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O plus E誌 2016年12月号掲載
 
 
メン・イン・
キャット』
(ヨーロッパ・コープ/ アスミック・エース配給)
      (C) 2016 - EUROPACORP - All rights reserved
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [11月25日よりTOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー公開中]   2016年11月6日 サンプルDVD観賞
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  オスカー男優が猫に変身する楽しいコメディ  
  正月映画を前にメイン欄で取り上げる作品は少なく,VFX大作『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』も,数日差で試写が間に合わなかった。よって,残るは少し軽めの本作だけである。
 大企業の創業者でワンマン社長が突然猫に変身してしまい,その後,猫の目線で物語が進行する。となると,主人公は猫であり,当然CG/VFXの出番である。ジョークだらけのオフザケ映画だが,題名からしてそうだ。当欄の読者ならすぐに『メン・イン・ブラック』シリーズを想い出すことだろう。監督が同シリーズのバリー・ソネンフェルドだというので,邦題はそれをもじっている。このため「メン」と複数形になっているが,変身するのは社長役のケヴィン・スペイシーだけである。原題は『Nine Lives』と全く別物で,猫は9回転生するという伝承に基づいている。
 仕事一筋のトム・ブラント社長の目指すは,北半球一の高層ビルを建てること。目標達成のためには,社員の意見に耳を貸さず,家族との触れ合いも犠牲にしてきた。ある日,妻のララから翌日が娘の誕生日であることを知らされ,ペットショップに立寄って,欲しがっていた猫を購入する。ところが,会社の屋上で落雷に直撃され,猫と共に転落してしまう。目が覚めると,自身はなぜか猫に変身してしまっていて,社長の身体は意識不明で病院のベッドの上にある。それを知った社員イアンは会社の乗っ取りを企み,トムは猫の姿のまま,それを阻止せんと奮闘する。という,バカバカしいお話である。
 フランス映画だが,セリフはすべて英語だ。助演陣は,妻のララ役にジェニファー・ガーナー,気味の悪いペットショップの店主役にクリストファー・ウォーケンという布陣である。彼は,奇人・怪人を演じさせると見事な存在感を示す。本作も,猫の絶妙の演技と彼の怪演が支えていると言って過言ではない。
 とはいえ,やはり目玉は,シニカルな役が似合うオスカー男優K・スペイシーを,こともあろうに猫にしてしまったことだ。「猫に成り切った名演」という触れ込みだが,パフォーマンス・キャプチャーで猫の動きを演じた訳ではない。猫はどこまでが本物か,果たしてほぼすべてがCGなのか,楽しみにして眺めることにした。以下,当欄の視点での評価である。
 ■ 最新のCG技術をもってすれば,もはや猿でも虎でも熊でも,本物そっくりに描くことはできる。猫とて例外ではない。ただし,それはコストを度外視した場合のことであり,様々な動きまで本物らしく描くにはかなりの投資が必要となる。よって,さほど大作でない本作の場合は,フルCGの猫ではなく,かなりの部分で本物の猫を使っていると予想した。映画本編を観てすぐに感じたのは,猫の動きの自然さであり,殆どCGを使っていないように思えた。せいぜい顔は実物,身体はCGという部分合成だろうか。古典的な特撮技法も駆使して,猫と人間の演技を合成しているに違いないが,一見しただけではどれが合成シーンなのか全く見分けることができない(写真1)。主役の「Mr.もこもこパンツ」には,同種の6匹の猫を使ったという。
 
 
 
 
 
 
 
 
写真1 主役の「もこもこパンツ」には6匹が使われた。下は猫を撮影してから,俳優と合成。
 
 
 
    ■ 猫と人間の合成の他に,冒頭の自家用機からのダイブ,屋上から観た街の光景,墜落や落雷シーン等,VFXの出番はかなりある(写真2)。担当はMethod Studios, RODEO FX, EDI Effetti Digitali Italianiの3社で,既にEDIからVFXメイキングのビデオが公開されていて,上記の予想通りだった。予告編から想像した以上にCGの出番は少なく,写真3 の猫は実際にこの恰好をしていて,耳の部分を少し加工しただけだ。同じ猫を何度も合成したりもしている(写真4)。猫が好きに動き回れるようセットを組み,その映像に合わせて人間が演技し,VFX合成した場面が大半のようだ。 
 
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写真2 さすがにこれはCGだと思ったのだが,これも実物の合成か?
 
 
 
 
 
写真3 この懸垂シーンは本物で,耳だけVFX処理
 
 
 
 
 
写真4 1匹の猫を3倍に(よく見れば眼光は同じ)
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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