O plus E VFX映画時評 2023年9月号

『沈黙の艦隊』

(Amazonスタジオ/東宝配給)





オフィシャルサイト[日本語]
[9月29日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国東宝系にて公開中]


(C)かわぐちかいじ/講談社 (C)2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES.


2023年8月30日 東宝試写室(東京)
2023年9月12日 東宝試写室(大阪)

(注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています)


「潜水艦映画に外れなし」だが, 名作コミックの映画化はまだ序章段階

 製作発表でこの題名を聞いただけで,心が踊った。完成が待ち遠しかった。人気コミックの劇場映画化は何も珍しくない時代だが,筆者の世代,特に昔からコミックファンには,格別の思いのある原作だったからである。1988年から連載が始まり,日本初の原子力潜水艦を描いた作品で,国際情勢や「核抑止力」の意義を正面から論じた驚くべき作品であった。邦画の潜水艦映画『ローレライ』(05年3月号)の公開時には,「2005年春,日本映画が変わる!!」なるキャッチコピーで,大キャンペーンが張られていた。当時,同世代の仲間内では,「映画化するなら先に“沈黙の艦隊”であるべきだ」で意見が一致していた。自分たちならどういう映画にするか,主演を誰にするかまで論じ合った記憶がある。それゆえ,以下では,まず徹底して個人的体験から語る。それが本作の評価に深く関わり,続編への期待にも影響しているからである。
 筆者らの「団塊の世代」の子供時代は,まず貸本屋から始まり,「少年」(「鉄腕アトム」を収録)「少年クラブ」(「月光仮面」を収録)「少年画像」(「赤銅鈴之助」を収録。ラジオ番組には吉永小百合が出演)等の月刊漫画誌を,各々がいずれか1冊を買い,友人間で交換して読んでいた。1959年に「週刊少年サンデー」「週刊少年マガジン」が同時創刊されてからは,筆者の場合は,両方を購入し,前者は10数年間,後者は40数年間1号欠かさず読んでいた。途中,1968年に創刊された青年漫画誌「ビッグコミック」(ゴルゴ13を収録)は併読したが,次第に成年用の「劇画」が中心となり,こちらは今も欠かさす愛読している。大学生になっても,就職して社会人になっても「漫画から卒業しない世代」と言われたが,今の世代ならビデオゲームがそれに当たるだろう。
 そんな漫画歴の中で,個人的Best 5を挙げるなら,以下になる。

1.「火の鳥」(手塚治虫)
2.「忍者武芸帳」(白土三平)
3.「あしたのジョー」(高森朝雄×ちばてつや)
4.「沈黙の艦隊」(かわぐちかいじ)
5.「鉄腕アトム」(手塚治虫)
(別途「ゴルゴ13」は全巻保有している)

 ちなみに,作者の かわぐちかいじも団塊の世代である。個人毎に好みが違うのは当然だが,筆者の世代なら,「そーか,お前はこれを選んだか」と納得することだろう。今の若者たちはそうは行かない。同じ世代間で互いのBest 5を見せ合っても,作品名すら知らないのが普通である。単行本数千冊所有,iPadで数百シリーズを保有している学生はそう珍しくないが,年齢,性別,好みのジャンル別で,かなり多様化しているので,共通項が殆どないのが実態だ。ただし,手塚治虫は別格だから,大抵は「ブラックジャック」なら知っている。映画でなら,『ローマの休日』(53)『スター・ウォーズ』(77)なら若者でも知っているが,『カサブランカ』(42)『アラビアのロレンス』(62)『ゴッドファーザー』(72)となると急速に知名度は落ちるのと同様だ。
 さて,当の「沈黙の艦隊」である。筆者自身は,週刊「モーニング」で,連載終了(1996年)まで欠かさず読んでいたし,単行本全32巻を購入して読み直した。今も記憶に残っているのは,作品の高評価と筆者の保有を聞きつけて,職場や知人の数名(上司も女子事務員も含む)から貸してくれと言われたことである。後にも先にも,こんなことはなかった。それだけ社会的な関心事であり,これは読んでおかなければという課題だったということになる。
 同じ かわぐちかいじ作の「空母いぶき」(2014〜連載中)も政治的メッセージを込めた戦争映画であるが,先に映画化されて『空母いぶき』(19年5・6月号)として公開された。色々な意味で残念な出来映えであった。その紹介記事では,「脚本や演技に対しては熱烈ファンの個人的視点,CG/VFXは当欄の客観的視点での感想と評価を述べる」と書いている。以下,本作に関しても,そのスタンスで語ることにするので,読み比べて頂きたい。

