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O plus E誌 2014年8月号掲載
 
 
プレーンズ2/ファイアー&レスキュー』
(ウォルト・ディズニー映画)
      (C) 2014 Disney. All Rights Reserved.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [7月19日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズ他全国ロードショー公開中]   2014年7月8日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  2作目は,空からのショット重視で大変身  
  フルCGアニメだが,前作同様,短評欄での紹介に留めるつもりが,試写を観て,ビジュアルデザイン面の意外な出来の良さに惚れ込み,急遽メイン欄に格上げすることにした。前作が昨年12月21日公開だったから,まだ半年強しか経っていない。北米公開が8月9日だったことを考慮しても,1年弱の期間での続編なら,安易な企画の,お手軽なB級作品だと考えるのが普通だろう。実際,前作はDVDスルーになるところを,予定変更で劇場公開された。『カーズ』(06年7月号)の世界観を踏襲し,軽飛行機を主人公にした新シリーズという謳い文句であったが,ピクサー作品ではなく,ディズニートゥーン・スタジオの作品だった。即ち,ディズニー傘下3番手の製作会社に担当させた上に,実際のCG制作はPrana Studiosなる新興スタジオに外注していた。全くのお子様映画で,まさにその程度の作品だった。
 ディズニートゥーン(DisneyToon)は,ディズニー・ブランドでのTV番組や,劇場用長編アニメの続編ビデオ作品(『ライオン・キング2』等)を手がける会社であった。作品は同じ長編アニメでありながら,『白雪姫』(37)から『アナと雪の女王』(13)に至る伝統あるディズニー・アニメ作品群にはカウントされない,日陰の存在である。フルCGアニメの老舗ピクサーがディズニー傘下に入った際,ピクサーのクリエイティブ面の指導者ジョン・ラセターが,逆にディズニー・アニメーション・スタジオの製作にも関与するようになったことは,当欄で何度も述べた。この時同時に,系列のディズニートゥーンも彼の管理下に入った。やがて,同社の作品は,安直な続編でなく,むしろ人気作のスピンオフ作品中心へと方針転換された。そして,J・ラセター自身が企画・監督した『カーズ』シリーズのエッセンスを踏襲し,この『プレーンズ』シリーズが生まれた訳である。
 主人公は,農薬散布用軽飛行機のダスティ。前作で世界一周レースに優勝し,すっかり有名人になっている。彼も他のキャラクターも『カーズ』に登場していた訳ではないので,厳密に言えば,本シリーズはスピンオフ作品ではない。『カーズ』では,中型レッカー車のメーターが人気サブキャラだが,本シリーズにもそっくりのオンボロ車が登場する。ここで,メーターを使わなかったのは,既存のキャラクターの版権はピクサーが所有しているためだろう。擬人化したキャラとして,クルマに飛行機,ヘリ等を加え,同工異曲の別シリーズを生みだした訳だが,2作目にしてようやく軽飛行機を主人公にしたことのメリットが現れ始めている。
 その最たるものは,空中視点からの美しい景色がふんだんに描かれていることだ。ヨセミテ,イエローストーン等の国立公園を徹底して観察したのだろう。まるで観光映画のような美しさだ。カーレースが題材だと視点が地上中心にならざるを得ず,迫力では実写映画に歯が立たない。その制約がなく,空中を自由自在に飛び回るカメラワークにはCGの自由度を最大限活用できる(写真1)
 
 
 
 
 
写真1 カーレースの拘束から脱して,カメラワークの自由度もアップ
 
 
  前作ではまだレースに拘っていたが,ダスティのギアボックスが不調で,山火事消火に携わる消防レスキュー隊員として活躍させることにした設定が成功している。山岳地区での救助活動,消火活動に関する情報が巧みに盛り込まれ,まるで社会科教育映画だ。少年少女たちが自然にレスキュー隊員へのリスペクトの念を抱けるようになっている。物語自体は,健全なファミリー映画の域を出ないが,その制約の範囲内で,かなり見事なCG映像を堪能させてくれる。
 山々や渓谷の美しさだけでなく,山中のリゾートホテルやレトロなSLのデザインも粋で,景観と見事にマッチしている(写真2)。そして,何よりも力が入っているのが,火災の表現だ。本作のために「ファイアー・ライブラリー」を準備しただけあって,風向きや山林中の障害物の量に応じて見事に描き分けている。煙(写真3)や消火剤(写真4)の描写も上々だ。そして,圧巻は終盤の大規模な夜の山火事の描写だ(写真5)。『イントゥ・ザ・ストーム』の竜巻の描写に匹敵するスペクタクルだと言える。
 
 
 
 
 
写真2 美しい国立公園やレトロな機関車も見もの
 
 
 
 
 
写真3 炎も黒煙も風向きに応じて描き分けている
 
 
 
 
 
 
 
写真4 同様に,消火剤散布も飛行速度に応じた表現に
 
 
 
 
 
写真5 圧巻は,大規模な夜の山火事の描写
(C) 2014 Disney. All Rights Reserved.
 
 
  特筆したいのは,これだけのCG映像がスピンオフ扱いのB級映画で,しかも中堅のCGスタジオへの外注で制作されていることだ。CGクリエーターたちの層の厚さに感心する。ただし,2作目で変身した本作を高評価する半面,本邦では2D日本語吹替版でしか上映されないことを不満に思う。どう考えても,これは3D版で観るべき映画ではないか。惜しい!
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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