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O plus E誌 2018年11・12月号掲載
 
 
ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』
(ワーナー・ブラザース映画 )
      (C) 2018 Warner Bros. Ent., All Rights Reserved.
Harry Potter and Fantastic Beasts Publishing Rights (C) J.K. Rowling

 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [11月23日より丸の内ピカデリー他全国ロードショー公開中]   2018年11月13日 梅田ブルク7[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  1作目とはガラリと変わったダークな作風に  
  2年前の『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(16)の続編であり,シリーズ2作目である。大ヒット作の『ハリー・ポッター』(以下,単にハリポタ)シリーズのファンの支持も得られ,既に「ファンタビ」なる略語も生まれている。前作は,主人公の魔法生物学者ニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)がトランクに入れて持ち歩く魔法動物が可愛く,物語は楽しく,CG/VFXも高いレベルであった。当欄は文句なしに激賞して,評価を与えた。
 ところがこの続編は,打って変わって暗い。前作やハリポタ・シリーズの知識がないと理解しづらい。加えて,物語が終盤に二転三転するが,その意味は分かりやすいとは言えない。帰路に感想を求めたら,いつもマスコミ試写会場で顔を合わせる同業の連中からは,酷評ばかりだった。前作を激賞した身としては,どうやって本作を庇えばいいのだろうか? いや,困った,困った。
 監督は,前作に引き続きデイビッド・イェーツ。主役のニュート以外で,ティナとクイニーの姉妹,陽気なマグルのジェイコブの3人も継続登板で,この4人は物語の舞台がイギリス,フランスに移っても登場する。
 本作では,彼らよりもっと大きな存在で,人気俳優が2人登場する。1人は,前作の最後に少しだけ顔を見せたグリンデルバルドで,ジョニー・デップが演じている。彼が「黒い魔法使い」だ。もう1人は,ハリポタ・シリーズのダンブルドア校長の若き日の姿で,ジュード・ロウが配されている。彼がニュートのホグワーツ時代の恩師という設定である。この2人の演技は格調高かった。
 当初,3部作の予定が全5作に変更されたのだから,物語は長丁場に決まっている。主人公を紹介する1作目に対して,2作目で悪役が本格登場するのだから,彼が本作で倒される訳はない。「ダンブルドア vs. グリンデルバルド」の因縁の対決で,弟子や仲間を巻き込んだ闘いになるのは必定だ。その構図や強敵を明確化するのが本作の役割と理解していれば,何も難しくはない。
 敢えて言おう。物語の構想も本作の筋立ても悪くない。お粗末なのは脚本だ。映画脚本の素人である原作者のJ・K・ローリングに脚本まで書かせるから,観客がついて行けないシナリオになってしまっただけだ。誰も大ベストセラー作家に,それを言えなかったのだろう。
 以下,当欄はCG/VFXに関する感想だけを述べる。
 ■ 冒頭から,もうフル回転でCGの出番がある。高層ビルから黒い馬車が跳び出し,空を飛ぶ。後でこれがNYから逃亡したグリンデルバルドで「黒い魔法使い」だと分かる。全員が魔法使いではないものの,マグル(ノー・マジ)は殆ど登場しないから,魔法が多いのも当然だが,ちょっと使い過ぎの気もする。新聞や雑誌の写真が動くのは前からあるが,今度は彫像の上半身が動く。
 ■ シリーズ名が「ファンタビ」だから,「魔法動物」の登場をウリするのは仕方ないが,前宣伝で期待を持たせ過ぎだ。お馴染みのニフラー(写真1)やお気に入りのボウトラックル(写真2)も再登場する。新登場は,可愛いベイビー・ニフラーや,ニュートを乗せて水中移動するケルピー(写真3),猫科の獰猛な大型獣ズーウー(写真4)等々だが,いずれも出番はそう多くないし,必然性もない。マニアックなファンのために登場させている感もある。
 
 
 
 
 
写真1 相棒のニフラーは終盤で大きな役割を果たす
 
 
 
 
 
写真2 お気に入りのボウトラックルもしかと再登場
 
 
 
 
 
写真3 新登場のケルピー。色々な姿にも変身できる。
 
 
 
 
 
写真4 一日千里走るという猛獣のズーウー。存在感は随一。
 
 
  ■ 1920年代を想定した街や建物の描写はハイレベルだ。NYやロンドン(写真5)は定番だが,本作で登場する当時のパリの街の描写は上出来だ(写真6)。フランス魔法庁の円形ドームの建物や装飾には息を飲んだ(写真7)。いいデザインだ。ニュートらが母校の「ホグワーツ魔法魔術学校」(写真8)に向かう頃から,ハリポタ・シリーズで既視感のあるシーンが続出する。ただし,湖水地方に聳える姿や長い橋のような通路(写真9)は,同シリーズにはなかった光景だ。一方,ハリーたちが学んだ大広間,生徒達がクイディッチするシーンの登場は,単なるファン・サービスだ。
 
 
 
 
 
写真5 霧のロンドンの夜の光景。好い出来だ。
 
 
 
 
 
写真6 Rodeo FXが再現した1920年代のパリ。これも好い出来。
 
 
 
 
 
写真7 フランス魔法省庁舎の円形ドームのデザインは出色
 
 
 
 
 
写真8 懐かしのホグワーツ魔法魔術学校へと向かう
 
 
 
 
 
写真9 ホグワーツにこんな場所があったのかと驚くアングルからの光景
(C)2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
Wizarding World TM Publishing Rights (C) J.K. Rowling
 
 
   ■ クライマックスの舞台は,パリのフラメルの自宅地下にある円形ホールだ。こんな大型セットは作れないから,一部だけ実物セットで,残りはCG製だろう。ここでグリンデルバルドが大演説を打ち,約4,000人の魔法使い達が次々と「姿くらましの術」で去ってしまう。ここで彼の放つ白い炎の描写が見事だった。技術的問題よりも,見せ方に新しさを感じる。プレビズ技術が効果を発揮していることだろう。CG/VFXの主担当は前作同様Framestoreで,副担当のDNEGとRodeo FXの他に,Image Engine, Method Studios, Lola VFX等も参加している。プレビズ担当は,Third Floor, Proof,Nvizageで,もう複数社体制が当たり前になっている。  
    
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
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