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O plus E誌 2006年6月号掲載
 
 
カサノバ』
(タッチストーン・ピクチャーズ
/ブエナビスタ配給)
      (C)2005 Touchstone Pictures  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [6月17日より銀座テアトルシネマ他にて全国順次公開予定]   2006年4月18日 ヘラルド試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  デジタル技術で18世紀のヴェネチアを美しく再現  
 

 大作が目白押しの夏シーズン開幕だが,それが間に合わず,今月はやや地味な2作品でスタートだ。
 カサノバと聞けば,名うてのプレイボーイで,「カサノバ回想録」で知られる華麗な女性遍歴の持ち主であることくらいは,平均的日本人でも知っているだろう。ところが,いつの時代のどの国の人物かと問われるとかなり怪しい。ドンファンとの区別もついていないかと思う。そこで,電子百科事典で調べてみたところ,「カサノバ」は18世紀中期のヴェネチア共和国の術策家・作家で,本名はジャコモ・カサノバ。一方の「ドンファン」は17世紀スペインの伝説上の人物で,本名はドン・ファン・テノーリオだそうだ。
 映画史の中での「カサノバ」は,ボブ・ホープ主演の『豪傑カサノヴァ』(54),フェデリコ・フェリーニ監督,ドナルド・サザーランド主演の『カサノバ』(76),アラン・ドロン主演の『カサノヴァ最後の恋』(92)など数作が作られている。一方の「ドンファン」も何度か映画化されているが,ブリジット・バルドー主演の『ドンファンがもし女だったら』(92),最近では現代を舞台にしたジョニー・デップ主演の『ドンファン』(95)などこちらはちょっと変則ものが多い。
 さて,まっとうに18世紀を舞台にヴェネチアに本格ロケを展開して作られた本作品は,『サイダーハウス・ルール』(99)『ショコラ』(00)のラッセ・ハルストレム監督がメガホンをとる。主演は,何と今注目のヒース・レジャーだ。『ブロークバック・マウンテン』(05)で,ジェイク・ギレンホールを相手に迫真の同性愛者を演じて話題を呼んだばかりだというのに,今度は稀代の色事師役とは,何たる皮肉なキャスティングだ。
 ヒロインのフランチェスカ役には,オーディションで新人のシエナ・ミラーが選ばれた。助演陣は,カサノバを捕えようとする審問官ブッチ司教に,『キングダム・オブ・ヘブン』(05年6月号)の名優ジェレミー・アイアンズ,フランチェスカの母親アンドレアに『ショコラ』のレナ・オリンが配されている。この母娘がよく似ている上に,母親のアンドレアが美しく,一瞬母か娘かどちらだったかと戸惑う。いくらハルストレム夫人とはいえ,ヒロインを食うほど魅力的に描くのは「監督さん,そりゃ反則だよ」と思ったが,そうではなかった。後半この美貌が生きてくる設定になっているから,憎い演出だ。
 もう1つの主役は,18世紀のヴェネチアだ。華麗な水の都の風景も仮面舞踏会の豪華な衣裳も堪能できる。では,重厚なラブロマンスかといえば,これが全編コメディタッチの軽快な映画だ。騒々しくはないが,もう少し威厳と内面に迫る描写であっても良かったかと思う。
 ヴェネチアへの完全ロケで,かつての政治・経済の中心地であったサンマルコ広場を中心に描かれる(写真1)。そのままでも18世紀以前を感じさせる歴史的景観だが,やはり部分的にデジタル処理で修復する必要はあったようだ。港の景観,停泊する往時の船がCGなのは当然だが,何でこんなお決まりのソフトフォーカスで描くのだろう。最近の技術なら色調調整も容易で,こんな誤魔化しは不要なはずだと思う。
 一方,秀逸なのはカサノバとフランチェスカの乗る気球のシーンだ。人物が乗る籠の部分は本物,気球部分はCG,眼下に見える夜の街は航空写真をデジタル加工して合成したものだろう。カメラを引いた視点でのCG製のヴェネチアの夜景も花火もとても美しいが,スチル写真が提供されないのが残念だ。この映画の宣伝には,このシーンが最高だと思うのだが……。

 
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写真1 ヴェネチアに大規模なロケを敢行。
カーニバルも処刑場も,このサンマルコ広場が中心。
(C)2005 Touchstone Pictures. All Rights Reserved.
 
 


 
   
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