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O plus E誌 2014年3月号掲載
 
 
LIFE!』
(20世紀フォックス映画)
      (C) 2013 Twentieth Century Fox Film Corporation
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [3月19日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開予定]   2014年1月20日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  荒唐無稽な空想シーンが楽しいが,後半失速する  
  上手い邦題を考えついたものだ。『ライフ!』ではなく英文字なので,原題そのものかと思われがちだが,原題は『The Secret Life of Walter Mitty』と,主人公の名前を入れた面白味のない題である。戦前から米国で発行されていて,戦後世界の政治・経済・社会を写真で報道した雑誌(グラフ雑誌と呼ばれていた)「LIFE」の最終号発行を題材にしたヒューマンコメディだ。
 LIFE誌の存在を知らない若い読者のために,少し歴史を振り返っておこう。創刊は1883年と言われているが,当時は普通の一般雑誌であり,1936年にTIME誌のオーナー,ヘンリー・ルース氏が買収して以来,写真中心のグラフ雑誌となったそうだ。爾来TIME,LIFEの両輪で,世界のジャーナリズムを牽引する存在となって行った。赤字に白抜き文字のロゴが印象的で,本作もそれを踏襲した全大文字体の表題をつけている。全盛期はテレビ普及期までで,1972年までは週刊誌,その後,年2回,月刊誌,無料週刊誌(新聞に折り込み)等の形態を経て,2007年3月に休刊となっている。
 日本では,朝日・毎日両新聞社が,このLIFE誌を模した「アサヒグラフ」「毎日グラフ」を発行していた。昔はよく,銀行や歯医者の待合室に置いてあった記憶がある。大きなイベント毎の臨時増刊号の売れ行きがよく,大増刷されていた。筆者は今でも「東京オリンピック」「アポロ11号月面着陸」の号を大事に保管している。現在はいずれも休刊となっているが,LIFE誌も含め,貴重な写真データや誌面イメージをインターネットで検索できるようになっている。まさに,20世紀社会の記録として貴重な財産である。
 さて,前置きが長くなったが,本作の主人公ウォルター・ミティは,この権威あるLIFE誌の写真管理部で働く冴えない中年男性である。長い歴史をもつこの雑誌の最終号の表紙を飾るはずの写真ネガが行方不明になったことから,撮影したカメラマンを探して,世界中を巡る騒動をヒューマン・ドラマとして描いている。
 監督・製作・主演はベン・スティラー。米国では人気者だが,日本でウケないコメディアンとして,アダム・サンドラー,スティーヴ・マーティン,ウィル・フェレルと並ぶ存在だったが,『ナイト ミュージアム』(07年3月号)『同 2』(09年8月号)のヒットによって,本邦でもかなり知られる存在となった。共演は,彼が想いを寄せるヒロインにクリスティン・ウィグ,母親役に名優シャーリー・マクレーン,冒険家のカメラマン役にショーン・ペンという布陣だ。
 実を言うと,本作はこのメイン欄で紹介する予定はなかった。当初,邦画の『偉大なる,しゅららぼん』の予定だったが,その余りの拙さゆえに,急遽本作と入れ替えた訳である。では,その本作にはCG/VFX的に語るだけのものがあるかと言えば,少なくとも分量的にはあると言える。意中の女性にまともに意志表明が出来ない不器用なウォルターは,誇大妄想の空想癖があり,その空想シーンの数々が面白い。
 例えば,いきなりビル屋上からジャンプして別のビルの一室に飛び込んだり(写真1),オフィス内で会話中に急に雪山中のシーンに変化したり(写真2),屋外で格闘中に突如道路が陥没したり(写真3)等が,随所に登場する。その他にも,ヘリに飛び移ったり,海中に放り出され,鮫と格闘する等も,明らかにCG/VFXを利用したシーンだ。主担当はFramestore社で,他にSoho VFX,Hydraulx,Look VFX等が参加している。
 
 
 
 
 
写真1 いきなりの妄想ジャンプ! もっとこんなシーンが続けば楽しかったのに……。
 
 
 
 
 
写真2 オフィスで会話中に,突如として雪山が出現
 
 
 
 
 
写真3 今度は屋外で,突如として道路が陥没
(C) 2013 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved.
 
 
  こうした楽しい空想シーンがどんどん続けば,『ナイト ミュージアム』級の娯楽作品になったのに,中盤以降,妙に生真面目な映画になってしまう。主人公の内面的成長を表わしたと言いたいのだろうが,B・スティラーがいい人ぶっても全く面白くない。コメディアンが,自ら製作・監督することの弊害だろうか。
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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