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O plus E誌 2002年10月号掲載
 
 
『プロフェシー』
(スクリーンジェムス
&レイクショア・エンターテインメント提供
/SPE配給)
 
 
    
  オフィシャルサイト日本語][英語]  2002年8月8日 ヤマハホール(完成披露試写会) 
 [10月中旬より全国松竹・東急系にて公開予定]   
     
 (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。) 
  
 こちらも負けずに十分怖がらせてくれる 
   小泉首相似で,最近の日本公開作品からはラブ・ロマンス専門かと思うリチャード・ギア主演のスリラーだ。今回の役は,愛妻を亡くしたワシントン・ポスト紙の記者だ(写真1)。相手役の婦人警官には『目撃』(97)『トゥルーマン・ショー』(98)のローラ・リネイ(写真2)。2人は『真実の行方』(96)でも弁護士と検事役で共演している。エドワード・ノートンの鮮烈なデビュー作だ。
 「あれを見た?」と最愛の妻が亡くなる前に漏らした謎の言葉。後に残った無数の不気味なスケッチ。いったい彼女は何を見たというのか? 何にあれほど脅えていたというのか? 謎を解く鍵は2年後,思いもよらぬ形で示される。次々におきる理解を超えた現象の数々…。というコピー文句通りの進行で始まるこのサイコ・サスペンスは,ウェスト・バージニア州の小さな町ポイント・プレザントで起きた実話に基づいているという。
     
 
写真1 今回は新聞記者役。そのうち首相役でもやりますか? 写真2 こちらは評者好みの知的美女
 
     
   監督は『隣人は静かに笑う』(99)のマーク・ぺリントン。MTV出身だけあって,映像とサウンドの組み合わせで,サブリミナル効果のように伏線を張って行く。今月の前2作と異なり,メジャー系作品でないだけに,予算も抑え気味のキャスティングとスタッフ構成だ。
 コピー文句に負けずに,怖がらせるところは十分怖がらせる丁寧な作りだった。完成披露試写会場は冷房がかなり効いていたためもあるが,何度もぞくぞくして,ついに途中で長袖のジャケットを着る破目になった。10月中旬公開予定というが,夏の怪談シーズン向きの映画だ。もっとも,最近の夏休み映画はお子様映画に占拠されて,出番はなかったのだろうが。
 原題は『Mothman Prophecies』(モスマンの黙示)。 「モスマン」とは蛾で,不思議な怪奇現象の前後に「蛾男」の目撃証言が相次いだり,その目撃の際に大惨事の予感がしたという人が世界中に沢山いるらしい。1985年のメキシコ大地震,1986年のチェルノブイリ原発事故の前にモスマンを見たという報告がある。英語版オフィシャル・サイトには,そうした逸話や研究例が載っていて興味深い。
 では,その蛾男のCGがこの映画のVFXのポイントかというと,残念ながらそうではない。思わせぶりなカットが少し出てくるだけだ。この映画もVFX担当はシネサイト社で,積極的出番はクライマックスに登場するシーンに集中している。少しネタバレになるが,映画の冒頭でポイントプレザント市のシルバー橋で起きた事故に基づいた実話だと断ってあるのだから,許してもらおう。この橋をかつての吊り橋式で再現するのに,本物の橋,実物大のセット,CG,模型等を組み合わせて撮影したというのがウリだ。
 で,出来栄えはというと,先月も取り上げたこのスタジオのVFXは,どうも好きになれず,余り高く評価できない。SIGGRAPHやVES等で発表もしなれれば,メイキング情報も公開しないこの会社の腕は,作品から推し量るしかない。ILMにしては少し雑だなと思ってエンドロールを見ると,大抵はこのシネサイト社だ。先月の『ウィンドトーカーズ』の戦闘機は『パール・ハーバー』(01年7月号)の零戦を,この映画の橋は『マジェスティック』(02年6月号)の橋を思い出させる。ILMの功績をなぞるのは仕方ないが,レベルがはっきりと一段落ちる。低予算でせっせと仕事を片づけてくれるスタジオは貴重な存在なのだろうが,アーティストの手がけた作品でなく,労働者がこなした仕事という印象が強い。
 その一方,タイトル・デザインはお洒落だった。光の使い方が印象的でセンスがいい。本編は,カメラワークはパンよりも焦点移動が主で,光をぼかす効果を多用していた。
 映画全体はというと,結末が少し物足りなかった。監督の腕は悪くないだけに,もう少し脚本が面白くできていればと残念だ。いつものように,これが実話ベースの限界なのかと思う。観客は種明かし的なものを求めているのだから,実話の枠を超えてもっとフィクションに徹した方が成功したのではないかと感じた。
 
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