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O plus E誌 2014年12月号掲載
 
 
西遊記~はじまりのはじまり~』
(日活/東宝東和配給)
      (C) 2013 Bingo Movie Development Limited
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [11月21日よりTOHOシネマズ有楽座他全国ロードショー公開中]   2014年9月1日 東宝試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  古典伝奇小説のチャウ流新解釈,さぁ始まるぞ!  
  筆者らの世代なら,「西遊記」の名を知らない者はない。「シンドバッドの冒険」と並んで,最も親しんだ冒険物語であり,漫画,ラジオ番組,児童書等で,何度も何度も楽しんだ。小学生低学年の頃は,床屋に行くたびに,頭を刈りながら理髪師が,金角・銀角らと戦う孫悟空の物語を話してくれるのが,何よりの愉しみだった。
 最近の若者はどれくらい知っているだろうと訝ったが,映画だけでなく,何度もTVドラマやアニメ化されているので,多分,何らかの形で知っているだろう。TVドラマなら,古くは堺正章,最近では唐沢寿明,香取慎吾が孫悟空を演じていて,いずれも似合っていた。最近は,数々のゲームネタにもなっているようだ。そう言えば,「週刊少年ジャンプ」掲載の大ヒット作「ドラゴンボール」の主人公も孫悟空だが,役名の借用だけでなく,物語も少し「西遊記」の影響を受けている。
 元はれっきとした中国の古典的伝奇小説で,勿論,中国でも何度も映像化されている。本作のメガホンを取るのは,香港映画界のスターにして,監督兼主演作の『少林サッカー』(02年5月号)『カンフーハッスル』(05年1月号)で,日本でもファンが激増したチャウ・シンチーだ。しばらく彼の名前を聞かないなと思ったら,本作は『ミラクル7号』(08年6月号)以来6年ぶりの監督作品だという。彼の映画とあれば,CG/VFXはたっぷり登場するはずだと,早速当欄の紙面を空けておいた。元々,孫悟空の如意棒の伸縮,觔斗雲で空を翔け巡る様,妖怪退治等は,CG/VFX向けだと言える。
 主演の玄奘三蔵役には,ウェン・ジャン。中国の若手人気俳優らしい。チャウ・シンチーにも少し似ているので,なぜ,いつものように自ら主演しないのかと不思議だったが,物語が進むにつれ,監督よりも若く,軟弱な草食系男子に見える俳優の方が良かったのだと分かる。彼に恋するヒロイン・段を演じるのは,台湾出身で香港映画界の人気女優のスー・チーだ。日本では,烏龍茶のCMでも知られている。さして美人とも思えないのだが,スクリーン内では魅力的だ。妖怪ハンターの女頭領という役柄も似合っていた(写真1)。孫悟空,猪八戒,沙悟浄らは,実写部分もあるが,CGで妖怪に変身したり,かぶり物を着けて登場したりするので,実質は誰が演じているのか,特定できない(写真2)
 
 
 
 
 
写真1 さして美人ではないが,結構チャーミング
 
 
 
 
 
写真2 このいかにも猿面の孫悟空は,普通のメイク
 
 
  本格的な「西遊記」というよりも,その前日譚である。「三蔵法師」と名乗る前の「玄奘」が主役で,様々な経緯があって,沙悟浄,猪八戒,孫悟空の順で遭遇し,最後に共に西方に旅する仲間となる過程が描かれている。途中,あまりのタッチの違いに,これがあの「西遊記」なのかと思ってしまうが,最後は落ち着くべきところに落ち着き,なるほど「はじまりのはじまり」とは,上手い日本語での副題をつけたものだと感心した。
 以下,CG/VFXを中心とした見どころである。
 ■ 物語は,ある河辺の村から始まる。この語り口が見事で,一気に引き込まれてしまう。ここで登場するのが,半魚半獣の妖怪で,この描写が凄い(写真3)。これは実は沙悟浄だというから,なお驚く。日本では「河童の沙悟浄」として描かれることが多いが,中国に「河童」は存在せず,ある種の水棲生物だということらしい。それにしても,いきなり魔物姿での登場に驚いた。
 
 
 
 
 
写真3 冒頭の水棲生物(実は沙悟浄)に,まず驚愕
 
 
  ■ 次なる猪八戒は,イケメン青年で登場した後に凶暴な豚面(写真4)になり,さらには巨大な猪と化す。猿の孫悟空は,キングコングに変身する。もうこうなると,どこがCGでどこが特殊メイクなのか,区別できない。妖怪の造形はよくできているし,ギャグ重視の演出とよくマッチしている。段の放つ「空中リング」の描写もいい出来だ(写真5)。CG/VFX,特撮のオンパレードで,玄奘が向かう「五指山」の光景(写真6),「足じぃ」こと天残脚の巨大な足(写真7),孫悟空を懲らしめるお釈迦様の登場の仕方(写真8)等,「ありえねー!」場面の連続だ。
 
 
 
 
 
写真4 正体を現わし,凶暴な豚となった猪八戒
 
 
 
 
 
写真5 段が放つ「無限空中リング」は勿論CG製
 
 
 
 
 
 
 
 
写真6 上:なるほど山の外形が指の形をしている。
    下:この光景は,『ロード・オブ・ザ・リング』を意識してのものか?
 
 
 
 
 
 
写真7 足じぃの「とんでもねぇー!」巨大な足
 
 
 
 
 
写真8 お釈迦様まで「ありえねぇー!」登場の仕方
(C) 2013 Bingo Movie Development Limited
 
 
  ■ なるほど,「とんでもね~妖怪娯楽バトルエンターテインメント」として合格点を与えられる。大いなる不満は,日本では2D版しか公開されないことだ。どう観ても,至るところで,3Dを意識した構図とカメラワークが使われているではないか。
  
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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