head
title home 略歴 表彰 学協会等委員会歴 主要編著書 論文・解説 コンピュータイメージフロンティア
| INDEX | 年間ベスト5 | DVD特典映像ガイド | SFXビデオ観賞室 | SFX/VFX映画時評 |
title
 
O plus E誌 2005年6月号掲載
 
 
サハラ―死の砂漠を脱出せよ―』
(パラマウント映画/ギャガ ・コミュニケーションズ配給)
     
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [6月11日渋谷東急ほか全国松竹・東急系にて公開予定]   2005年4月26日 梅田ブルク7[完成披露試写会(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  新シリーズは,後半のスケール感が圧倒的  
 

 この映画の原作者はすぐ分かる。翻訳もののミステリーや冒険小説のシリーズは,邦題を個性的な表現で統一するのが,固定ファンを掴む1つのコツである。ディック・フランシスの競馬ミステリーは『本命』『大穴』『血統』の漢字 2文字と決まっているし,トム・クランシーの国際緊張小説は『大戦勃発』『教皇暗殺』『油田爆破』のような漢字4文字が目立つ。最も個性的なのは,クライブ・カッスラー著の"ダーク・ピット"シリーズで,『海中密輸ルートを探れ』『スターバック号を奪回せよ』『QD弾頭を回収せよ』のような命令調の長い題なので,この映画の原作がそのうちの1冊だと気づくだろう。
 かつて『タイタニック号を引き揚げろ』が早速映画化され『レイズ・ザ・タイタニック』 (80)として公開されたが,今回がそれ以来の2作目だという。前作の不出来が原作者の逆鱗に触れ,以後の映画化の許可が下りなかったらしい。しかし,脚本不足で旧作のリメイクや日本製のホラーにまで手を出すハリウッドが,全世界で1億2千万部を突破したこの人気シリーズを放っておくわけがない。スケールの大きな原作の魅力を引き出せる視覚効果技術が整ったゆえに,本格的シリーズ化を提案し,原作者カッスラーを説得することに成功したようだ。
 となると,知力と体力でジェームズ・ボンドを凌ぎ,好奇心と冒険心でインディ・ジョーンズを超えるというウリのヒーロー "ダーク・ピット"役に誰が選ばれるかが関心事だ。トム・クルーズやジョージ・クルーニーの名前も上がったが,この大役は『U-571』(00年9月号)『サラマンダー』(03年5月号)のマシュー・マコノヒーに落ち着いた。長期シリーズを考えるなら,スーパースターは不向きで,まず妥当な選択だと言える。
 相棒のアル役には,スティーブ・ザーン。『アウト・オブ・サイト』 (98)や『ユー・ガット・メール』(98)等に出ていた脇役だが,この本シリーズで一躍名前が知られることになるだろう。そして「ボンド・ガール」に対する「ピット・ガール」には,『バニラ・スカイ』のペネロペ・クルスが選ばれた。トム・クルーズとの破局が伝えられていた彼女は,この映画でマコノヒーとのラブラブ関係になったようだ。一件落着後のエンディング・ラブシーンからも,その熱愛ぶりが伝わってくる。
 監督は,これが本格デビューとなるブレック・アイズナー。ディズニー会長のマイケル・アイズナーの実子らしい。親の七光りでも,製作費 1億2千万ドルのこの大作は荷が重かったのか,前半から中盤にかけて,少しもたついている。007やインディ・ジョーンズに対抗するなら,もっと軽快なノンストップ・アクションにすべきだった。脚本も演出も原作者に気を遣って,ドラマ性を強調しようとしたのが裏目に出たのだろうか。
 それでも後半は,大スペクタクルのアクション・シーンが続き,ようやくエンジンがかかってくる。モロッコでの 12週間のロケというだけあって,広大な砂漠のシーンが素晴らしい。砂漠を走る列車,丘陵の稜線や急斜面での人物像は,どこまでが現場実演で何が合成なのか,見分けがつかない。 写真1なども多重合成の産物だが,10年前なら考えられないスケールのスペクタクルだ。 写真2は勿論グリーンバック合成だろうが,その前後で高い塔の周りを巡るカメラワークは,『ロード・オブ・ザ・リング』譲りのロングショットだ。

 
     
 

写真1 このスケール感は大規模ロケと多重合成の産物

  写真2 このぶら下がりシーンの前後も見もの  
 
 
TM and (c)2005 Fox and its related entities. All rights reserved.
 
     
   VFXの主担当はCinesite Europeで,副担当にDouble Negative,Digital IntermediateにFramstore CFCとまたまた英国勢の活躍が目立つ。敵地のソーラー発電プラントの外観には圧倒されるし,建物内部のデザインも上出来だ。クライマックスのヘリとの戦いもメリハリの利いた映像で,視覚効果の出番も満載だ。いずれもスチル写真が提供されず,紹介できないのが残念だが。  
          
  ()  
   
  Page Top  
  sen  
 
back index next
 
     
<>br