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O plus E誌 2006年5月号掲載
 
 
小さき勇者たち 〜GAMERA〜
(角川ヘラルド映画 /松竹配給)
 
         
  オフィシャルサイト[日本語]   (c)2006「小さき勇者たち〜GAMERA〜」製作委員会
 
  [4月29日より丸の内ピカデリー2他全国松竹系にて公開予定]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  一部のマニアには懐かしいだろうが,それでいいのか?  
 

 「ガメラ」と言えば,東宝の「ゴジラ」に対抗して旧大映が創り出した特撮映画の主役で,亀が突然変異した怪獣である。1965年から1980年にかけて8作品が公開されている。実は,筆者は同時代にこのシリーズを1作も観ていない。既に斜陽化が始まった邦画には全く興味が湧かず,加えて子供だましの怪獣映画を劇場で観る気がしなかった。TVでのウルトラマン・シリーズは結構面白いなと思ったから,劇場映画に求める水準がもっと高かったからだと思う。
 一方,1995年から1999年に製作された「平成ガメラ」シリーズ3作品はビデオで何度も熟視した。樋口真嗣特技監督の腕のほどをじっくり分析したかったからである。このシリーズはドラマも特撮も水準以上で,十分楽しめる作品群だった。これでぐっとファンも増えた。
 その「ガメラ」が角川ヘラルド映画製作,松竹配給で再々登場するという。怪獣映画では,今度はどこを壊すのかがファンの愉しみの1つだが,昨年愛知万博で湧いた名古屋駅前の(最近では)大掛かりなミニチュア・セットが作られたという。それを派手に壊したという出来映えやVFXが加わった威力を是非観たくなった。
 監督は田崎竜太,特撮監督が金子功だが,脚本に龍居由佳里,音楽に上野洋子と女性の起用が目立つ。そのためか,ガメラの顔も優しげで,怪獣ものというよりファンタジー色が強まっている。『小さき勇者たち』の主タイトルが示す通り,主人公の透少年(富岡涼)はじめ,子供たちの存在が大きなウエイトを占める。
 子供たちと特撮がウリとなると,山崎貴監督の『ジュブナイル』(00)を思い出すが,とてもそのような佳作には仕上がっていなかった。怪獣がCG製でなく,懐かしい着ぐるみ(写真1)であり,頭部のアップの場面がアニマトロニクスであるのはいいとしても,その仕上げの質感が甘い。セールスポイントであるはずのミニチュア・セットの質も,『Vフォー・ヴァンデッタ』のロンドン市内とは雲泥の差だ。回転して飛び去るガメラなどにはCGも使われているが,そのレベルもかなり低い。最近のCGクリエータの腕をもってすれば,はるかに上質のSFX/VFXにできたはずだ。

 
     
 
 
 
写真1お馴染みのこのポーズは勿論着ぐるみ
(c)2006「小さき勇者たち〜GAMERA〜」製作委員会
 
     
 

 脚本や演出はもっとお粗末だ。この旧態依然とした定番怪獣映画を好むのは,一部のマニアくらいだろう。小学校低学年まではこのレベルでも満足するかと思うが,同伴者といえど,大人は入場料払って観る価値を疑うはずだ。いくら低予算であり連休の家族連れが目当てとはいえ,21世紀にもなって日本映画界はこんな映画を作っていていいのか。映画人の魂を疑いたくなる。 

 
 
          
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