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O plus E誌 2014年12月号掲載
 
 
寄生獣』
(東宝配給)
      (C) 映画「寄生獣」製作委員会
 
  オフィシャルサイト[日本語]    
  [11月29日よりTOHOシネマズ スカラ座他全国ロードショー公開予定]   2014年11月7日 東宝試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  CG化に最適のパラサイトが活躍する2部作の前編  
  シンプルだが,グロテスクさが滲み出た表題で,CGが活躍できそうな作品とは思いつつも,少し引いていた。ところが,予告編を観ただけで,完全にお気に入りになってしまった。人間に寄生したパラサイトが主役の物語だが,顔が変形して開いて怪獣化し,目の前にいる人間をパクッと捕食する様がとてもキュートだった。
 1990年代に大ヒットしたコミックが原作で,お決まりのTVアニメ化,実写映画化というコースかと思った。ところが,ことは単純ではなく,一旦映画化権はハリウッドに渡るが,期限切れとなり,数十社の争奪戦の後,ROBOT制作,山崎貴監督,東宝配給の形で落ち着いたという。『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズのゴールデン・トリオの作品とあらば,ますます見逃せない。
 前作の『永遠の0』(14年1月号)を含め,すっかり「お涙頂戴映画」が得意との評価が定着した山崎貴監督だが,元来,怪獣ものは大得意である。かつて,筆者の研究プロジェクトで彼に発注した短編PV『2001年MR空間の旅』に登場するエイリアンなどは,まさに絶品であった(写真1)。まだCG/VFXがここまで大発展する以前のことだが,白組のCGチームの腕も確かだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
写真1 山崎貴監督がデザインした宇宙船とエイリアン
      (C)2001 MRシステム研究所
 
 
 
  その山崎監督作品は,ずっと当欄のトップ記事であったのに,本号で3番目に登場するのは,解説するに足るCG/VFXのスチル画像がほとんど入手できなかったからである。試写会で観たのは,「東京国際映画祭」のオープニング用の英語字幕つきの仮完成品で,一般公開日までにまだまだ作業が続くのだという。原作通りの単純な表題には表われていないが,本作は前後編2部作の前編であり,来年4月25日に『寄生獣 完結編』の公開が予定されている。CG/VFXは,その折にトップ記事で詳しく分析,紹介することにしよう。
 さてさて,人気コミックが原作となると迂闊なことは書けないので,予習として,原作の完全版全8巻を読破した。こりゃ,面白い! 本来なら,半分の4巻で止め,そこで本作の試写に臨み,後で残りを読了するのが筆者の定番スタイルである。ところが,原作の魅力に負け,先に全巻を読んでしまった。よって,熱心なコミックファンに近い厳しい目で,本作を評することになる。
 本作に登場する寄生生物(パラサイト)は,ムカデのような細長い小動物で,耳や鼻腔から脳に入り込み,人間の身体を支配し,やがて次々と他の人間を捕食するという設定だ。他惑星からの侵略者ではなく,地球上の食物連鎖のバランスを保つため,増え過ぎた人類を捕食するための手段という,少し薄気味悪いメッセージが添えられている。ストーリー的にもビジュアル的にも,ほぼ原作コミックを踏襲している。主人公の高校生・泉新一を狙ったパラサイトは,脳への侵入に失敗し,右手部分にだけ寄生する(写真2)。「ミギー」と名付けられ,新一との奇妙な共同生活が始まる。英語字幕では「Righty」と意訳されていたが,単に「Miggy」でも良かったかと思う。
 
 
 
 
 
 
写真2 新一の右手に寄生したので,ミギーと名付けられた
 
 
  泉新一役には染谷将太。原作とは少しイメージが違うが,ミギーの声役の阿部サダヲ共々悪くないキャスティングだ。幼馴染・村野里美役には橋本愛。もう少し,彼女とのラブロマンスが多めでも良かったかと感じた。その他,深津絵里,東出昌大,大森南朋,北村一輝,浅野忠信,余貴美子らの助演陣が脇を固めている。
 以下,見どころと辛口の感想である。
 ■ ミギーも他のパラサイトも,造形的には原作に忠実だ。原作の絵が下手くそなので,リアルに描けるCGの方が絶対的に適している。変身の過程も描き易いし,スピード感ももたせられる。リアル過ぎて気味悪いという女性ファンの声もあるが,ミギーは愛らしく(写真3),キャラクター・グッズとしての人気も上々だ(写真4)
 
 
 
 
 
 
写真3 この愛らしいポーズが,グッズ・ファンの人気を呼んでいる
      (C) 映画「寄生獣」製作委員会
 
   
 
 

写真4 現在発売中のグッズ類

 
  ■ 他のパラサイトのCGは,最新CG技術からすれば特段難しくはなく,可もなく不可もないレベルだ。ただし,顔が割れ,パラサイトに変形する描写は上出来だった。割れ目に質感があり,割れる動きの表現もコミックにはできない芸当なので,価値がある。CG/VFXの主担当は,勿論白組だが,いつものように約30人の制作態勢だ。他に7社(ROBOTの親会社のIMAGICAなど)も参加しているのは,さすがに白組だけでは処理しきれない分量だったからだろう。その分,VFXクオリティにばらつきが有り,品質管理に問題ありと感じた。
 ■ 緊迫感を煽る音楽はハリウッド風で,悪くない。もっと大仰に盛り上げても良かったくらいだ。その半面,演出は生真面目で,遊び心がない。もう少し原作にあるユーモアを盛り込んでもいいかと感じた。
 ■ 映画化で脚本は圧縮するので,ある程度,原作と人物設定が変わるのは止むを得ない。最も違ったのは,新一の両親の扱いだ。他では,鼻から胸までを寄生され,パラサイトと共存する「宇田守」が登場しない。このCGは是非観たかったので,残念だ。彼は「完結編」で登場するのだろうか?
   
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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