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O plus E誌 2015年5月号掲載
 
 
寄生獣 完結編』
(東宝配給)
      (C) 2015映画「寄生獣」製作委員会
 
  オフィシャルサイト[日本語]    
  [4月25日よりTOHOシネマズ スカラ座他全国ロードショー公開中]   2015年4月7日 東宝試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  最終対決はパワーアップ,エンディングは順当に  
  本作を待ち望んだのは,2部構成の後編,完結編だからだ。前作は昨年11月29日の公開だった。撮影は終わっているのに,連続公開せず,約5ヶ月後のGW前に「完結編」というのは,当然興行上の戦略だろう。前作の完成は公開直前で,仕上げに手間取ったのだとしても,その後数ヶ月もあれば,物語だけでなく,CG/VFX的にもかなりパワーアップされていることが期待できる。
 前作の記事では,「CG/VFXは,その折にトップ記事で詳しく分析,紹介することにしよう」と記したのだが,その約束は果たせず,再度3本目の扱いになってしまった。CG/VFXは前作よりも強化されているものの,(山崎貴監督作品であるというのに)語るに足るVFXシーンの画像がほとんど提供されないからである。また,後述のように,上記2作と比べて,ビジュアル面では明らかに後塵を拝しているためでもある。
 主演の泉新一役の染谷将太,ガールフレンド・村野里美役の橋本愛,助演陣の深津絵里,北村一輝,浅野忠信は引き続き登場し,國村隼や大森南朋らの登場場面が増えている。原作が人気コミックで,観客の半数以上はその熱心なファンのようだ。ましてや前作を観ずにこの完結編を観る人はいないだろうから,前作のおさらいは無用だろう。(順序は違っているが)2作合わせた全体で,原作中の主要エピソードは極力カバーし,その上で映画らしいクライマックスを加えている。
 以下,素直な感想と叱咤激励である。
 ■ 各登場シーンで,前作以上にミギーの表情と動きの表現を熟視してみた。戦うシーンでは刃物のような手になるが,通常は3本指である。多数の玩具メーカーからミギーグッズが市販されているが,指まで正確に表現しているものは見当たらない(写真1)。映画では,口の中までリアルに描かれていて,これだけで結構表情を描き分けている(写真2)。前作よりも戦闘シーンが多く,変形もダイナミックになり,勿論,動きも素早くなっている(と感じた)。前回ジョークが少ないと述べたが,ミギーがネギを刻むシーンは見もので,楽しかった。この種の遊びがもっと欲しいところだ。
 
 
 
 

写真1 CG製ミギー(左)と市販のグッズ(右)

 
 
 
 
写真2 新一の右手が変形して,ミギーが登場する瞬間。口の中もリアルに描かれている。
(C) 2015映画「寄生獣」製作委員会
 
 
  ■ 田宮良子(深津絵里)の顔の変形は,コナミの技術が採用されていると報じられているが,感心した出来映えではなく,ぎこちなく,チープな感じがした。一方,浅野忠信の後藤は,最強パラサイトの設定に恥じない出来映えだ。彼自身の変身や彼と新一の戦いに,CG/VFXパワーの大半が費やされている。浅野忠信の悪役ぶりは堂に入っていて,原作よりも迫力がある。新一と後藤の最終対決の場としてゴミ処理工場が選ばれているが,山崎監督は煉獄をイメージしての選択だと語っている。定番の映画らしいクライマックスとしては合格点だ。
 ■ 浅野忠信と並ぶ名キャスティングは,ミギーの声を演じる阿部サダヲだろう。前作以上に,剽軽かつ暖かみのある彼の声の存在がこの物語を引き締めている。一方,ヒロインの橋本愛の容貌は,最近のネット上で「劣化」だと酷評されているが,なるほど,その風評に同意する。ゴツい,女戦士のような顔になり,これではとても可憐な女子高生に見えない。『告白』(10)のあの美少女が,わずか数年でこうなってしまうのか。かくなる上は,早めに演技派に転向すれば,憎まれ役,戦う女役として,大きく成長するかと思う。
 ■ 「寄生獣」とは,人間に乗り移り,人間を食用とするパラサイト達のことではなく,地球に寄生し,環境を破壊する人間自身だというのが,原作のメッセージである。この問題設定や世界観を高く評価する知識人も少なくないようだが,筆者はさほどのメッセージとも思えなかった。少なくとも,この映画の演出の中には,それは感じられないし,この種の映画にそんな小細工は似合わない。前号で紹介した『映画 暗殺教室』も本作も,原作コミックには,一気に読者を引き込むだけの魅力がある。これは,我が国のコミック界に人材が集まり,切磋琢磨の結果,良作が生まれているのだと思う。映画は,その「おこぼれ」を頂戴しているだけだ。
 ■ この完結編の最大の注目点は,どのようなエンディングで収めるかだった。その点では,原作コミックに忠実に締めくくっている。原作とは全く結末が異なる映画は多々あるが,「おこぼれ」を当てにし,原作ファンの目が気になる製作者の作品なら,当然のことだろう。そうした制約の中での完結編としては,80〜85点の出来だと思える。ただし,国際市場まで考えると,せいぜい60〜65点程度だろう。本作と同じ日に,上記の『ワイルド・スピードSKY MISSION』,次号で紹介の『チャッピー』の試写を観た。その迫力,作り込み,サービス精神,いずれをとっても彼我の差は歴然だった。
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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