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夢か現実かに翻弄される | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
トム・クルーズ,キャメロン・ディアスといった人気スターの共演に,『ブロウ』(01)『コレリ大尉のマンドリン』(01)と出演作が続く売れっ子ペネロぺ・クルスがからむ。トムの新しい恋人で,この映画での共演がニコール・キッドマンとの離婚の決定的要因になったとの噂だ。話題がホットなうちに正月映画に間に合わせようという配給元の思惑か,日本公開は米国公開のわずか1週間後となった。本時評は関係ないと思っていたら,Cinefex誌が推奨するVFX多用映画のリストに突然飛び込んできたから,本号の誌面を確保するのもやっとだった。 スキップしても良かったのだが,脚本・監督が『あの頃ペニー・レインと』(00)のキャメロン・クロウというのが気になった。この監督の脚本と音楽センスの良さは抜群だし,トム・クルーズとの相性も『ザ・エージェント』で証明済みだ(写真)。
VFX担当がR・エメリッヒ率いるCentropolis Effects (CFX)社だったのも,久々にどんな技を見せてくれるかと興味をそそられた。 98年度東京国際映画祭グランプリ受賞作のスペイン映画『オープン・ユア・アイズ』(97)のリメイクとのことだ。ハンサムで資産家の若き実業家デヴィッド・エイムス(トム・クルーズ)は,恋人ジュリー(キャメロン・ディアス)との何不自由ない生活を続けているが,パーティで知りあった親友の彼女ソフィア(ペネロペ・クルス)に心を奪われる。嫉妬に狂ったジュリーはデヴィッドを乗せた車を暴走させ,彼女は命を落とし,彼は顔と片腕を負傷する。見るも無残な醜い顔となったデヴィットは,元の顔を取り戻し,精神錯乱から立ち直れるか…というのが,原作とも共通した設定だ。なるほど,スペイン女優ペネロペ・クルス魅力的な美女で,トム・クルーズが実話に発展したのも無理はない。世界中の男心をくすぐる点では,チャン・ツィイーと双璧だろう。 それだけでも一見の価値はあるが,この映画の展開には少々苛立った。夢と現実が交錯し,夢の中にまた夢があるので,観客もまた主人公と同様に「一体どうなっているんだ?」と錯乱してくる。映像的にはどのようにも描けるのだから,今までのはすべて夢でしたというのはズルイ。主人公と同じ視点に立たせる技とも言えるが,こういう風に作り手に翻弄されるのは愉快ではない。 音楽業界誌のライター出身のキャメロン・クロウ監督ゆえに,挿入歌の数も凄い。出来としては,ポール・マッカートニー作の同名主題歌よりも,R.E.M.の「オール・ザ・ライト・フレンズ」の方が優れている。サントラ盤に収録されてない既発表曲の中では,クライマックス・シーンで高らかに流れるビーチ・ボーイズの大ヒット「グッド・バイブレーション」がことさら印象的だった。そういえば,この曲はリーダーのブライアン・ウィルソンが精神不安定状態の頃に,ドラッグの力を借りてプロデュースした名曲である。 VFX担当は,CFX社だけかと思ったら,エンドロールにはデジタル・ドメイン,シネサイト,デジスコープ等の名もあった。その数に見合うだけのVFXシーンがあり,等身大のミュージシャンのホログラム,畳大のテーブル状ディスプレイの映像,高層ビルのエレベータのガラス壁面や屋上から見下ろすNY市内等は,いずれもディジタル合成だろう。目を凝らして見たが,エンパイヤ・ステート・ビルの向こうに少し霞んで見える高層ビルは,どう考えてもWTCだ。改めて撮影し直しても,復旧工事が写ってしまうので断念したと考えられるが,それならディジタル処理で取り除けたはずだ。あるいは,夢と現実が区別できないデヴィッドの脳裏には,まだWTCの姿を残しておきたかったのだろうか。 |
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