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O plus E誌 2004年1月号掲載
 
 
『タイムライン』
(パラマウント映画/ギャガ-ヒューマックス配給)
 
       
  オフィシャルサイト[日本語][英語]   2003年11月25日 ナビオTOHOプレックス(完成披露試写会)  
  [1月17日より全国東宝洋画系にて公開予定]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  演出は巧みだが,タイムトラベルの面白さが今一つ  
   タイトルからすぐわかるように,タイムマシンもののSF映画で,原作は『ジュラシック・パーク』『ER緊急救命室』のベストセラー作家マイケル・クライトンが1999年に発表した小説というから,当然のように映画化を前提にした作品だ。SFXスーパバイザはニール・コーボルト,VFX担当はILMというので,本映画時評としてはかなり期待して試写会に臨んだ。
 監督は,『オーメン』(76)『スーパーマン』(78)『リーサル・ウェポン』(87)などを手がけた大ベテランのリチャード・ドナー。もう70歳をとうに超えているはずだ。一方,主演は『ワイルド・スピード』(01)でブレイクしたポール・ウォーカーだが,相手役は『A.I.』(01)『ウィンドトーカーズ』(02)のフランシス・オコナー,助演陣も『サラマンダー』(02)のジェラルド・バトラー以下,少し地味な顔触れが並んでいる。
 物語は,フランスの修道院遺跡で14世紀の地層から現代の製品としか思えない眼鏡と助けを求めるメッセージが発掘されたことから始まる。巨大企業ITC社が最新量子テクノロジーを駆使して極秘裏に開発していた時空間転送装置(3Dファックスマシン)を完成させていたが,予想外の事故で,遺跡発掘チームのジョンストン教授(ビリー・コノリー)が,中世フランス,英仏百年戦争の真っ只中で消息を経ってしまった。息子のクリス(P・ウォーカー)とチームのメンバーも教授救出のため,14世紀へと旅立つ。たどり着いた先は英仏両軍が血で血を洗う戦乱の地。その争いに巻き込まれて転送装置を破壊され,退路を断たれたクリスらは,タイムリミットまでに21世紀に帰還できるのか……。というのが,このタイムトラベル・アドベンチャーの要旨だ。
 量子コンピュータが遺伝子やたんぱく質の複雑な働きを分析し,分子レベルで人体を複写して転送するというアイデアや,複写を繰り返すと臓器・血管・骨格が断層のようにずれた複製が生じてしまうという設定は面白い。現代ネタを巧みに取り入れるM・クライトンらしい構想だ。問題は,タイムトラベルものとしてどれだけ話を面白くできるかだ。
 残念ながら,その点に関して合格点はつけられない。話は14世紀に飛んで行ったまま,その時代での活劇と脱出行に終始する。クライマックスに持って行く映画作りは,さすがリチャード・ドナーと思わせるものがあるが,監督の腕だけでは脚本の弱さは補えない。タイム・パラドックスの面白さもなければ,現代人の文明の利器や兵器が中世で大活躍する話もない。危機からの脱出行とサバイバルなら,『ミクロの決死圏』(66)も『ポセイドン・アドベンチャー』(72)も『ジュラシック・パーク』(96)も同工異曲であるが,そうした過去の話題作ような斬新な映像やスペクタクル場面もない。
 タイムマシンに関して言えば,ガイ・ピアース主演の『タイムマシン』(2002年8月号)が19世紀の馬車をイメージさせる古風なデザインだったのに対して,こちらは21世紀らしく鏡面のドアを使ったユニークなデザインである(写真1)。これは合格点をクリアだ。ただし,時空間移動のスイッチや半径12mの意味などは,M・クライトンなら,もう少し屁理屈をつけてでも,もっともらしい説明が欲しかったところだ。
 VFXはILMが1社で担当というので,かなりの分量を想像したのだが,その点でも見せ場はなかった。視覚効果らしいシーンは矢で放った火の玉や爆発くらいだろうか。カナダ・ロケを敢行し,中世の城,ラ・ロック・キャッスルもドナー監督の要望によりフルスケールで作ったという(写真2左)。これではVFXの出番は少ない。今月は3本ともCGでなく,実物を使っていることを売りにしている。それでも,さすがに写真2右のような広角の映像はデジタル合成だと思われる。ILMの作業ゆえに,明らかにCGと分かるシーンは少なく,合成が巧みで気がつかなかっただけかも知れない。エンドロールには,3Dマッチムーバーが10数人の名前があったから,他の建物の挿入や消去に精を出していたのだろう。
 さて,この映画には2組のカップルが登場する。中世でクレア姫(アンナ・フリエル)と恋に落ちるマレク助教授役のジェラルド・バトラーは,『トゥームレイダー2』でA・ジョリーのふにゃけた相手役の時よりもずっと存在感があって,好演だった。最後にクイズを出そう。6.5世紀もの年齢差のある2人の恋の行方は,(1) 女性を21世紀に連れ帰る,(2) 男性が14世紀に留まる, (3) 女性を置き去りにして男性だけ帰還する,(4) 2人とも戦乱の中で落命する,のいずれだろうか? 答えは観てのお楽しみとしておこう。
     
 
写真1 タイムマシンには鏡の扉から入る
 
 
写真2 左は実物大のセットだが,右はどうみても合成だろう
 
     
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