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O plus E誌 2004年6月号掲載
 
 
『ドーン・オブ・ザ・デッド』
(ユニバーサル映画
/東宝東和配給)
 
      (c) Strike Entertainment Inc.  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]      
  [5月15日より日比谷映画ほか全国東宝洋画系で公開中]   2004年4月22日 東宝東和試写室(大阪)   
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  名作のリメイクは,VFXよりも特殊メイクに注目  
   フランス製の未来都市のSF,韓国の戦争ものに続いては,アメリカ映画に戻り,SFX/VFXの定番の1つホラー映画だ。  
 ホラーの巨匠と呼ばれるジョージ・A・ロメロの代表作に「Night of the Living Dead」(68)「Dawn of the Dead」(78)「Day of the Dead」(85)の3部作がある。この映画は,名作の誉れ高い2作目のリメイクだ。この題名には馴染はなくても,邦題が『ゾンビ』と聞けば,その後の一連のホラー映画の原点となったことを知る人は少なくないだろう。  
 本作品の主演は,『イグジステンズ』(99)『死ぬまでにしたい10のこと』(02)のサラ・ポーリー。ユマ・サーマンを少し知的にした感じで,ホラーのヒロインにぴったりだ。脇役陣で少し名を知られるのは,『ミッション・インポッシブル』(96)のヴィング・レイムスくらいだろうか。監督は,これが映画デビューとなるザック・スナイダー。ロッド・スチュアートのビデオ・クリップ,ロバート・デ・ニーロ,ハリソン・フォードらトップ・スターのCM等を手がけて来た英国出身のCMディレクターである。その色彩感覚とサウンド・センスの良さはこの映画の中でも随所に表われている。旧作をなぞる単なるリメイクではなく,Re-envisioning(再想定)だと言うだけのことはある。  
 旧作を踏襲したのはゾンビに襲われる生存者たちが大型モールに立てこもることくらいで,脚本は全く新しい。原因不明の疫病で,目の前の家族や隣人がゾンビ化して襲いかかって来る恐怖は昨年公開の『28日後…』(03)にも酷似している。本作品の方が数段面白い。全編恐怖,恐怖一辺倒の展開でなく,所々息を抜ける憩いのシーンがあるのは余裕だろうか。その場面で心地よい印象的な曲が流れることが,この映画の幅を広げている。映像に関しても所々に入るロングのカットがいい。恐怖をかき立てるのにはアップが効果的だが,それが続くと疲れる。この映像作りと緩急自在のテンポの良さが,ただの新人監督ではないと思わせる所以だ。人物設定や人間関係の描写もしっかりして,ホラーというより,この映画はサバイバル映画の範疇に属する。  
 VFXの担当はMr. X社で,クライマックスの大爆発シーンは勿論その類いだが,遠景の背景などにもディジタル・マットが少し使われているようだ。この映画で注目すべきは,むしろゾンビの顔面特殊メイクの方だ(写真)。2人や3人ではない。集団となって襲ってくるゾンビ一人一人の顔面に,それと分かるメイクを施すのだから並大抵の作業量ではない。メイクだけでなく,顔面マスクも多数作られたようだ。手作りのマスクやメイクには,CGでは表現できない味わいがある。  
     
 
 
 
写真 時間をかけた入念なメイク(左)もあれば,予め用意されたラバー製のゾンビ・ヘッド(右)もある
(c)2004 Universal Pictures. All Rights Reserved.
 
     
   最近の流行で,長いエンドロールにNG集や後日談のワンカットがつくことがある。この映画では,ワンカットどころか,結構衝撃的な映像が付加されている(ネタバレになるので,詳しくは書けないが)。当然この映像が気になって,特殊メイクに携わった会社と人数を数えられなかった。ともあれ,ホラーというだけで食わず嫌いしている人たちにもこの映画を勧めたい。映画の楽しみ方の新たな発見があるはずだ。
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