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O plus E誌 2006年3月号掲載
 
 
イーオン・フラックス』
(パラマウント映画
/ギャガ配給)
      (C)2005 Paramount Pictures  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [3月18日より日比谷スカラ座他全国東宝洋画系にて公開予定]   2006年2月2日 ナビオTOHOプレックス[完成披露試写会(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  美しいC・セロンが蘇ったのは,素直に嬉しい!  
 

 シャーリーズ・セロンといえば,『マイティ・ジョー』(98)『サイダーハウス・ルール』(99)『スウィート・ノベンバー』(01)などで清楚な役柄を演じ,その都会的な美貌に注目していた女優である。ところが,10数キロ増量して連続殺人犯の娼婦役を演じた『モンスター』(03)には,正直驚いた。その結果,見事にアカデミー賞主演女優賞に輝いたのだが,いかに女優とはいえ,ここまで変身するものかと…。それに続く公開中の『スタンドアップ』(05)でも男性社会の逆境と戦うシングル・マザーを演じ,再びアカデミー賞にノミネートされている。
 もはや演技派一本でやって行くつもりかと思いきや,次の出演作にはMTVの短編アニメを映画化したSFアクションを選び,革命戦士のスーパーヒロイン「イーオン・フラックス」を演じるという。しかも,時代は何と400年後の未来だ。セクシーで刺激的なシャーリーは歓迎だが,何もそこまで変身しなくてもと再度驚く。
 メガホンを取ったのは,インデペント系の女性監督カリン・クサマ。女性監督はアクションの演出が今一つというのが普通だが,この映画ではそれは微塵も感じられなかった。共演は,『トリプルX』(02)『タイムライン』(03)のマートン・ソーカス,『ファーゴ』(96)『あの頃ペニー・レインと』(00)のフランシス・マクドーマンドと,かなり渋いところだ。
 2011年にウィルスにより人類の99%が死滅したが,生き残った500万人が人工都市ブレーニャで暮らしていた。西暦2415年,救世主の子孫であるトレバー8世と弟オーレンが,この都市を支配していた。誤って妹ニーナを抹殺されたことから,反政府組織モニカンの戦士イーオンは,指令を受けてトレバー暗殺に向かう。ところが,トレバーに出会ったイーオンは,なぜか懐かしい想いに駆られ彼と惹かれ合う…。
 見どころは,元バレエ・ダンサーだったというC・セロンが特訓を受けて披露する超人アクションと未来都市の描写だ。一部はCGスタントによる差し替えもあるのだろうが,まるで忍者のような身のこなしは素晴らしい。黒,白,紫のボディコン・スーツに身を包んだ彼女は,なるほど刺激的で,これがあの同性愛者の娼婦と同一人物かと目を疑う。この復活は,素直に喜ばしい。
 一方,20年後,50年後の近未来でなく,400年後の世界となるとデザインする方も大変だったろう。観る側も,その妥当性を評価しようがないが,少なくともビジュアル・デザインとしては合格点だ(写真 1)。簾格子のような大型ディスプレイ等,未来の什器,電子機器のデザインにも力が入っている。『マイノリティ・リポート』(02年11月号)をかなり意識していると感じられる。

 
     
 
 
 
写真1 未来で蘇った美しいシャーリーズ・セロン
TM&(C) DREAMWORKS LLC. /Universal Stuidos
 
     
 

 VFXの主担当はDigital Domainだが,最近技術向上が目覚ましく,本作品も卒なくこなしている。さらにThe Orphanage,Hybride Technologies, Illusion Arts, Cinesite, CIS Hollywood, Pacific Title Imaging, BUF Campaign等の名前がずらりと並ぶと,相当なVFX多用作であることが分かる。
 映像もこの未来都市の秘密のプロットも悪くない。それでいて,この映画は面白いかと問われれば,肯定的な返事はできない。騒々しくかつ粗雑で,映像表現力の向上の前に脚本も演出も負けている。この映画もCGのパワーを使い方を誤った例の1つで,それが残念だ。

 
          
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