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O plus E 2019年Webページ専用記事#6
 
 
スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』
(ルーカスフィルム/ ウォルト・ ディズニー・スタジオ・ジャパン配給 )
      (C) 2019 Lucasfilm Ltd.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [12月20日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開中]   2019年12月18日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  42年間の総決算,全9部作の完結編  
  いよいよその時が来たという感じだ。もはや,言うまでもないだろう。4年前に『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)で始まった新3部作(EP7〜EP9)の完結編であり,映画史を塗り替えた『スター・ウォーズ』(77)からの旧3部作(EP4〜EP6),22年後に再開された前3部作(EP1〜EP3)を含むと,42年間に渡る全9話の総決算である。ちょっと興醒めなのは,これはスカイウォーカー一家の物語の完結であり,2022年から別の3部作が登場すると公言されていることだ。折角なら,これで終わりと言っておけば良いのに……。
 そのためか,マスメディアでの扱いは2015年の過熱報道に及ばない。いい加減,メディアも疲れたのだろう。何しろ,今年のディズニー映画群は凄まじかった。同じ年に『アベンジャーズ』シリーズの完結編を公開し,名作アニメ3本の実写リメイクを製作し,大ヒット確実の『トイ・ストーリー4』(19年7・8月号)『アナと雪の女王2』(同11・12月号)をこなし,さらに『メリー・ポピンズ』や『マレフィセント』の続編までさばいたのだから,さすがのディズニー配給網の広報宣伝担当も疲弊しているに違いないと想像する。それでも,各作品のクオリティが落ちないのだから,逐一紹介する当欄も疲れた。
 それでも,世界中のSWファンはしっかりウォッチしていることだろう。筆者は,一般公開の2日前,夜の先行上映の前日の12月18日に大阪での完成披露試写を観て,翌日にこの原稿を書いている。これをWeb専用ページにアップする頃には,SNS上に様々な評価や感想が溢れていることだろう。その中で今更何を書くかと言えば,このSWシリーズに関しては,1ファンとしての素直な感想と,当欄の役目として,VFX映画史上での意義を同時代記録しておくことだけである。
 
 
  どんな完結編になるか予想してみよう  
  春の『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19年Web専用#2)の折にも,熱心なファンに勧めたのは,どんな完結編になりそうか,過去作品や既出の情報から予想してみることだった。その方が完結編をより楽しめるからである。自らも,以下のような予想を立ててみた。
 (a) 監督は,当初予定されていたコリン・トレボロウが途中降板した。EP7の監督で,新3部作全体の責任者であるJ・J・エイブラムスが監督復帰することになった。トレボロウの脚本にルーカスフィルムが難色を示したための降板劇と報じられている。となると,J・Jが共同脚本を担当するこの完結編は,全9作の大団円に相応しいものになっているはずであり,ファン・サービスもたっぷり盛り込まれていることが予想できる。副題からも,ハッピーエンドであると考えるのが妥当だろう。
 (b) 登場人物は,シリーズ全体から多数出演させることだろう。実際,悪の権化であるパルパティーン皇帝役のイアン・マクダーミド,ミレニアム・ファルコン号の元の所有者ランド船長役のビリー・ディー・ウィリアムズの名前もクレジットされている。例によって,物語の内容は一切伏せられているから,クレジットのない俳優が登場するサプライズもあるのではと考えられる。アナキン・スカイウォーカーやオビ=ワン・ケノービではないかという噂も立っていたが,さて?
 (c) マーク・ハミルとキャリー・フィッシャーの名前は普通にクレジットされている。ルーク・スカイウォーカーの姿は前作『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(18年1月号)で消滅したが,フォースの力をもってすれば,少し再登場させるくらいはやってのけるだろう。問題は,既に2016年暮に死去したレイア将軍役のC・フィッシャーの扱いだ。最新のデジタル技術をもってすれば,彼女を描くのはさほど難しくないが,どこまでそれをやっているのかが,当欄の関心事である。
 (d) 主人公の女性ジェダイ戦士のレイ(デイジー・リドリー)の出生の秘密が明かされるはずという噂だ。2代目ダースベイダーのカイロ・レン(アダム・ドライバー)の関係も微妙だという。まさか,この完結編になって,2人は双子の兄妹だった……なーんてことは有り得ないだろうが。
 (e) 完結編となると,新しい登場人物はあまりいないだろうが,ドロイドや宇宙生物の新種はありそうだ。したたかなキャラクターグッズ・ビジネスを考えれば,大いに有り得る。と思っていたら,既にその種の新製品の近日発売の案内が出ているようだ。どんなキャラなのか事前には調べることはせずに,本編で楽しむことにしよう。
 
 
  J・Jならではの思い入れもファンサービスも,たっぷりの大団円  
  以上のような予想を立ててから試写に臨んだが,ほぼ予想通りに,SWファン代表であるこの監督のサービス精神がしっかり発揮されていた。大きなネタバレにならない程度に,予想結果を振り返ることにしよう。
 オープニングシーケンスは長過ぎず,手短にまとめて早速本編に突入する。もうこの段階で,主要登場人物は出揃い,和気藹々とした雰囲気だ(写真1)。それぞれにしっかり出番があるが,前作までに比べてポー・ダメロン(オスカー・アイザック)の出番が多いと感じる。本作を機に人気も急上昇することだろう。
 
