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O plus E誌 2002年4月号掲載
 
 
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『光の旅人』
(ユニバーサル映画/日本ヘラルド配給)
 
       
  オフィシャルサイト[日本語][英語   (2002年2月21日 日本ヘラルド試写室)  
  [4月13日全国東宝洋画系にて公開予定]      
         
     
  オスカー男優が演じる,癒し系の宇宙人  
   玄人好みの俳優で,『ユージュアル・サスペクツ』(95)『L.A.コンフィデンシャル』(97)『交渉人』(98)などで味のある演技を見せてくれたケビン・スペイシーも,『アメリカン・ビューティー』(99)でアカデミー賞主演男優賞に輝いた以上,もはや名脇役という訳には行かなくなった。そのオスカー男優の最新作はSFで,役は宇宙人だという。それだけでも興味深々なのに,『光の旅人』とはロマンチックな邦題をつけたものだ。
 原題は『K-PAX』。地球から1000光年の彼方にある琴座のK-パックス星から来たと自ら名乗る謎の男プロートが巻き起こす騒動と,彼を見守り真実を探り当てようとする良心的精神科医マーク・パウエル(ジェフ・ブリッジズ)との心の交流が主題である。原作は1995年に書かれたジーン・ブルーワーの処女小説で,プロデューサのローレンス・ゴードンが映画化権を取得し,監督に『鳩の翼』(97)のイアン・ソフトリー,撮影監督に『グラディエーター』(00)『ハンニバル』(01)のジョン・マシソンを配したという布陣だ。
 宇宙人とは本人が名乗るだけで,風体は普通の中年男,舞台も現代でSFっぽい荒唐無稽な場面はない。そこに,ケビン・スペーシーの飄々とした演技が加わり,ユニークな物語ができ上がった。妄想か本当の異星人か,精神病院の患者たちを癒す不思議な存在が,未知の惑星軌道を解説し天文学者をも驚かすシーンは,実によくできていて痛快だった。そうしたスローな展開の背景には何かあるぞと予感できるが,期待にたがわぬ真実が隠されていて,思わず引き込まれる。映画通ならば大体結末は予想できるが,予想通りであっても不快感はなく,むしろ満足感の方が大きい。
 邦題通り,光をモチーフにしているので,映像も光にこだわった丁寧な作りだ。いくつかの場面で差し込む光線は,ディジタル処理で描き加えられたものと思われる。その光線で浮き上がって見える塵や埃もCGだ。ネオンサインも昔流の多重露光ではなく,多重ディジタル合成だろう。VFXシーンはそう多くないと思ったのだが,主担当のCentropolis Effects社の参加人数からすると,筆者が識別できた以上のカットで視覚効果使われていたものと思われる。ロトスコープ担当者が少なくないので,写真など,ガラスに映った人物像の大半はディジタル処理かも知れない。
 
 
 
 プロートがK-パックス星に帰る7月27日の朝は,派手な視覚効果シーンで幻覚を演出しても良かったのだが,まばゆい光だけでそれを表現したのは,監督の好みだろうか,それとも低予算だったからだろうか。大作風の味付けはないB級作品ではあるが,印象に残る一作だ。見て損はない。 
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結末の解釈は観客の自由
ケビン・スペイシーが異星人だというので,どんなメイクアップで登場するのか思ったら,サングラス1つだけで意外でした(笑)。ヒューマン・ドラマとしては,良く出来ていますね。
精神病院の患者1人1人の描写も丁寧だし,ちょっと『レナードの朝』(90)を思い出しました。
なるほど,そっち系の映画でもありますね。SFとしては,ネタバレになるので余り話せませんが,結末は観客の解釈に任せるという感じです。
その点では『ノイズ』(99)と似ていますね。エンドクレジットの後にもシーンがあるので,席を立たずに最後まで観て欲しい映画です。
ケビン・スペイシーが看板の映画ですが,異星人役とはいえ,バナナを皮ごと丸かじりしたり,犬と抱きあって戯れたり,俳優業も大変です(笑)。
精神科医役のジェフ・ブリッジスもいい役者だけれど,あまり知的な役は向いていませんね。むしろ彼なら,タフな刑事役の方が似合います(笑)。ここは,ロビン・ウィリアムスあたりの方がいいですね。
それじゃピッタリ過ぎます(笑)。だとすると,この異星人はマット・デイモンとか。
いや,エドワード・ノートンの方が,異星人役には合っています。むしろ,ケビン・スペイシーが精神科医役の方が合っていたと思います。
別の映画評では,プロートがもっと若くないと年齢的に計算が合わないと書いていましたが,確かにその通りですね。オスカー受賞でランクが上がって,主役に回したのかも知れません。
というふうに勝手なキャスティングを楽しみましたが,それだけ俳優の演技のウエイトが高い映画です。
   
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