【原作と時代背景】
 正確には,連載は1988年10月開始,1996年2月終了の約7年半で,全353話に及んでいる。ベルリンの壁崩壊が翌89年11月9日であり,東欧にはその兆しはあったものの,世界レベルでの東西冷戦終結がすぐに起きるとは,1988年には思いも寄らなかった。また,海上自衛隊潜水艦「なだしお」が横須賀沖で遊漁船「第一富士丸」が衝突し,遊漁船の乗客・乗員30名が死亡するという海難事故が88年7月にあり,一般メディアでは自衛隊への非難記事一辺倒であった。そんな中での連載開始はかなり勇気のいる決断であったと思われる(読者側はあまり気にしていなかったが)。
 その後,1990年代初めには湾岸戦争が起こり,日本は経済的負担だけで自衛隊派遣はしなかったため,厳しい国際的批判に晒された。そうしたことから,自衛隊の存在意義,国際政治との関わりの議論が盛んになり,この原作への関心も高まった。また,1980年代から90年代前半は,日米経済戦争の時代であった。日本は米国の経済的仮想敵国であり,散々嫌がらせを受けていた。そんな頃に,米国第7艦隊所属の日本の原潜が反乱を起こすという筋立てが溜飲を下げた。
 コミックが先鞭をつけた形の海上自衛隊の原子力潜水艦保有も,1980年代には政府内で真剣に検討されていたようだが,今日に至るまで実現していない。上記のなだしお事件の後遺症と冷戦終結により,導入の必要性検討が挫折したのかと思われる。一方,『空母いぶき』も戦後初の国産旗艦空母の建造がテーマだが,従来のヘリコプター搭載護衛艦を徐々の大型化して,戦闘機の離着陸可能なようになりつつある。もはや従来のディーゼル式潜水艦が時代遅れであるのは明らかなのに,国産の「原潜」が今も実現しないのは,「原子力」の3文字に対する国民の拒絶反応を気にした政治的配慮だという声もある。
 ともあれ,1988年連載開始の「沈黙の艦隊」は,潜水艦に関する詳細な知識,その操艦と戦闘に関する痛快な描写,独立国宣言や各国首脳まで登場させる壮大な構想が驚きを与えた。1コミック(たかが漫画)が,ここまで堂々と政治的発言をするというのが,驚きであった。その連載を自衛隊員の多くが毎週読んでいて,その是非を職場で議論していたというから,いかにリアリティが高く,構想も度肝を抜いていたかが分かる。1990年5月の国会で公明党の一議員から防衛庁長官(当時)に,「この漫画を読んでいるか」との質問があったという。それが,山口那津男・現代表の1年生議員時代のことであったというのも微笑ましい(出展:Wikipedia)。
 当時,海上自衛隊OBがゴーストライターではないかという噂があった。かわぐちかいじ(本名:川口開治)氏の父親は,戦争中は掃海艇の乗組員であり,川口兄弟は戦闘機,軍艦等の性能を詳しく調べて,プラモ造りに熱中していたという。元々潜水艦の性能諸元や等級も熟知している軍事オタクだったゆえに「沈黙の艦隊」が生まれたようだ。「空母いぶき」に関しては,「原案協力:恵谷治」なるクレジットが入っている。既に故人だが,自衛官ではなく,北朝鮮や旧ソ連が専門の軍事ジャーナリストである。かわぐち氏とは瀬戸内海の同じ島の出身で,小学校から高校まで同級生であったから,「沈黙の艦隊」時代から助言を受けていたのかも知れない。
 そうした画期的なコミックの「沈黙の艦隊」だが,映画化に当たっての難しいのが,時代設定である。第二次世界大戦当時の出来事ならそのままでもいいが,近未来設定の物語となると1990年代が舞台という訳には行かない。ロシアのウクライナ侵攻で,核戦争の脅威,国連の機能不全が明らかになった今となっては,現代に舞台を移し,そこからの近未来予測にならざるを得ない。幸いにも(?),日本の海事はまだ原潜を保有していないので,原作の時代を約30年シフトするだけで通用する訳である。その前提の下に,どんな『沈黙の艦隊』が登場するのかを楽しみにした。

