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O plus E誌 2005年6月号掲載
 
 
戦国自衛隊1549』
(東宝配給 )
      (c)2005『戦国自衛隊1549』製作委員会  
  オフィシャルサイト[日本語]    
  [5月14日より日劇1ほか全国東宝洋画系にて公開中]   2005年4月27日 東宝試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  自衛隊の全面協力とオープンセットがウリの娯楽大作  
 

 3月公開の『ローレライ』の 12億円に対して,この映画の総製作費は15億円。前の2本と比べたら1/10規模だが,日本映画としては破格の大作らしい。それでも,大作志向で市場開拓しようという意気込みは喜ばしいことだ。そりゃそうだ,韓流ブームを目の当たりにすれば,国内にもそれだけの市場があることは証明されたわけだから,もっといい映画,もっと面白い作品を作ろうと思わなければ,プロの映画人じゃない。
 原案は,演習中に 400年前の戦国時代にタイムスリップしてしまった自衛隊一個小隊を描いた半村良の小説『戦国自衛隊』で,1979年に千葉真一主演で同名映画化され大ヒットした。今回は同じ着想で,『ローレライ』の福井晴敏が書き下ろした原作をもとにしている。旧作が若き日の上杉謙信,長尾景虎の時代への関与を描いていたのに対して,本作はまだ桶狭間の戦いのかなり前,斎藤道三と和睦して濃姫を娶った頃の織田信長の時代へのタイプスリップを描く。
 監督は『ゴジラ × メカゴジラ』の手塚昌明。主演は,ミッションを帯びて戦国時代に向かうロメオ隊員に江口洋介と鈴木京香。戦国時代を生きる幼なじみのカップルに北村一輝と綾瀬はるか。さらに,織田信長役の鹿賀丈史,斎藤道三役の伊武雅刀,蜂須賀小六役の宅間伸が脇を固める。まずまず悪くないキャスティングだ。
 最大のウリは,総工費 2.2億円かけて陸上自衛隊・東富士演習場の一画に作ったという天母城のオープンセットだ。驚くほどのものではないが,この映画の中では最大限に活用されている。日本映画界にとっては滅多とない機会だけに,気合いが入っている様子がよく分かる。経験がない限り向上もないから,若手のスタッフを育てるには,これも好ましい限りだ。
 特筆すべきは,自衛隊の全面協力で,戦車もヘリも本物を利用できたことだ。 25種類もの本物の戦車やヘリが登場する。手塚監督の「旧作の『戦国自衛隊』の最後,戦車が沈んでいくシーンは涙しながら見た記憶がありますが,戦車やヘリコプターに手作り感があって,これが本当の自衛隊だったらすごいだろうなと思っていました。今回,まさか協力してもらえるとは考えてもみませんでした」の言葉通り,以前ならとても考えられなかったことだ。これも時代の流れだろう。

 
 

CG,VFXは予想通りかなり登場する。旧作よりもSF性が高いので不可欠とも言えるし,最近のVFX技術を意識して書かれた新しい原作だとも言える。VFXの主担当は『ローレライ』と同様のマリンポスト社で,その他に10数社の名前が並ぶ。雲,噴火,鳥など,出来不出来の差が激しいのは,日本の実情を考えれば致し方ないが,大きな欠陥はなく健闘している方だろう。
 難点を指摘するとすれば,ヘリの激突,城の炎上シーンなどに登場する模型の方だろう。ミニチュアと感じないレベルに仕上げるほどの予算と経験がないと言えようか。カメラももう少しロングに構えて,スケールの大きいシーンを見せて欲しかったところだ。『キングダム・オブ・ヘブン』『サハラ』と比べるのは酷かも知れないが,そのスケール感の差は歴然だろう。
 色調も音楽もセリフも素人っぽ過ぎる。相変わらず日本映画の底の浅さが知れるようで残念だが,この映画に限っては,それがそんなにマイナスに出ていない。この稚拙な感じが, SFらしい軽さ,娯楽作品らしい楽しさ,笑いに繋がっている。「ご冗談でしょう…」という感じなのだ。人間ドラマを強調したい『ローレライ』よりも上出来だと言える。マイケル・クライトン原作の『タイムライン』(04年1月号)よりもずっと面白いことも確実だ。これは脚本が好いからだろう。エキストラ総数5,500人,馬500頭を動員したこの娯楽活劇は,合格点をつけていい成功作品の部類に入るだろう。

 
          
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