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O plus E誌 2012年8月号掲載
   
  3Dブームの行方(その1)  
  DVD/BDの特典映像解説を毎号行わないと宣言した代わりに,毎月のページの余白を利用して,日頃感じている映画業界,CG/VFX作品についての雑感を書き綴ることにした。勿論,全くの私見であり,確たる証拠がない個人的印象も多々あることを予め断っておきたい。
 この数年の間に何度のとなく尋ねられたのは,今回の3Dブームの行方である。このまま定着するか,それともかつてのブームのように,早晩勢いはなくなり,跡形もなく消えてしまうかは,まだ結論は出ていないと思う。個人的には,家庭用の3D受像機は時期尚早で失敗すると予想していたが,現時点ではものの見事にその道を歩んでいる。ところが,映画に関しては,『アバター』(10年2月号)公開後2年半が経過したが,成否いずれに転んでもおかしくないというのが実感である。
 ハリウッド製の大作に関しては,かなりの比率で3D製作されている。それも,当初多かった「2D→3D変換」のフェイク3Dはぐっと減り,2台のカメラとステレオリグを用いたリアル3Dの比率が増してきた。ただし,いま公開の作品の大半は『アバター』以降に意志決定されたものが大半であり,まだブームの高熱に浮かされている頃の「遺産(?)」であると言えなくもない。
 最近,2Dでもしっかりした作品を観ると,これで十分じゃないかと思う。その半面,今月の『マダガスカル3』のような3Dの逸品を観ると,子供に見せてやるなら親は3D版を選ぶだろうと想像する。フルCGアニメは3D製作も容易で,効果が高いことは言うまでもないが,他がなくなっても,このジャンルだけで3D上映方式を維持できるかどうか,それが鍵となるだろう。
 
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O plus E誌 2012年9月号掲載
   
  3Dブームの行方(その2)  
  米国製フルCGアニメの大半がS3D制作となる中で,実写(+VFX)の本数は少し減り気味であるものの,大作中心に再評価され,(3D評論家 大口孝之氏によれば)3.5次ブームが起きつつあるという。『アバター』が引き起こした第3次ブームの余韻から醒め,次なるフェーズに入ったという意味らしい。本号の『アベンジャーズ』『プロメテウス』に続き,前々号紹介の『アメイジング・スパイダーマン』(米国では,この順に公開)の好評が,その引き金となっているようだ。
 先週SIGGRAPH 2012で「State-of-the-Art Stereo- scopic Visual Effects: Stereoscopy and Conversion are “More than Meets the Eye”」を聴いたが,数年前に比べて,S3D制作はかなり進化し,ノウハウも蓄積されている。リアル3D撮影だけでなく,フェイク3Dもである。日本映画界は,ここまでのノウハウはまだ未経験,未習熟で,取り残されつつあるかと思う。
 米国で再評価,中国では今3Dブームがピークと言われる中で,日本では3D興業が退潮気味である。3D版があるのに,2D上映の入りが悪くないという。メガネ着用が絶対嫌という客は仕方ないが,実は300〜400円余分に支払うこと嫌う客が増えているためらしい。
 今月の『アベンジャーズ』『プロメテウス』は,3D版の試写を観た後,映画館では意図的に2D版を観に行った。なるほど,結構客が入っている。細かなセリフやVFXを再点検するには支障なかったが,スペクタクル度は半減以下だと感じた。改めて,こうして丁寧に作られた作品は,是非3Dで観るべきだと思う。それを映画館で2Dで観る入場者は,映画をTV放映かDVD観賞と同レベルとしか考えていないのだろう。
 
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O plus E誌 2012年10月号掲載
   
  3Dブームの行方(その3)  
  良質の3D作品が増えているのに,2D版で済ます観客が少なくないことを先月号で嘆いた。その理由として,追加料金を惜しむだけでなく,過去の作品で懲りたという人も結構いるという。筆者のように,3D上映の途中でメガネを外して,どこに焦点面があるか,視差はどれくらいつけているかを確認しているのは特殊例としても,3D版と2D版の両方を観る余裕のある観客もまずいないだろう。3Dと2Dで,2D版を選んでしまった以上,折角良質の3D作品が登場しても,気付かずに終わってしまっている訳だ。もったいない。
 従来,3Dでの試写会といえば,特殊な劇場かシネコンの1スクリーンを借り切るだけの投資が必要なため,かなりの大作に限られ,小さなスクリーンのマスコミ用試写は2D版に限られていた。最近,配給会社の試写室に3D映像設備の導入が進み,そこでの3D試写で「いいね!」と感じることが増えている。3D効果の演出力は向上していることもあるだろうが,ハコ(試写室や劇場)の大きさも関係しているのではないかと思う。中央位置が最も好ましいのは当然だが,人間の眼には矩形の補整能力があるから,左右の壁よりの座席でも結構立体感,奥行き感は感じるものである。ハコは小さくても,スクリーンの絶対的な視野角は狭くないから,3D効果が高いとも言える。
 それなら,大きな劇場での3D上映は所詮駄目なのかといえば,そうでもない。何千人が入れるSIGGRAPHの主会場での3D上映は魅力的であったから,視野角ばかりの問題ではない。もう1つの要因は,プロジェクターの光量の問題だ。光量の低い廉価デジタル・プロジェクターを入れたシネコンでは,3Dだからと言って,光量を倍にできずに,暗い画面ばかりになってしまう。いやいや,光量は上げられるのに,ランプ寿命を延ばすために,光量を抑えている劇場がほとんどだという。明るくないと,映画そのものの印象も悪い。それが観客の3D離れを起こしているなら,自業自得だ。
 
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