【物語の概要と原作の再現度】
 物語は,海自の潜水艦「やまなみ」が米国原潜に衝突して沈没・圧潰し,海江田四郎艦長(大沢たかお)はじめ乗員76名全員が死亡するという事故から始まる。それを不審に思ったディーゼル潜水艦「やまなみ」の艦長・深町宏(玉木宏)は水,側長の南波曹長(ユースケ・サンタマリア)に音紋テープを分析させ,それが偽装事故であったことを突き止める。秘密裏に進行していたのは,日本初の高性能原潜「シーバット」が建造され(写真1),米国第7太平洋艦隊所属の新型潜水艦となり,「やまなみ」の乗員全員が任務に就くという計画であった。


写真1 佐世保で建造された「シーバット」。大きな船体は勿論CG。

 搭乗訓練後の試験航行中に,「シーバット」は突如音響魚雷を米軍原潜群に発射してソナーマンの耳を麻痺させ,急速無音潜航して海中で消息を絶った。これを反乱逃亡と見做した米軍は対潜哨戒網で「シーバット」を追跡するが,第7艦隊中央に位置する空母ドナルド・レーガンの正面に浮上した「シーバット」(写真2)は,核弾頭装備ミサイルを搭載した独立戦闘国家「やまと」であると宣言する。そこから戦闘が開始され,海底起伏を熟知する海江田は巧みな操艦で米国原潜を航行不能にし,自ら友好国と認めた日本と契約を結び,防衛力を提供すると宣告する……。


写真2 急速浮上し,第7艦隊中央の空母の正面に姿を現わす

 ほぼ原作に忠実なストーリー展開であり,登場人物数は限られているが,名前は原作のままである。米国艦隊の原子力空母名は,原作では「カール・ビンソン」であるが,現状に合わせて「ドナルド・レーガン」に変えている。一方,「やまなみ」を偽装工作で衝突させた相手は,原作ではソ連の原潜であるのに,本作では米軍の原潜になっていた。
 この変更を含め,最初のマスコミ試写を観た段階では,筆者は大いに不満であった。「やまと」と対峙するのは,ずっと米軍である。なぜ,ロシアの原潜も登場させ,その原潜群を撃破する原作通りの展開にしないのか,これでは『空母いぶき』と同じく政治的配慮による矮小化ではないか。原作では,国内の政党の4党首にやまと対応の政策をTV討論させている。また,国際社会にも核の脅威を見せつけ,米・露・英・独・仏・中の各国首脳に激論させた上で,海江田は国家元首として国連総会の議場で登壇し,核兵器廃絶と世界政府設立を訴える…。注意したいのは,連載開始後にソ連邦は崩壊したので,その後はロシアを主権国家として登場させていることだ。また,皮肉にも,やまとに対して強硬なのは米国大統領であり,ロシアの大統領はやまとの主帳に理解を示し,米国の横暴を諌めようとしている大国として描いている。既にロシアのウクライナ侵攻で世界政治が大混乱に陥っている今,今回の映画化の意義は,この壮大な物語を現代風にどうアレンジするかだろう。ところが,国際社会に語りかける部分は全くなかった。
 そもそも7年半の長期連載の原作を2時間弱の映画で描くことは容易ではないが,それでも物語を圧縮し,国連総会での場面くらいは登場すると期待していたが,見事に裏切られた。かわぐちかいじが描いた構想,即ち海江田艦長の志には触れずに終わってしまった。改めて原作を詳細に点検した結果,この映画は32巻中の3巻目の半ばまでしか描いていないことを確認した。それでは,「沈黙の艦隊」の序章を描いただけで,まるで予告編かせいぜい第1話である。よって,この映画がヒットすれば,いずれ続編が作られるものと好意的に解釈し,この脚本の範囲内での出来不出来を評価することにした。
 以前から「潜水艦映画に外れなし」と言われているが,名作の誉れ高い『Uボート』(81)『レッド・オクトーバーを追え』(90)『クリムゾン・タイド』(95)とまでは行かなくても,当欄で紹介した上記の『ローレライ』や『U-571』(00年9月号)『K-19』(02年12月号)『ハンターキラー 潜航せよ』(19年3・4月号)『グレイハウンド』(20年9・10月号)等と遜色ないかを比べてみたい。そう考えて,2度目の試写を観た評価結果が以下である。