 
 
 
 
写真1 かつてのハン・ソロの位置にレイが座り,主要登場人物たちが和気藹々と
 
 
  中盤過ぎまで,一気呵成に物語が進行し,次々と心地よいアクションが登場する(写真2)。何やら,「トム・ソーヤの冒険」や「シンドバットの冒険」を思い出した。特にこの2作を意識した訳ではないだろうが,冒険ものの基本に忠実な描き方をしているから,そう感じるのだろう。少しテンポを落として,ラストバトルの前までエネルギーを温存している感じもする。やはりJ・Jは実力派監督であり,こうした人気シリーズの縛りがなければ,活き活きとした冒険映画の傑作を生み出す力がある。
 
 
 
 
 
写真2 前半からテンポよく,冒険ものとして上々の出来映え
 
 
  クレジットなしの意外な俳優の登場に関しては,小さなサプライズはあったとだけ言っておこう。レイの秘密に関しては,観てのお愉しみだ。そして,満を持してラストバトルが始まり,キャッチコピー通り「物語は,完結へ」「伝説は,永遠に」となる訳である。まずまず収まるところに収まる無難な着地であり,これなら世界中のファンから袋叩きには遭わないはずである。75〜80点程度の出来映えで,残念ながら,完結編の満足度は『アベンジャーズ/エンドゲーム』に負けてる。
 以下,CG/VFXに関しての当欄の評価である。
 ■ CG/VFXが全編でたっぷり使われていることは言うまでもない。ILMの40余年の蓄積の賜物であるが,新規性は感じられない。壮大なのは,予告編にも登場する悪の巣窟の威容,レイが単身で目的地に向かう途中の荒波くらいのものだ。本作では,ライトセーバーでの戦いシーンが多く,とりわけカイロ・レンとレイの戦いは何度も登場するが,その一場面の背景にこの荒波が再登場する(写真3)。何もこんな場所で対決する必要はないのに,折角新技術で描いた荒波なので,もう一度使いたくなったのだろうか。
 
 
 
 
 
写真3 カイロ・レンとレイの戦いは再三登場し,バックの荒波も2度目の使い回し
 
 
  ■ 最大の関心事であった故C・フィッシャーの登場場面は,予告編でレイと抱き合うシーンが流れていた(写真4)。さらに,デジタル技術で再現することはせず,EP7, EP8で撮影済みの未使用シーンを選んで使ったと広言されていた。それは表向きの発表で,実はCG製のレイア将軍をかなり登場させているのではと目を凝らして観たのだが,発表通りだったようだ。出演シーンは結構あるが,同じ衣装,同じようなアングルでの登場ばかりだ。なるほど,類似のポーズゆえに使わなかったシーンなのだと納得する。所々で少し若い顔になるのは,EP7とEP8での撮影分が混在しているためだろう。当欄としては,大いに不満だ。最新技術をもってすれば,もっと多彩なポーズでレイア将軍を描き,レイアからレイへのバトンタッチを描けたはずである。彼女だけでなく,アレックス・ギネスもデジタル復活させて,オビ=ワン・ケノービとして再登場させることも可能であった。SFX, VFX技術を先導してきたSWシリーズなら,それくらいは完結編でやってのけて欲しかった。
 
 
 
 
 
写真4 既に予告編から登場していたレイア将軍(故キャリー・フィッシャー)の出演シーン
 
 
  ■ 新登場のキャラは,BB-8の相棒となる小型ドロイドのD-O(写真5)と,ドロイドの修理職人のバブ・フリック(写真6)だった。前者は,ピクサー社のシンボルの「ルクソーJr.」に,後者はヨーダに似ている。いずれもユニークかつ可愛く,こういうデザインとビジネスには,しっかり力を入れている。
 
 
 
 
 
写真5 新3部作のシンボルのBB-8(左)と新登場のドロイドD-O(右)。この構図は,ピクサー社の「ルクソーJr.」を思い出す。
 
 
 
 
 
写真6 新登場の小さなエイリアン「バブ・フリック」はドロイドの修理職人。ルックスはヨーダに似ている。
 
 
  ■ 満を持して登場するラストバトルは,これでもか,これでもかのしつこさはなく,格調高く,納得が行く結末だった。ミレニアム・ファルコン号を初め,各種宇宙船や戦闘機が勢揃いするのも,ほぼ予想通りだった(写真7)。その一方で,暗黒面の誘惑と闘う「最後のジェダイ戦士」であるレイの姿は,「ハリー・ポッター」シリーズの完結編を彷彿とさせた。人気シリーズのクライマックスとなると,どうしても似てきてしまうのだろうか。CG/VFXの主担当は勿論ILMで,ほぼ1社独占であり,僅かな追加作業で,Ghost VFX,Base FX, Tippett Studio等の応援を得ているに過ぎない。
 
 
 
 
 
写真7 レジスタンス側の援軍は,既視感のある宇宙船や戦闘機のオンパレード。壮観だ。
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