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O plus E 2019年Webページ専用記事#6
 
 
ジュマンジ/ネクスト・レベル』
(コロンビア映画 /SPE配給 )
     
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [12月13日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開中]   2019年12月13日 TOHOシネマズ二条
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  前作以上に,ほとんどすべてがゲーム世界の中  
  例によって,VFXを多用したメジャー系の大作は日米同時公開が多く,公開日直前までマスコミ試写がないか,本作のようにその機会すらないこともしばしばだ。となると,公開日以降に映画館で観ることになり,紹介記事もWeb専用ページ掲載にならざるを得ない。本誌掲載でないと明確な締切がないので,ついつい記事執筆も1日延ばしにしてしまう。本作の場合,公開日当日の夜に見終えていたのだが,後で観た『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の執筆を優先させてしまった。本作を軽視したということは,その程度の出来映えだったと解釈してもらって構わない。
 『ジュマンジ』シリーズとして通算3作目だが,ビデオゲームの世界に吸い込まれ,ジャングル内で過した2作目『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(18年3・4月号)の正統な続編である。高校生の4人組スペンサー,マーサ,フリッジ,ベサニーが現実世界に戻ってからの2年後に設定されていて,全員大学生になっている。前作の最後に,もうこりごりとばかりにゲーム機は叩きつぶしたはずなのに,続編でまたまたジュマンジ世界が登場する訳だ。まあ,その辺りはご都合主義で,ゲームごときはどうにでもなる訳だが……。
 前作で抜擢された監督のジェイク・カスダンは続投している。上記の4人組の俳優も同じで,仮想のジュマンジ世界で登場するドウェイン・ジョンソン,ジャック・ブラック,ケヴィン・ハート,カレン・ギランらメインキャストも同じ役柄で再結集している。本作では,スペンサーの祖父エディ役にダニー・デヴィート,その親友マイロ役にダニー・グローヴァーのベテラン俳優2人を配して厚みを増している。筆者はIMAX 3Dの字幕版で観たが,日本語吹替版ではダニー・グローヴァーの声を加山雄三が吹替えているのが,少し注目に値する。
 NYでの大学生活に退屈していたスペンサーが,かつての冒険が忘れられず,壊したはずのゲーム機の部品を残していて,ジュマンジ世界に入る機能を復活させてしまう,という設定だ。既にゲームボックスの形はしていないが,ケースは壊れて,剥き出しの基板に部品を繋ぎ合わせているという,いかにもそれらしい外観である(写真1)。スペンサーが他の3人を呼び出しておきながら,集まってみると彼の姿が見えない。きっと1人でジュマンジ世界にログインしてしまったのだと察したベサニーが後を追い,他の2人もそれに続き,さらに祖父とその友人も巻き込まれてしまうという展開である。
 
 
 
 
 
写真1 中央の机上にある基板がゲーム機のエンジン
 
 
  前作での4人の関係,ジュマンジ世界ではアバターで別の姿と能力になってしまうことを知らないと,全く理解できないだろう。加えて本作では,ジュマンジ世界で対応するアバターが,なぜか入れ替わっているので,当人たちも,観客も混乱する。やがて,人物の入れ替えが可能になり,元の対応関係に戻るが,半分壊れたゲーム機にありそうな現象を入れて,物語を面白くしたかったのだろう。
 ともかく,個々のシーンもストーリー展開も,ゲーム一辺倒の描き方だ。題名からもそれが伺える。物語にもサスペンス性はなく,さしたるサプライズもなく,緊迫感も感動もない。若いゲーマー達は,このゲーム感覚との類似性を好むのかもしれないが,ストーリー性や終盤の緊迫感を楽しみたい観客には向いていない。ずばり言って,筆者はこの描き方を全く好きになれなかった。
 それでも,役目柄と義務感からだけで,当欄の視点での論評をしておこう。
 ■ ジャングル一辺倒だった前作に比べて,映像的にはリッチになっている。ジュマンジ世界は砂漠で始まり,岩山,雪山等のシーンも登場する(写真2)。古いビデオゲームがバージョンアップできたとは思えないから,元々複数のワールドがあったのに,前作ではジャングルだけを選んでいたという解釈なのだろう。光景としては壮大で,かなりロケ費用もかかったと思われるが,どこまでが実シーンでどこからがVFX加工なのかは,ほとんど見分けられない。
 
 
 
 
 
 
 
写真2 続編でのプレイ舞台は,砂漠,岩山,雪山…と多彩
 
 
  ■ 4人はジュマンジ世界の砂漠で再会するが,そこで多数のダチョウに襲われる(写真3)。前作ほど多彩な動物は登場しないが,それでもハイエナ,ラクダ,馬等は,見事なCGで描かれていた。一部は本物かも知れないが,これも見分けはつかない。VFX的に最大の見どころは,中盤に登場する多数のマンドリルに追われるシーンだ(写真4)。マンドリルのCG表現,その動き,揺れる吊り橋上での登場人物たちとの合成シーンは素晴らしい。さらに,この吊り橋がバラバラになって,複雑に配置されている様子,その中での果敢なアクションは,3D効果も抜群で,IMAXの大画面でこの見せ場のシーケンスは圧巻だった(写真5)。プレビズ技術の賜物だろう。VFXの主担当は4社で,Weta Digital, Method Studios, Rodeo FX,Sony Pictures Imageworksの多数のCGアーティストの名前があったが,他に約10社が参加していた。プレビズは,Third FloorとProofの2社体制である。
 
 
 
 
 
 
 
写真3 砂漠では,多数のダチョウの疾走に巻き込まれる
 
 
 
 
 
 
 
写真4 圧巻は中盤のマンドリルに追われるシーン
 
 
 
 
 
 
 
写真5 この立体的な構図とその中でのアクションは,IMAX 3Dの大画面で堪能できる
 
 
  ■ IMAXで観ただけあって音響的にも迫力があり,シンボルであるドラム音が強烈に鳴り響く。随所でゲーム風の効果音も盛り込まれていた。エンドロールで最初に流れる曲は“It's All In The Game”だった。1958年のTommy Edwardsのヒット曲だが,既にスタンダード化して多数の歌手に歌われている。日本では,1963年にクリフ・リチャードの歌唱でヒットした。これをエンドソングに選んだということは,この映画は意図的にほぼすべてゲーム世界のテイストにしたということだろう。
 
 
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