【キャスティングと演技】
 まずメインキャストの海江田と深町である。かつて仲間内で,この原作を映画化するなら,誰を主役にするかを議論したことは既に述べた。その時の人選には,海江田役は渡辺謙か中井貴一,深町役は伊勢谷友介か反町隆史の名前が出ていた。本作の海江田四郎役に大沢たかおは,絶妙のキャスティングだと思う。頭脳明晰,冷静沈着にして,行動は大胆という艦長を見事に演じている(写真3)。常に背筋を伸ばして気品があり,モーツァルトの交響曲を流すという行動にもマッチしている。一方の深町艦長は,対照的にワイルドな性格の熱血漢である。玉木宏では線は細いのではと懸念したが,原作のイメージを損ねることなく,こちらも好演の部類であった(写真4)


写真3 冷静で気品ある海江田艦長を演じる大沢たかお

写真4 ワイルドな深町艦長役は,玉木宏

 キャスティングの目玉は,原作の2人の男性役に,女優を起用したことだ。曽根崎防衛大臣に夏川結衣,「たつなみ」の速水副長に水川あさみを配している(写真5)。原作から35年も経った現代であるから,女性比率を増やすのは現実的で妥当と言える。ただし,両者とも演技力を問われるほどの重い役ではないので,ここでは出来不出来は論じない。安倍政権にはロクでもない女性防衛大臣がいたことを思えば,まあこれでも十分かと思える。


写真5 (左)防衛大臣(夏川結衣), (右)「たつなみ」の副長(水川あさみ)

 一方,目を覆うばかりだったのは,総理大臣・竹上登志雄(笹野高史)と内閣官房参与・海原大悟(橋爪功)の2人の描き方だ。いくら総理が温厚で気弱な人物とはいえ,この頼りなさは酷過ぎる。これじゃ定年後再雇用の守衛レベルだ。影の総理の海原はもっと不気味な妖怪のはずが,痴呆寸前のただの後期高齢者だ。2人は演技力のある助演男優のはずだから,明らかに脚本が悪い。この脚本家は,日本の現職首相はこの程度のレベルだとバカにしているのだろうか?
 監督は,『水曜日が消えた』(20年Web専用#3)『ハケンアニメ!』(22)の吉野耕平。理系の大学院卒で,CGクリエーター出身のようだ。自らのオリジナル脚本の『水曜日が消えた』ではVFXシーンの使い方も効果的で,当欄は「才能ある監督で次回作が楽しみだ」と評価している。ただし,まだ長編監督3作目で,原作ありのこれだけの大作は荷が重いのではと懸念した。演出力はなかなかのものだと感じるが,上記のキャスティングや後述のVFXのように,色々な面で周りに遠慮気味であったのではと感じた。

【美術セットとCG/VFX】
 ■ 潜水艦映画の場合,美術セットの要は艦内の設備や機材とその操作風景である。内閣官房での密談や防衛関係閣僚会議の場面のセットなどは,どうでも良い。本作の場合,「やまなみ」「たつなみ」等の旧式潜水艦の艦内と最新の「シーバット」の艦内は,その雰囲気もきちんと描き分けていた。「シーバット」の設備は,自衛隊の最新の艦内を訪問し,それを参考にデザインしたという(写真6)。まずまず大人しいデザインだが,現実はこんなものであり,SF映画の宇宙船内のような奇抜さは,むしろ不自然だ。一方,「たつなみ」艦内はさすがに旧式だが(写真7),現役の艦であるなら,ここまで古いのかという気もした。原作者かわぐちかいじ氏が撮影現場を訪れて,これらのセットを見学している(写真8)。美術担当スタッフは緊張して,しっかり磨き上げたことだろう。艦内の発令所は,艦の浮上や潜航時に傾くことを表現するのに,鉄筋のセットをクレーンで吊して傾けたという(写真9)。なかなか芸が細かく,これは十分及第点だ。


