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O plus E誌 2017年8月号掲載
 
 
スパイダーマン:
ホームカミング』
(コロンビア映画/SPE配給)
      (C)Marvel Studios 2017. (C)2017 CTMG.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [8月11日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開予定]   2017年7月11日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  若々しく,まだ仮免運転中のピーターが魅力的  
  楽しみにしていた新シリーズの始動だ。『スパイダーマン』(02年6月号)『アメイジング・スパイダーマン』(12年7月号)に続く3度目のシリーズ,2度目のリブートである。米国公開は7月7日だったので,本号への掲載が危ぶまれたのだが,大阪での完成披露試写が7月11日夜にあり,何とか滑り込みセーフだった。
 アメコミ作品の実写映画化は,21世紀に入り,CG技術の映画利用が本格化した頃から急増している。それでも,わずか10数年の間に,2度も主役を入れ替えて3度目のシリーズというのは珍しい。素顔のピーター・パーカーが高校生という設定のため,いつまでも同じ主演男優を使っていられないためだろう。
 2009年にマーベル・コミックスがディズニー傘下に入り,「マーベル・シネマティック・ユニバース」として続々とスーパーヒーロー映画が同配給網から生まれていることは何度も書いた。大半が充実した良作であり,後年,映画史上で一時代を築いたと言われることだろう。同じマーベル・ヒーローでも,それ以前に映画化権を有していたコロンビア映画は『スパイダーマン』シリーズを,20世紀FOXは『X-Men』シリーズを単独で製作してきた。ところが,驚いたことに,昨年ディズニー配給の『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16)にスパイダーマンが登場したのである。元のコミックでは実現しているクロスオーバーだから何の不思議もないのだが,ようやく映画でもそれが実現した訳である。
 そうなると,これは相互乗入れに発展するなと予想できた。ピーター・パーカーがトニー・スターク社長を尊敬し,「キャプテン・アメリカ組 vs. アイアンマン組」の戦いで後者に属していたので,返礼として,この新シリーズに登場するのはアイアンマンだと想像するのが自然である。これは,スバリ当たっていた。予告編には『シビル…』の続編と思わせるシーンが含まれているし,堂々とアイアンマンの登場を予告している(写真1)。 
 
 
 
 
 
写真1 相互乗入れの証しとして,アイアンマンが登場
 
 
  本編も,『シビル…』の直後で,ピーター(トム・ホランド)がアベンジャーズ・チームに加わることを熱望し,スターク社長(ロバート・ダウニー・Jr)からの次のミッションを心待ちするところから始まる。即ち,本作では既にスパイダーマンは誕生していて,蜘蛛に刺されるシーンも叔父の遺言シーンもない。まだ若々しい高校2年生であり,スーパーヒーローとして未熟な彼が次第に成長して行く過程が描かれている。
 監督は,若手有望株のジョン・ワッツ。長編は3作目だが,35歳でこの大作のメガホンをとるのは大抜擢だ。悪役のバルチャー役には,マイケル・キートンが配されている。1シーンだけだが,スターク社長の愛人ミス・ポッツ(グウィネス・パルトロー)が登場するのが嬉しい。キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)は,教育用ビデオの画面の中でだけ登場する。
 以下,当欄の視点でのコメントである。
 ■ まだ補助輪付きで活動するピーターの振る舞いが抱腹絶倒だ。スターク社長から贈られた数百万ドルもする新しいスーツの機能に目を見張る。アイアンマン・スーツのスパイダーマン版だ。AI機能,AR機能満載で,ネット時代らしいハイテク技術の近未来像が描かれている(写真2)。例えば,胸のマークから外れて単独飛行できるのは,小さな蜘蛛状の「偵察用ドローン」(写真3)である。
 
 
 
 
 
写真2 スターク社長から贈られたスパイダーマン・スーツには,こんな機能も
 
 
 
 
 
写真3 胸のマークから分離した偵察用のドローン
 
 
  ■ コメディタッチで進行する中で,大きな見せ場を3回入れて,映画文法の基本形を守っている。まずは,ワシントン・モニュメントでの大騒動だが,スーツの新機能を活かしたアクション・デザインが秀逸だ(写真4)。続く中盤では,大型フェリー上での攻防が2度目の見せ場だ。もはやVFXで何でも描ける時代だが,黄色いフェリーが真二つに割れるシーンは壮観だった(写真5)
 
 
 
 
 
 
 
写真4 ワシントン・モニュメントの出来事では,3D上映を意識したこんなシーンも続出
 
 
 
 
 
 
 
写真5 真二つに割れたフェリーを必死で支えるが(上),最後はアイアンマンに助けられる(下)
 
 
  ■ クライマックスは,スターク社を飛び立った武器輸送中の飛行機をバルチャーが襲うシーンだ。マンハッタン上空での攻防,墜落をめぐるシーケンスは,もっと延々と続くかと思ったが,少し短めだったことに,むしろ好感が持てた。CG/VFXの主担当は,勿論Sony Pictures Imageworksで,他にDigital Domain,Luma Pictures, Method Studios, Trixter, Cantina Creative, ILMと続く。最近多いパターンだが,老舗ILMがその他大勢の中に頻繁に名を連ねているのが感慨深い。
 ■ 敵役バルチャーのマイケル・キートンの演技は存在感があった。翼男の様は,かつての『バットマン』(89)の勇姿を彷彿とさせる(写真6)。武器のパワーは強烈だが,さほどの悪人と感じられなかったので,続編で味方として再登場させる可能性を残していると見てとれた。  
 
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写真6 敵役として登場する翼男のバルチャー
(C)Marvel Studios 2017. (C)2017 CTMG. All Rights Reserved.
 
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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