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O plus E誌 2006年5月号掲載
 
 
『RENT/レント
(レボリューション・スタジオ
/ブエナビスタ配給)
      (C)2005 Sony Pictures Entertainment, Inc.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語    
  [4月29日よりBunkamuraル・シネマ他にて公開予定]   2006年3月23日 ヘラルド試写室(大阪)
 
         
   
 
プロデューサーズ』

(コロンビア映画
&ユニバーサル映画
/SPE配給)

       
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語    
  [4月8日より日劇1ほか全国東宝洋画系にて公開中]   2006年3月31日 IMPホール(大阪)
 
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  ブロードウェイ・ヒット作の嬉しい映画化2本  
 

 数年前の『シカゴ』(03年4月号)のヒットに触発されてか,ミュージカルのヒット作の映画化熱が再燃してきた。ミュージカル好きの筆者にとっては嬉しいことだ。最近の劇場は音響効果が良いことも一因なのだろう。レイ・チャールズの『Ray/レイ』(04)に負けじと,ボビー・ダーリンの『ビヨンド the シー』(04),ジョニー・キャッシュの『ウォーク・ザ・ライン』(05)など,ミュージシャンの伝記映画が相次いでいるのも同じ原因かと思う。どの主演俳優も結構歌がうまい。
 ところが,『オペラ座の怪人』(05年2月号)のネットでの映画評書込み記事にはたまげた。「突然歌い出すのに驚いた。歌ばかりでストーリーが乏しい」という若い映画ファンの声だった。こういう連中には,映画といえばアクションかSFであって,ミュージカル映画の楽しさどころか,存在すら知らなかったようだ。
 さて,ブロードウェイのヒット作を映画化したこの2本である。先に舞台に登場したのは1996年2月初演の『RENT/レント』で,ジョナサン・ラーソンが生み出した革新的ミュージカルだ。彼が初演の前夜に大動脈瘤で急逝したことも伝説が拡大する要因となった。後にピューリッツアー賞(ドラマ部門)やトニー賞4部門を受賞している。主な登場人物は8人(男4人,女4人)だが,職業はロック・ミュージシャン,ドキュメンタリー映像作家,哲学教授,女性弁護士等であって,男女それぞれの同性愛者1組がいる。ちょっと一般社会とは価値観の異なるNYのボヘミアンならでは世界だ。
 監督は『ホーム・アローン』(90)『ハリーポッターと賢者の石』(01)のクリス・コロンバス。ファミリー映画得意の監督が,この前衛的作品の製作・監督に名乗りを上げたというのがミソだ。俳優同様,監督もイメージチェンジしたいのだろうか。また,製作者の中にロバート・デ・ニーロの名前があるのも印象的だ。
 NYのイーストビレッジが舞台で1989年12月24日からの1年間(56万5600分)が描かれている。全27曲の歌曲の中では,最初の「Seasons Of Love」がベストで,スポットライトを浴びた冒頭シーン(写真1)にはしびれる。全編いかにもNY的なタッチで,玄人受けする映画だ。どの曲の歌詞にも重要なメッセージが込められているので,余程英語に堪能でない限りブロードウェイの舞台を観ても理解できないだろう。NYに行った気分で歌も内容も楽しめるので,映画はありがたい。

   
 
 
 
写真1 このオープニングにはしびれる
(C)2005 Sony Pictures Entertainment, Inc.
 
   
 

 一方の『プロデューサーズ』は,コメディ・ライターのメル・ブルックスが脚本・監督を務めた同名映画(68)が真っ先にあり,彼自身がそのミュージカル版を製作・脚本・作詞作曲して2001年に初演し,同年トニー賞を12部門で受賞する記録を打ち立てている。そのミュージカルの忠実な映画化版がこの作品という複雑な背景だ。監督はミュージカル版の演出・振付を担当したスーザン・ストローマンで,主演のマックスとレオの2人にも舞台版の俳優ネイサン・レインとマシュー・ブロデリックを配している。まさに舞台での栄光をそのままスクリーンに持ち込もうとしているのが分かる。
 時代は1959年,舞台はこちらもニューヨークで,ミュージカル自体が題材だ。意図的に失敗作『春の日のヒトラー』を作り,投資家から集めた200万ドル持ち逃げしようとする演出家とその相棒が,思わぬ大ヒットで窮地に陥るという喜劇である。監督のストローマンが,ジーン・ケリーの名作『雨に唄えば』(52)調の映画を目指したと語るように,舞台で磨いたセリフと歌を再現しながら,古典的ミュージカル映画の楽しさを演出しいてる。
 全23曲を予断なく聴いてみたが,マックスが獄中で歌う「Betrayed(裏切られて)」が最高だった。もともと最も評判の良い曲らしい。ネイサン・レインというのは,確かに素晴らしいミュージカル・スターだ。
 さて,本欄の主題VFXはというと,実はあまり語ることがない。『プロデューサーズ』は比較のため取り上げただけで,『RENT/レント』にはILMのクリエータ50人が参加している。スタジオ内撮影の背景や窓の外にはそこそこデジタル合成が使われていたが,特筆するほどのものではない。むしろ照明やカメラワークに見どころが多かった。10組の男女がタンゴを踊るシーン(写真2)は,建物外からの大規模照明,クレーンカメラによる撮影で,舞台ではあり得ない映画ならでは迫力を感じさせる。ステディカムを多用して撮影した地下鉄内のシーンも,映画ならではの映像だった。
 2作品とも堪能したが,毛色が違うので甲乙はつけ難い。個人的には,楽しさを重視して『プロデューサーズ』に1票を投じておこう。

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写真2 照明とカメラワークも見どころの1つ
(C)2005 Sony Pictures Entertainment, Inc.
 
   
   
   
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