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O plus E誌 2001年10月号掲載
 
 
star purasu
『オー・ブラザー!』
(タッチストーン・ピクチャーズ/ギャガ配給)
 
       
  オフィシャルサイト[日本語][英語   (2001年7月2日 ギャガ試写室)  
         
     
  個性派兄弟作品が描くアメリカン・ノスタルジー  
   この時評欄で取り上げるのはVFX多用作品だけだが,これを機に同監督や主演俳優の過去の作品も観るように努めている。かつて映画青年で話題作も小作品も見まくった評者には,80年代以降は人並みの大作しか観る余裕のない空白の時代だった。今それを埋めるべく,新作旧作合わせて年90〜100本のペースに戻している。
 本作品のコーエン兄弟(兄ジョエル・コーエン監督,弟イーサン・コーエン製作,共同脚本執筆)はこの時代に台頭した映画人だ。インデペンデント系出身で,マニア好みのパロディ,ウィットに富んだセリフ,ひねりを利かした映像表現とやらを,この機会におさらいした。なるほど,絵作りはうまいものだ。
 カンヌ映画祭で3冠(最優秀作品賞,監督賞,主演男優賞)に輝く『バートン・フィンク』(91),アカデミー賞で脚本賞と主演女優賞をとった『ファーゴ』(96)は,異才の異才たる所以を発揮していた。本作品も,昨年度アカデミー賞で脚本賞と撮影賞にノミネートされた。
 原題は『O Brother, Where Are Thou?』。アメリカ南部を描いた名作P・スタージェス監督の『サリバンの旅』(42)で,主人公の映画監督が作ろうとしていた社会派映画の題名だというが,そこまで知っているマニアはわずかだろう。むしろこの邦題からは,コーエン兄弟の新作であることセールスポイントにしたい配給会社の意図が読み取れる。
 主演は『パーフェクト ストーム』のジョージ・クルーニー。手錠を繋がれたまま逃げる3人の脱獄囚の他の2人は,ジョン・タトゥーロとティム・ブレイク・ネルソン。ともに監督経験もある個性派脇役俳優だ。
 ストーリーの下敷きは,何と「構想なんと3000年」のキャッチコピーが示すように,古代ギリシャの詩人ホメロスの「オデッセイだ」。これを1930年代のアメリカ南部を舞台に,3人組の織りなすロード・ムービーに仕挙げている。逃亡中に吹き込んだ曲が大ヒットして歌手デビューするというオマケがつくように,カントリー,ブルース,ディキシーなど南部色の濃い懐かしの音楽が随所にちりばめられ,ミュージカルとしても楽しめる。
 視覚効果はといえば,シネサイト社の実験システムで撮影済フィルムを全編ディジタル化し,編集・合成から色調の調整までコンピュータ処理したという。
 
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色褪せた乾いた色調で1930年代を表現
 
     
  ディジタルVFXはまだ修業中  
 
私はこの兄弟の作品は初めてです。どうも,こういう個性派の表現とやらには苦手で,馴染めません。
同じ兄弟でも『マトリックス』のウォシャウスキー兄弟とは,だいぶ感性は違いますね(笑)。
評論家好みというか,映画同好会向きです。
ま,色々手の込んだ表現が好きなんでしょう。視覚効果はどう感じましたか?
南部の綿花畑を逃げるシーンは,わざと色褪せた感じにしてあるのですね。エンディングで徐々に色がなくなって行くのも,ディジタル処理ならではですか。
この絵(写真)は彩度を落としただけですが,緑だけを強烈に残してあるシーンも印象的でした。劇中での映画館の中の映画上映の部分も,ディジタル合成でしょう。
突如襲ってくる洪水はいかにもCGですね。水中に浮かんでいる犬も,いかにもです。
このシーンは今年のSIGGRAPHにも入選してました。特筆すべき出来とは思えませんが,インデペンデント系の彼らにも手の届く技術になったということです。映像表現を技法を知り尽くした兄弟だそうですが,VFXに関しての技は,まだ修業中という感じですね(笑)。
映像より音楽の方が断然良かったです。
ブルーグラス・ミュージックの粋を集めてましたが,あなたの世代には余り馴染みがないでしょう。
「ユー・アー・マイ・サンシャイン」くらいは知っています。
この映画で使われてように,あの歌はもともと選挙運動用の歌だったそうです。
3人組の「ずぶ濡れボーイズ」は,吹き替えかと思ったら,本人たちが歌っているみたいですね。
デルマー役のティム・ブレイク・ネルソンの歌の上手さは驚きでした。どう見てもコーエン兄弟映画常連のスティーブ・ブシェミの役どころなのに,彼を起用したのは歌唱力のせいかもしれません。
 
   
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