写真6 「シーバット」の艦内は現役の自衛隊艦を参考にしてデザインされた

写真7 「たつなみ」の艦内は狭く, かなり旧式

写真8 原作者(かわぐちかいじ)が撮影現場を見学

写真9 発令室部分は,クレーンで吊るして傾けた

 ■ 海自の基地のシーンでは,現役の自衛隊の船舶の撮影が許可されたようだが,その他の空母,戦艦,潜水艦,哨戒機は当然CGであり,VFXシーンは多数登場する。筆者の大きな不満は,その殆どがスチル画像として公開されないことである。とりわけ,海中での魚雷発射,空から投下する爆雷の爆発,対潜ミサイルの動き,潜水艦の操艦等々,いくつも見どころはあったのに,海中のシーンが全く提供されない。潜水艦自体の形状は極めてシンプルで,CG描画の対象としては極めて易しいが,それだけに海中の戦闘シーンの迫力を表現するのは,CG演出のセンスが要る。CG/VFXの主担当のオムニバスジャパンは『ローレライ』にも参加していたので経験はあるはずだが,20年近くも経つと,メンバーも殆ど入れ替わっていることだろう。描画そのもののクオリティは低くなかったが,もう少し誇張して,分かりやすくした方が良かったと感じた。かわぐち作品は,この誇張が巧みで引き込まれる。
 ■ 浮上した洋上の潜水艦の画像が若干あるが,いずれも艦橋部分は似た形なので,実はきちんと識別できない(写真10)。「やまなみ」「たつなみ」「やまと」はしっかり描き分けていたのだろうか? それに比べて,空母「ロナルド・レーガン」は堂々とした姿をCGで描けている(写真11)。VFX副担当の白組は,山崎貴監督作品『永遠の0』(14年1月号)や『アルキメデスの大戦』(19年7・8月号)で空母も戦闘機も描き慣れているから,さほどの苦労も要らなかっただろう。最近の他作品と比べても,クオリティは遜色ない。ただし,洋上に関しても,もっと派手な動きや激しい戦闘を描いて,大作らしいボリューム感を出して欲しかったところだ。吉野監督はVFXの効用は熟知しているはずだから,製作費の制約から,少し遠慮して控えめの演出にしたように思えた。


写真10 CGで描くのは容易だが,どれも似ていて識別できない

写真11 空母ロナルド・レーガンの堂々たる姿。好い出来だ。
(C)かわぐちかいじ/講談社 (C)2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.

【総合評価】
 既に述べたように,壮大な構想の原作を,その冒頭の僅かな部分だけの映画化に限定している。原作を全く知らない若手の観客が予備知識なしに本作を観た場合,何とか「潜水艦映画に外れなし」を外さずに済んだと思う。それは海江田艦長を演じる大沢たかおの気品と,潜水艦の操艦の見事さを描いた海中アクションの面白さによるものだ。
 原作の終盤のエッセンスを盛り込んだ続編が登場することを,筆者はまだ諦めていない。国内資本ならこれ1作で終了する可能性が大だが,バックにAmazonスタジオが付いているなら,シリーズものとして国際的に配信する可能性も有り得るかと期待している。3部作にするなら,2作目はロシアや中国の原潜を操艦の妙で一泡ふかせ,核の脅威で嚇し続ける痛快映画を,3作目は国連総会で海江田がしっかり世界に訴えて大団円を迎える映画を希望しておきたい。「こんな映画を作るからには,実は日本は秘密裡に核開発を終えていて,既に自衛隊は核弾頭を配備し終えているのではないか」と,ならず者国家に思わせるくらいで丁度よい。

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