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O plus E誌 2006年6月号掲載
 
 
ステイ』
(20世紀フォックス映画)
      (C)2005 Twentieth Century Fox  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [6月3日より恵比寿ガーデンシネマ他にて全国順次公開予定]   2006年4月27日 東映試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  モダンアートの絵画を観ているような不思議な映画  
 

 似た映画があるようで,どれにも似ていない不思議な映画だ。「あなたの感覚を試す感動のイリュージョン・スリラー」「この映画の謎は,頭で考えても決して解けない」というのがキャッチコピーだ。なるほどその通りだとは思うが,最後にあーそうだったのかと納得できるようでいて,実はできない。では不満が残るのかと言えば,そうでもない。深く考えさせられる映画のようでいて,実はビジュアル・センスに訴えているだけだ。だから,不思議な映画なのだ。
 時代は現代,舞台はニューヨーク。常にブルックリン橋が窓の外に見える地区を中心に物語は展開する。若き精神科医サム・フォスター(ユアン・マクレガー)は,21歳の誕生日の夜に自殺すると予告する患者ヘンリー・レサム(ライアン・コズリング)を救おうと,彼の謎を必死に追い求める。サムには,かつて自分の患者であった恋人ライラ(ナオミ・ワッツ)がいるが,やがて未来予知能力があるヘンリーはサムとライラの潜在意識に入り込んで来る。彼らは共に不思議な既視体験に何度も襲われ,説明できない奇妙な出来事に巻き込まれる。残された時間は3日間,果たしてサムはヘンリーを救えるのか,ヘンリーとは何者なのか……。
 この脚本を書いたのは,『25時』(04)の原作&脚本で注目を集めたデイヴィッド・ベニオフ。なるほど,それならこのストーリーも不思議な感覚も理解できる。監督は,ハル・ベリーにアカデミー賞主演女優賞をもたらした『チョコレート』(04),ジョニー・デップ主演で「ピーター・パン」執筆の背景を描く『ネバーランド』(05年1月号)などで知られるマーク・フォースター。ドラマ性の高い作品が得意なこの監督には意外だと感じるし,繊細でビジュアルな表現は似合っているとも思える。
 無口で長身で神秘性すら感じる美術学校の学生ヘンリー役に,『きみに読む物語』(04)のライアン・ゴズリングを起用したのは正解だ(写真1)。『スター・ウォーズ エピソード1〜3』で,今や若手の大スターとなったユアン・マクレガーの相手役に,『ザ・リング』(02)『キング・コング』(06年1月号)のナオミ・ワッツを選んだのもうなずける。彼女の現代的な美貌は,ニューヨーカーに似合っているし,少なくとも『アイランド』(05年8月号)のユマ・サーマンよりもカップルとして相応しい。

 
     
 
 
 
写真1 すべての出来事はこの橋の上の事故から…
(C)2005 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.
 
     
 

 さてVFXだが,Frantic Films,R!OT等,中小スタジオ約10社が参加し,Pixel Liberation Front社がPreVizを担当しているが,あまり技術的に目立った点はない。突然の雹,空高く舞い上がる風船など,すぐCGだと分かるシーンもあるが,他はずっと目立たない。窓の外のブルックリン橋はほぼすべてデジタル合成だろう。シーンの変わり目を再三次なる背景で繋いでいるのもデジタル処理であれば,頻繁に登場する二重写しもそうだろう。何やらアート作品でのコラージュの技法を思い出す。逆光を使ったシーンが多いのも特徴的だ。
 クライマックスは,エンディングの橋の上で,ビジュアル的にもストーリー的にも,すべてこの場面にかかっている。これ以上は語るわけに行かないのが,この種の映画の制約だ。

 
          
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