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O plus E誌 2005年2月号掲載
 
 
『オペラ座の怪人』
(ワーナー・ブラザース映画
/ギャガ-ヒューマックス共同配給)
       
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]   2004年11月19日 厚生年金芸術ホール[完成披露試写会(大阪)]  
  [1月29日より日劇3ほか全国東宝洋画系にて公開予定]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  大ヒット・ミュージカルは映画化でも成功  
   英国が生んだ天才音楽家アンドリュー・ロイド=ウェバー卿の数々のミュージカルの中でも,飛び切りの代表作だ。ロンドンやニューヨークは言うまでもなく,日本でも劇団四季公演で10年以上ロングランされていたこともよくご存知だろう。折しも,暮れからホンダ・レジェンドのテレビCMにこの主題歌が流れているが,一度聞いたら忘れられない名曲だ。
 原作は本格派ミステリーの古典『黄色い部屋の謎』で知られるガストン・ルルーが1910年に著した小説である。映画化は実に4度目だというが,ウェバー版ミュージカルの映画化はこれが最初だ。舞台の方もウェバー版の前にケン・ヒル版があるが,今や『オペラ座の怪人』と言えば,アンドリュー・ロイド=ウェバーの代名詞になっている。
 製作はロイド=ウェバー自身で,監督は『評決のとき』(96)『フォーン・ブース』(03)のジョエル・シュマッカー。1986年初演の数年後にはこの監督での映画化の構想が上がっていたが,歌姫クリスティーナを演じる当時のウェバー夫人,サラ・ブライトマンとの離婚問題が生じたため立ち消えになってしまったという因縁作だ。
 注目は,ブライトマンに替わるクリスティーナ役を誰が演じるかだ。選ばれたのは『デイ・アフター・トゥモロー』(04年7月号)で主人公の恋人ローラを演じた18歳のエミー・ロッサムだった。ただの可憐な女の子かと思ったら,7歳からメトロポリタン・オペラの舞台に立っていたという立派な音楽歴だ。音域はサラ・ブライトマンよりやや狭いが,可憐さでは数段上だ。堂々と歌い上げる見事なクリスティーナぶりと言える。
 彼女が想いを寄せるラウル子爵には『アラモ』(04年10月号)のトラヴィス中佐で映画デビューしたパトリック・ウィルソン。彼はもともとミュージカル出身で,はまり役だ。そして,オペラ座の地下に住むクリスティーナの音楽の師「怪人(ファントム)」には,『トゥームレイダー2』(03年10月号)『タイムライン』(04年1月号)のジェラルド・バトラーがオーディションで選ばれた。吹き替えなして歌う主演3人の中では少し声量が落ちるが,ドラキュラ役も好演しただけあって,怪人の雰囲気を見事に醸し出している。
 物語も曲も基本的にはミュージカルに忠実だ。プリマドンナに抜擢されたクリティーナと幼なじみのラウルは愛し合うようになるが,それに嫉妬したファントムが起こす事件と三角関係の愛憎物語は,よく知られているので,あまり語る必要はないだろう。男性観客の大半は,ラウルよりもクリスティーナを自分のもとにつなぎ止めようするファントムに感情移入するに違いない。不謹慎ながら,少女監禁事件の佐藤某はこんな心境だったかと想像してしまった。そして,自ら育てたサラ・ブライトマンと別れたロイド=ウェバーの想いも,鬼気迫るファントムのセリフと歌に乗り移っているかのように感じた。
 映画化に当たっては,ファントムの少年時代の秘密やラウルとの決闘シーン(写真1)が加えられ,それに合わせた新曲も盛り込まれている。ミュージカル舞台の装飾もかなりのスペクタルだが,オペラ座の内装・屋上・地下水路(写真2)や墓地の光景などは,映画ならでは造形美を見せてくれる。しかし,映像表現の最大の見せ場は,物語の冒頭で1917年の朽ち果てたパリ・オペラ座が1870年代の全盛期の豪華絢爛な姿にタイムスリップするシーンだろう。モノクロからカラーに,CG映像の威力を加えてオペラ座が変貌する視覚効果は,ここで流れる「序曲」のハイプオルガンの大音響と同期して観客の度肝を抜く。VFXの担当は,Asylum Visual Effects社とCinesite社だ。その他のVFXは,19世紀に見合った建物を少し付け加えるのに使われた程度で,これは特筆するレベルではない。
   
写真1 怪人とラウルの雪の中での決闘は,映画だけのボーナス・シーン
 
写真2 地下水路のシーンは幻想的な魅力
 
     
   もう1つの見せ場は,豪華シャンデリア(写真3)をファントムが満員の会場に向かって落下させるシーンだ。高さ5m,幅4.5m,重量2.3トンで,約2万個のスワロフスキー製クリスタルが使われているというから,その落下をどう描くのかを楽しみにしていたのが,まともに落ちた場面を映さずにお茶を濁していた。約1億5千万円相当を壊すわけに行かないなら,このシーンこそCG技術の見せ場ではないか。輝くクリスタルはレイトレーシング法の得意とするところなのだから,それが割れて飛び散る様をCGならではの視点で描いて欲しかった。やはり,ロイド=ウェバーは音楽面だけの天才ということか。本欄としては,この点を減点しておこう。
   
写真3 これが1億5千万円の豪華シャンデリア
 
     
  音楽賞には強力ライバルあり  
   もちろん音楽的には素晴らしく,国内販売を待ち切れず,輸入販売でサントラ盤を取り寄せた。オリジナルキャスト盤,劇団四季盤と比べても全く遜色ない。この魔力に引き寄せられ,新年の1月12日から再開する劇団四季公演(於,東京・汐留)のチケットも買ってしまった。
 では,アカデミー賞の音楽部門はこれで決まりかと言えば,強力なライバルがいる。盲目のソウル・シンガー,レイ・チャールズの半生を描いた『Ray/レイ』(UIP配給)だ。VFXとは無縁のため改めて本欄では取り上げないので,ここで少し紹介しておこう。
 監督・脚本は『愛と青春の旅立ち』(82)のテイラー・ハックフォード。若き日のレイ・チャールズを演じるのは,『コラテラル』(04年11月号)の好演が光ったジェイミー・フォックスだ。こちらは歌の部分はレイ・チャールズ自身の吹き替えだが,歌う姿やセリフや細かな仕草も,J・フォックスは背筋が冷たくなるほど見事な演技でそっくりに演じる。ピアノの指使いも,歩き方も,歯を剥く表情も.レイ・チャールズそのものだ!
 この映画の完成を前にレイ・チャールズは鬼籍に入ってしまったが,生きていたら映像は見えなくても,セリフからもう1人の自分がそこにいると感じたに違いない。 J・フォックスの『コラテラル』の演技をオスカー候補と述べたが,慎んで訂正しておこう。この映画での演技の方が数段上であることは論を待たない。
 レイの歌の詩は,彼の波乱万丈の人生を物語っていて,これが見事に物語とマッチしている。素直に考えれば,こちらも音楽部門でのオスカーの有力候補だろう。
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