|
| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ウォルト・ディズニー映画がPixar社と作った世界初のフルCG長編アニメ『トイ・ストーリー』(95年11月公開,96年4月号で紹介)は,予想通り映画史に残る作品となった。一度モデリングしてしまえば何度でもギャラなしで使える主役の2人,ウッディとバズは,その後あちこちで見かける人気キャラになっている。 となれば,ディズニーがそれに続くフルCG作品を計画するのは当然であるし,それを知って退社したカッツェンバーグが,負けてなるものかとドリームワークスにCG作品を持ちたがるのも理解できる。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
主役はCGのオモチャ達 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
まず,98年7月10日公開の『スモール・ソルジャーズ』は,フルCGではなく,実写 とCGの合成が中心のSFX作品である(写 真2)。一般にはあまり話題にならず,興行的にも成功したとはいえない(98年度全米興行成績41位 )が,CG界では話題を呼んだ意欲作である。
CGの担当は老舗ILMだが,14体のキャラクタ・デザインはスタン・ウィンストンで,多数の実物模型やパペット,アニマトロニクスも製作・活用された。 CGのオモチャを主役にするというのは,明らかに『トイ・ストーリー』を意識したと思われるが,実写 とCGの合成,精巧な実物模型との区別できないCGのディテールは,『トイ・ストーリー』とは別ものだという主張が感じられる。 コマンド・エリート達が手にする120種の武器や,戦車・ヘリに至るまで,すべて克明にモデリングしたというから,ILMとしてもかなりのエネルギーを費やしている。意図的にアウトフォーカスする技術も導入され,これがフォトリアリティを高めている。この映画のエンド・ロールを見て特徴的だったのは,まず最初にILMのVFX技術者の名前が出て,それからキャスト(俳優)の名前が出てくる。その後で,他のスタッフ,パぺッター,スタントマン,サウンド関係者が続くという異例の順序である。それだけ,この映画の主役は,ゴーゴナイトとコマンド・エリート達のCGだということを強調しているのだろう。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
3年間の進歩の跡 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
『アンツ』と『バグズ・ライフ』は,ともに蟻の社会を描いたフルCG長編アニメ作品である。蟻(ant)のZの自立を描いた『アンツ(ANTZ)』に対して,蟻の社会を搾取するバッタの集団に立ち向かう主人公フリッツと仲間たちの物語『バグズ・ライフ』は,黒沢作品『七人の侍』をベースにしている。 『アンツ』が98年10月2日公開,『バグズ・ライフ』が同年11月20日公開であるから,『バグズ・ライフ』の計画を知っていたカッツェンバーグが『アンツ』を企画し,意図的に先に完成させたと言われても仕方ないだろう。結果は,98年度全米興行収入ランキング18位(8,900万ドル)対9位 (1億3,600万ドル)で,こちらも後発のディズニー側に軍配が上がった。
大きな称賛を得たのは,蟻の大群集の表現である。 『バグズ・ライフ』でもそこそこの数の集団が描かれていたが,『アンツ』の群集はパンパではない。 最大6万匹はいるというシーンは圧巻である。単に数を描き込めばよいだけでなく,それぞれの動きがあり,かつ全体としての動きにリアリティがなくてはならない。小群集用と大群集用に2種類のプログラムが用意されたという。 この他,湖や洪水など,水の処理でも見事の表現力を発揮している。そのために,流体力学の専門家を雇ったという。この技術では明らかに『バグズ・ライフ』のPixarより勝っているといえるだろう。ディズニーが翌年の『ターザン』で美しい滝のシーンを見せたのは,この劣勢を挽回したとアピールしたかったからだと考えられる。 一方の『バグズ・ライフ』の冒頭でまず度肝を抜かれるのは,木と岩の素晴らしい表現である。続く草原のシーンも見事で,ものすごいポリゴン数である。屋外シーンをここまで微妙かつ美しく描いているのかと驚かされる。『トイ・ストーリー』が屋内中心の物語展開であったから,意図的にその後3年間の進歩を見せつける方法をとったのだろう。 映画全体での計算量は,約12倍になったという。コンピュータの進歩を考えれば当然の帰結であるが,それが直截的に映像のクオリティに反映されているのを目の当たりにしたことになる。まさに,本シリーズ「コンピュータイメージフロンティア」が取り上げるべき対象である。 1年後の1999年の感謝祭休日には『トイ・ストーリー2』が公開され,秋の興行収入記録を塗り替える大ヒットとなった。こちらは,どんな発展を見せてくれるのか楽しみである。カッツエンバーグの対抗心が新たな技術的進歩や表現力向上を生んだとしたら,ファンにとっては悦ばしいことである。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
() | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ディズニー・アニメはサービス精神旺盛 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
掘り出し物のスモール・ソルジャーズ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
▲ Page Top | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||