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O plus E誌 2019年7・8月号掲載
 
 
チャイルド・プレイ』
(オライオン・ピクチャーズ /東和ピクチャーズ配給 )
      (C) 2019 Orion Releasing LLC. CHILD’S PLAY is a trademark of Orion Pictures Corporation.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [7月19日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開中]   2019年6月27日 東宝試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  リブート作はAIでハイテク化した人形が暴走する  
  もう1本取り上げよう。CG/VFXの利用は殆どないのだが,上述の『トイ・ストーリー4 』との対比で是非語っておきたい作品だ。1988年に公開された同名のホラー映画は人気を博し,シリーズ化され2017年までに7本が製作された。本作はそのリブート作品である。
 第1作で,刑事に射殺された悪人の怨念が,その場にあった人形に宿り,残忍な殺人を繰り返す「殺人人形チャッキー」となるという設定である(写真1)。ある種の悪霊もののホラー映画であるが,少年の姿をした人形であり,壊しても,焼いても,ソンビのように復活するというアイデアが新しかったのだろう。続編群では,バラバラに砕いても,溶かしても復活する。魂が別の人形に乗り移ったりもしている。今回,第1作をDVDで見直したが,映像的には少し古いが,内容的には今でも通用する,しっかりしたホラー・サスペンスである。
 
 
 
 
 
写真1 これが旧作(88)に登場したチャッキー。いかにも殺人鬼。
 
 
  リブート作である本作では,悪霊という設定はなくし,AI機能を搭載したハイテク人形(写真2)が意志をもったかのように暴走し,凶暴化して殺人を犯すという新しい設定で登場する。Wi-Fiを使ってスマホ・アプリから操作でき(写真3),高解像度画像認識,音声対話機能を有していて,機械学習機能があるので,どんどん自己組織化し,条件によって凶暴な人間のように振る舞ってしまう訳である。呼びかけて反応するAIスピーカーや,最新のペット型ロボットの自律行動機能から想像すれば,有り得るなと感じてしまうのがミソである。何やら,IoTやAI社会への警告のようなホラーだ。それじゃ,ロボット3原則のような禁止事項を内蔵しておけばいいと思うが,工場出荷時に,上司に反発した従業員が「行動は無制限」に設定してしまったという前置きがついている。見事だ。
 
 
 
 
 
写真2 商品名「バディ」を,アンディ君はチャッキーと名付ける
 
 
 
 
 
写真3 スマホでの操作画面。Wi-Fi経由でクラウド接続もドローン操作もできる。
 
 
  マシンの叛乱や暴走は,昔からSF映画でよくあるパターンだが,少年に与えられた人形が凶暴化するという設定と最近のAIブームを上手く組み合わせた点が秀逸である。本作の製作は『IT/イット “それ”が見えたら,終わり。』(17年11月号)のセス・グレアム・スミスとデヴィッド・カッツェンバーグで,監督はラース・クレヴバーグが起用された。先に短評欄の『ポラロイド』を手がけており,それが監督デビュー作だ。
 アンディ少年役は『ライト/オフ』(16年9月号)のガブリエル・ベイトマンで,母カレン役には『天使たちのビッチ・ナイト』(17)のオーブリー・プラザが起用されている。そして,人形チャッキーの声は『スター・ウォーズ』シリーズのマーク・ハミルが担当している。ジェダイの騎士ルーク・スカイウォーカーのフォースでこの人形を動かしてはいる訳ではないが…(笑)。
 悪霊憑きではないのに,持ち主に反抗するようになるのは,最初は楽しく遊んでくれたのに(写真4),次第に可愛がられなくなったことを,人形が恨みに思うようになるのがきっかけだ。「恨み」でなく,淋しく思うだけなら,これは『トイ・ストーリー』シリーズのテーマと同じではないか! 果たせるかな,本作の米国公開は『トイ・ストーリー4』と同じ6月21日である(日本では1週間遅れ)。これは意図的に同日にして,人形もの同士の対決を演出したのだと想像する。ファミリーはあちら,ホラー好きはこちらという訳なのだろう。
 
 
 
 
 
写真4 まだ前半は素直なバディだったのだが…
 
 
  何と,少年の名前も同じアンディ君である。こちらも意図的に合わせたのか? いや,旧作は1988年で『トイ・ストーリー』(95)よりもかなり先である。これは,アイデアの原点の短編『ティン・トイ』(88)と同じ年だが,この短編の赤ん坊には名前がなかった。偶然なのかも知れないが,トリヴィアとしてはネタになる。
 さて,人形のチャッキーだが,全くCGは利用せずに,7体のアニマトロニクス(リモコン制御のパペット)を使用したという。CGで容易に表現できるはずだが,いくら頭脳は進化しても,あくまで物理的には人形であるという設定なので,これは妥当な選択だ。表情は旧作よりも豊かになっているが,いかにも人形のそれだ(写真5)。動きのぎこちなさも人形的である。
 
 
 
 
 
写真5 意図的に操り人形然とした表情を採用
(C) 2019 Orion Releasing LLC. CHILD'S PLAY is a trademark
of Orion Pictures Corporation. All Rights Reserved.
 
 
  このタイプの人形は,カスラン社の新製品「バディ人形」と呼ばれていて,劇中では社長が登場するTV-CMが流れる。この社名をネット検索したら,日本語のホームページが存在した。創業者の挨拶,他の商品一覧,コンタクトのページまである(写真6)。一瞬,実在の会社なのかと思ってしまうが,勿論,映画の宣伝用である。Amazonで検索しても出てこないから,念のため(笑)。  
 
 
 
 
写真6 「カスラン社」で検索したら,日本語ホームページが存在した
 
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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