだが,まるで『ロード…』並みと思わせるのはやり過ぎだ。そんなに大作ぶらなくても,十分この面白さは口コミで伝わって行くはずなのだが。
 原題は『Snakes on a Plane』で,犯罪組織が放った毒ヘビ数千匹が航空機内で暴れまくって機内は大混乱というから,数百匹の巨大クモが登場する『スパイダー パニック!(02年12月号) 』のヘビ版である。巨大怪獣化はしていないが,数は圧倒的に多く,その猛毒で密室の機内を襲うのだからパニック度はなかなかのものだ。機長も副操縦士も死んでしまって誰が操縦するんだという設定は,飛行機パニックの名作『エアポート73』も思い出させてくれる。
 監督は『デッドコースター』(03年7月号)『セルラー』(04)のデイヴィッド・エリス。スタント・コーディネーター出身でサスペンス・アクション得意のこの監督なら ぴったりだ。主演は『S.W.A.T.』(03)『コーチ・カーター』(05)のサミュエル・L・ジャクソンで,重要参考人を護送するFBI捜査官を演じる。B級パニック映画には無名俳優ばかりというのが定番だが,この大スター1人が加わっただけで,作品そのものが引き締まっている。ヒロインは,TVシリーズ『ER 緊急救命室』のハサウェイ看護士役で何度もエミー賞を受賞したジュリアナ・マーグリーズ。若い美人のヒロインでなく,このベテラン女優を引退間際のスチュワーデス役に配したのも正解だ。いかにも欧米のエアラインにいるオバサン・スッチーである。後はどうでもいい俳優ばかりだ。
 偶然犯罪組織の殺人現場を目撃してしまった男子高校生が重要参考人となり,FBI捜査官に保護されて飛行機で移送される。それを知った組織のボスは,興奮剤をたっぷりと嗅がせた多数の毒ヘビを刺客として機内に送り込む。誰も予想しなかった無数の闖入者の毒牙にかかり,阿鼻叫喚の場と化した機内で,機長も副操縦士も落命し……。というのが物語の骨子だ。そんな設定など適当でいい。要は珍しい毒ヘビのオンパレード+飛行機パニックであり,躍動感溢れる超B級作品である。
 傲慢この上ない会社重役,子犬を連れたセクシー・ギャル,人気ラッパーとデブの付け人2人,乳児を抱えた若い母親等々,人物描写もまずまずだ。こうした乗客たちが,毒ヘビに襲われる様は結構強烈だ。喉に食いつくのは当然として,下半身の大事な一物を襲うのは笑わせるし,大蛇が人間を頭から丸飲みするシーンまで用意されている。サービス精神も満点だ。
 20種類の毒ヘビはといえば,ゴム製もあればCG製もある(写真2)。手で掴んでいるのはゴム製,噛みついているのは当然CG製だろう。アニマトロニクス製はなかったようだが,結構本物のヘビも登場させたというから驚く(写真3)。撮影中,俳優たちも気が気でなかったことだろう。
 CG/VFXの担当は,Hybride Technologies,Cafe FX,Pacific Titleといった中級スタジオだが,もはや最近のCG技術をもってすれば,ヘビの描写はそう難しい課題ではない。映像表現としては,むしろ光の使い方が結構上手いなと感じた一作であった。        

 
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写真1 CG製とゴム製の両方で乗客に迫る   写真2 このビルマニシキヘビの「キティ」は本物
 
     
   
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